記事
セレキノンにはコリン作用と抗コリン作用がある?
公開. 更新. 投稿者:消化性潰瘍/逆流性食道炎.この記事は約4分57秒で読めます.
4,547 ビュー. カテゴリ:セレキノンはオピオイド?
慢性胃炎の治療薬セレキノン。
過敏性腸症候群にも使われるのかな。
胃運動調律作用という、胃腸の機能が亢進しているときには抑制して、低下しているときには亢進するという、便利な作用をもつ。
セレキノンのインタビューフォームを見ても見つけられなかったので、ジェネリックのメブコロンのインタビューフォームをみると、
トリメブチンは中枢への移行性をなくし、末梢で作用するオピオイド作動薬である。副交感神経活性化状態では、コリン作動性神経の終末に存在するオピオイドμ受容体を刺激することにより、アセチルコリンの遊離を抑制し、消化管ぜん動を抑制する。一方、交感神経活性化状態では、アドレナリン作動性神経の終末に存在するオピオイドμ受容体を刺激することにより、消化管ぜん動を亢進する。
オピオイドって聞くと麻薬しか思い浮かばないんですが。
中枢のオピオイド受容体に働くわけではないので、厳密にはオピオイドとは呼ばないのかも知れませんが、オピオイド作動薬という薬効分類。
で、オピオイドμ受容体を刺激すると、消化管運動は抑制されるのか亢進するのか。
腸運動に関与するオピオイド受容体はμとκがあり、μ受容体作用薬は腸運動に対して促進と抑制の両作用を示す。この理由は、μ受容体はコリン作動性とアドレナリン作動性(コリン作動性神経の活動を制御している)の両神経上にあり、アドレナリン作動性神経上のμ受容体の方が親和性が高いので、μ受容体作用薬の低濃度はコリン作動性神経上の受容体に作用せず、アドレナリン作動性神経上の受容体に作用してノルアドレナリン(NA)の遊離を抑制するために、アドレナリン作動性神経のコリン作動性神経に対する制御作用が低下(脱抑制)することによって、却ってACh遊離が増加するためである。μ受容体作用薬の高濃度は両神経の活動を低下させるために、腸運動が低下する。トリメプチンはμκの両受容体に作用するが、μ受容体に対する親和性が高いために、腸運動に対してその低濃度では亢進し、高濃度では抑制する。
KAKEN – 消化管の壁内神経回路網及び機能調節機構の解析(03670108)
一般的に麻薬の副作用には吐き気があるから、胃腸運動は抑制されるのかな。
高濃度だと腸運動は低下するってことで。
止瀉薬 – 薬学用語解説 – 日本薬学会
腸運動抑制薬として、中枢へ移行せず腸管のオピオイド受容体に作用するロペラミド、トリメブチンなどがある。
ロペミンも同じような作用機序なのね。
セレキノンは過敏性腸症候群の下痢に長期に処方できる下痢止め的なイメージでもいいのかな。
セレキノンの作用機序
セレキノンは、下痢型に限らず、便秘型や下痢と便秘を繰り返す交替型にも使われる消化管運動調整薬である。
作用機序は未解明な部分も多いが、同薬は末梢のオピオイド受容体を介して、消化管運動を亢進するアセチルコリンの分泌を調整すると考えられている。
消化管運動と関連する末梢のオピオイド受容体には、副交感神経終末に存在するκ受容体と、交感神経終末に存在するμ受容体がある。
トリメブチンがκ受容体に作用すると副交感神経が抑制され、アセチルコリン分泌量が減少し、消化管運動が抑制される。
一方同薬がμ受容体に作用すると、交感神経が抑制され、その影響で副交感神経が亢進してアセチルコリン分泌量が増加し、消化管運動は亢進する。
このようにトリメブチンは、消化管運動の状態に合わせて亢進と抑制のどちらにも作用し、消化管運動のバランスを調節するのである。
もっとも臨床的には、便秘型に対しては効果が若干劣るという報告が多く、主に下痢型の過敏性腸症候群に使用されている。
オピアト作動薬
トリメブチン(セレキノン)は消化管のオピオイド受容体に作用し、消化管の運動亢進時には抑制作用を、運動低下時には促進作用の二面性をもつ消化管運動調律作用薬である。
トリメブチンは、消化管運動低下状態では交感神経系のオピオイドμ受容体を抑制することで、副交感神経からのACh遊離を促進する。
一方、消化管運動亢進状態では、副交感神経のオピオイドκ受容体を刺激することでAChの遊離を抑制する。また、消化管平滑筋に対する直接的な作用もあると考えられている。
セレキノンとタナベ胃腸薬の違いは?
セレキノンがOTCで新発売かあ、と思っていたら、すでにありました。
タナベ胃腸薬〈調律〉という製品です。
成分は、
トリメブチンマレイン酸塩(TM) 300mg:胃腸運動を整える
ビオヂアスターゼ2000 120mg:消化を助ける
リパーゼAP6 45mg:消化を助ける
カンゾウ末 150mg:粘膜を修復し、保護する
ロートエキス 30mg:過剰な胃酸の分泌を抑える
炭酸水素ナトリウム 300mg:胃酸を中和する
沈降炭酸カルシウム 600mg:胃酸を中和する
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(乾燥物換算) 240mg:胃酸を中和する
トリメブチンマレイン酸塩300mgなので、セレキノンSと同量。
余計なものも入っているけど、それはそれで有効に働きそうな感じ。
なんでこれが第2類医薬品で、セレキノンSが要指導医薬品なんだか理解に苦しむ。
効能効果に過敏性腸症候群という文言が入っているからなのでしょうけど。
ほかにもイノセアアクトというトリメブチン配合の商品もあったようだが、もう売ってないようだ。
タナベ胃腸薬<調律>も販売は低調なのかな。
イメージ戦略を変えて、薬剤師が関与することにより販売に変化が現れるか、田辺的には試験的な取組みなのかも。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
2 件のコメント
こんにちは!
9年越しのIBS(混合型)です。完全にはコントロールできないものの、
便通の不規則さはさほど深刻ではなく、処方薬で何とかしのぐ毎日です。
問題は痛み!! 下腹の牽引痛、穿孔痛、締め付け痛で夜も眠れず、心身が消耗しています。
消化器内科をフィフスオピニョンまでして、西洋薬、漢方薬、整腸剤に食餌療法、ストレス解消など
腸の緊張や収縮や蠕動に関するすべてを試しましたが、
絞りねじり、引き裂き刺し貫くような激痛には改善の兆しが見えず、
医師に薦められた心療内科でも、「その症状は専門です」と診療を拒否されました。
あ、ブログのレフトナビに、IBSの項目が見つかりませんでしたので、処方されているトリメブチン情報の、こちらでご相談しています。
胃カメラや大腸内視鏡、MRIや血管造影、生検ほか各種数値にもまったく異常はなく、
したがって器質性でないことは確かなのですが・・・
唯一、痛みが若干和らぐのがエチゾラムでして、そうすると、
完全に自律神経?交感神経?脳のメラトニンがどうとかのハナシになってしまうのでしょうか。
脳神経内科、ペインクリニック、精神科、鍼灸、どこで、どのような薬を処方してもらうのがベストか、
おわかりになる範囲でお知らせくだされば幸いです。
手に余るとご判断されましたら、スルーしていただいて大丈夫です;;
よろしくお願いいたします(*´Д`);;
コメントありがとうございます。
女性の方であれば婦人科という選択肢もあるかと思いますが、恐らく男性の方でしょうか。
器質的なものでは無いということで消化器科の領域ではなく、神経科の領域ということかと思いますが、心療内科から「専門外」と言われ、手詰まり状態ということでしょうか。
現在トリメブチン服用中とのことなので、心療内科を紹介された消化器内科に通院中ということでしょうか。
正直、ベストな選択はわかりませんが、イリボーやリンゼスもまだ新しめの薬で、過敏性腸症候群という病名自体新しめの病名であり、これからまだ新薬が出る可能性もあり、医師も患者とともに勉強中かと思います。やはりIBSであれば専門は消化器科だと思うので、相談しやすい消化器科医がいれば腹痛の頻度などを伝えて、ともに試行錯誤するのが良いかと思います。