2025年11月12日更新.2,665記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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食物アレルギーに注意する薬一覧

▶食物アレルギーに注意する主な薬一覧

食品医薬品名添付文書の記載
牛乳・乳製品アミノレバンEN配合散禁忌:牛乳に対しアレルギーのある患者[本剤は添加剤としてカゼインを含有する。]
イナビル吸入粉末剤20mg特定の背景を有する患者に関する注意(乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者):本剤は、夾雑物として乳蛋白を含む乳糖水和物を使用しており、アナフィラキシーがあらわれたとの報告がある。
イノラス配合経腸用液禁忌:牛乳たん白アレルギーを有する患者[本剤は牛乳由来のたん白質が含まれているため、ショック、アナフィラキシーを引き起こすことがある。]
エネーボ配合経腸用液禁忌:牛乳タンパクアレルギーを有する患者[本剤には牛乳由来のタンパク質が含まれているため、ショック、アナフィラキシーを引き起こすことがある。]
エンシュア・H禁忌:牛乳たん白アレルギーを有する患者[本剤は牛乳由来のカゼインが含まれているため、ショック、アナフィラキシーを引き起こすことがある。]
エンシュア・リキッド禁忌:牛乳たん白アレルギーを有する患者[本剤は牛乳由来のカゼインが含まれているため、ショック、アナフィラキシーを引き起こすことがある。]
オラビ本剤は添加物として濃縮乳タンパク質(Milk Protein Concentrate)を含んでいるため、牛乳タンパクアレルギーの患者には本剤を投与しないこと。
タンニン酸アルブミン禁忌:牛乳アレルギーのある患者[ショックまたはアナフィラキシーを起こすことがある。]
ミルマグ錠禁忌:牛乳に対しアレルギーのある患者 [本剤は添加物としてカゼインを含有する。]
ラコールNF配合経腸用半固形剤禁忌:牛乳たん白アレルギーのある患者[本剤は牛乳由来のカゼインが含まれているため、ショック、アナフィラキシーを引き起こすことがある。]
ラコールNF配合経腸用液禁忌:牛乳たん白アレルギーを有する患者[本剤は牛乳由来のカゼインが含まれているため、ショック、アナフィラキシーを引き起こすことがある。]
リレンザ特定の背景を有する患者に関する注意(乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者):本剤は、夾雑物として乳蛋白を含む乳糖水和物を使用しており、アナフィラキシーがあらわれたとの報告がある。
ゼラチンエスクレ坐剤禁忌:本剤の成分(ゼラチン等)に対して過敏症の既往歴のある患者[本剤のカプセルの主成分はゼラチンである。ワクチン類に安定剤として含まれるゼラチンに対し過敏症の患者に、本剤を投与したところ過敏症が発現したとの報告がある。また、本剤投与によりショック様症状を起こした患者の血中にゼラチン特異抗体を検出したとの報告がある。]

食物アレルギーと薬

食品衛生法では「卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに」などのアレルゲンを含む食品には、表示が義務付けられている。
3大アレルゲンといえば、「卵、牛乳、大豆」である。最近は小麦の方が多いので、「卵、牛乳、小麦」を3大アレルゲンと呼ぶこともある。「卵、牛乳、大豆、小麦」で4大アレルゲン、「卵、牛乳、大豆、小麦、米」で5大アレルゲンともいう。薬事法では、添付文書などにそのような記載義務は無いので、服薬指導時にチェックが必要となる。

添付文書上禁忌となっている食物アレルギーは、牛乳アレルギーと卵アレルギーとゼラチンアレルギーしかみられないが、その他の食品成分を含有する医薬品もある。小麦、大豆、ゴマなどを含む医薬品があるので、それらの成分にアレルギーをもつ患者に対しては注意する必要がある。

小麦を含む医薬品は意外と多い。添加物として、小麦やコムギデンプンと書かれている。漢方薬で「小麦(ショウバク)」とそのまま小麦が含まれている製剤もある。甘麦大棗湯には小麦が含まれる。膠飴(コウイ)という生薬も、イネ科の粳米、大麦、小麦、粟などの種子を原料としており、小麦が使われていることがあるので注意が必要である。小建中湯、大建中湯、黄耆建中湯に膠飴が含有されている。消風散にはゴマが含まれているので、ゴマアレルギーには注意する。また栄養剤を含め、添加物として大豆油や大豆レシチンが含まれる薬もあり、大豆アレルギーに注意する。

乳糖を含む医薬品も多いが、乳糖自体にはアレルゲン性は認められない。しかし、きわめて微量の牛乳由来のタンパク質が混入しているため、注意する必要がある。特に吸入剤には夾雑物として乳タンパクを含む乳糖水和物を含むものが多い。オラビ錠口腔用の添付文書には牛乳アレルギーに関する記載はないが、インタビューフォームに「本剤は添加物として濃縮乳タンパク質(Milk Protein Concentrate)を含んでいるため、牛乳タンパクアレルギーの患者には本剤を投与しないこと」という記載がみられる。

このように、添加物として含まれている食品成分は多いので、どの程度注意喚起すべきか悩むところであるが、微量であっても含まれていることについては伝えた方がよいだろう。

漢方薬と食品表示法

漢方薬には、食物を原料とした成分が含まれるものも多い。

以下、アレルゲンとなり得る食品を含む漢方薬の例

生薬食物漢方薬
小麦小麦甘麦大棗湯
胡麻ゴマ消風散
桃仁桂枝茯苓丸、潤腸湯、疎経活血湯、大黄牡丹皮湯、桃核承気湯
山薬山芋八味地黄丸、六味丸、牛車腎気丸、啓脾湯
阿膠ゼラチン温経湯、芎帰膠艾湯、炙甘草湯、猪苓湯、猪苓湯合四物湯

食品中のアレルゲンに関する表示は、食品表示法で基準が定められている。
特にアレルギーの発症数、重篤度から表示する必要性の高い7品目(えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生)は「特定原材料」とされ、これらが含まれている食品には原材料として必ず表示しなければならない。
また「特定原材料に準ずるもの」は20品目(あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、松茸、桃、山芋、りんご、ゼラチン)あり、こちらは可能な限り表示するよう努めることとされている。

こうしたアレルゲンとなり得る食品を含む漢方薬は幾つかある。
漢方薬は食品ではないので、特定原材料などの表示義務はない。
そのため、アレルゲンを含むか判断しにくい場合があり、注意が必要である。

小麦アレルギーと小麦を含む薬

医薬品名成分
アダプチノール錠5mg小麦粉
アモバン錠7.5㎎/10㎎コムギデンプン
エビプロスタット配合錠DB精製小麦胚芽油
エルサメット配合錠/S配合錠小麦胚芽油
ケフラール細粒小児用100mgコムギデンプン
ジメリン錠250mgコムギデンプン
スピロピタン錠0.25mg/1mg小麦粉
スルモンチール散10%コムギデンプン
チョコラA錠1万単位小麦粉
ツムラ甘麦大棗湯エキス顆粒ショウバク
ヒスロン錠5コムギデンプン
ヒルナミン散50%コムギデンプン
フラジール内服錠250mgコムギデンプン
フラジール腟錠250mgコムギデンプン
ユビデカレノン錠10mg「トーワ」コムギデンプン
リンデロン散0.1%コムギデンプン
ワゴスチグミン散(0.5%)コムギデンプン

ゴマアレルギーとゴマを含む薬

漢方薬の消風散にはゴマが含まれているので、ゴマアレルギーには注意が必要。
添加物としてゴマ油を含む薬もあるので注意する。
ヒマシ油の成分は「トウゴマの種子を圧搾して得た脂肪油」であるがトウゴマ(唐胡麻)とゴマは全く異なる植物です。ゴマはゴマ科で、トウゴマはトウダイグサ科である。

医薬品名成分
ケイツーシロップ0.2%ゴマ油
ツムラ消風散エキス顆粒ゴマ
リンデロン坐剤ゴマ油

大豆アレルギーと大豆を含む薬

大豆アレルギーの患者は大豆レシチンを含有する医薬品に注意が必要です。レシチン(ホスファチジルコリン)とはリン脂質の一つで、動植物のすべての細胞中に存在します。
ただし、レシチンに含まれる大豆たんぱくは微量であり、アレルギー反応を起こすかどうかは個人差が大きい。

また大豆アレルギーの人は、その他マメ科の成分を含む薬にも注意を要する。
黄耆(マメ科キバナオウギやナイモウオウギなどの同属植物の根を乾燥したもの)、甘草(マメ科カンゾウ属植物の根や根茎を乾燥したもの)を含む薬に注意が必要。

医薬品名成分
EPLカプセル大豆レシチン
エネーボ配合経腸用液分離大豆タンパク質、大豆レシチン、大豆多糖類
エパデールEMカプセル大豆レシチン
エフメノカプセル100mg大豆レシチン
エレンタールP乳幼児用配合内用剤ダイズ油、大豆レシチン
エレンタール配合内用剤ダイズ油、大豆レシチン
エンシュア・H分離大豆タンパク質、大豆レシチン
エンシュア・リキッド分離大豆タンパク質、大豆レシチン
オフェブカプセル大豆レシチン
オプスミット錠大豆レシチン
オルミエント錠大豆レシチン
キョーリンAP2配合顆粒 精製大豆レシチン
コレチメント錠9㎎大豆レシチン
シーエルセントリ錠150mg大豆レシチン
スチバーガ錠40mg大豆レシチン
セムブリックス錠20mg/40㎎大豆レシチン
セルセプト懸濁用散31.8%大豆レシチン
タルグレチンカプセル75mg大豆レシチン
ツインラインNF配合経腸用液大豆レシチン
トビエース錠4mg/8mg大豆レシチン
ナトリックス錠1㎎/2㎎大豆レシチン
ネオーラル10mg/25mg/50mgカプセル大豆レシチン
ヘパンED配合内用剤ダイズ油、大豆レシチン
ヘモクロンカプセル200mg大豆レシチン
メーゼント錠0.25mg/2mg大豆レシチン
ラコールNF配合経腸用液分離大豆たん白質、ダイズ油、大豆レシチン
ランプレンカプセル50mg大豆レシチン
リンデロン坐剤0.5mg/1.0mg大豆レシチン
ルプキネスカプセル7.9mg大豆レシチン
ヴォリブリス錠2.5mg大豆レシチン
新レシカルボン坐剤大豆レシチン

山芋アレルギーと山薬を含む薬

漢方薬の成分に「山薬(サンヤク)」というのがありますが、これは山芋のことです。
山薬はヤマイモ科のヤマノイモまたはナガイモの周皮を除いた根茎(担根体)で、男性ホルモン増強作用を持ちます。

山芋とは「ヤマノイモ科」の芋類の総称なので、長芋や自然薯など、ヤマノイモ科の芋類はすべて山芋ということになります。
料理ですりおろして「とろろ」を作りますが、手が痒くなるアレルギー様反応を起こす人は多いですね。
しかしこれはアレルギーではなく、山芋に含まれるシュウ酸ナトリウムという成分が針状に結晶し、そのトゲトゲとした成分が肌に付着するため、痛痒くなる。シュウ酸ナトリウムはアルカリ性なので、レモンやお酢などの酸で中和し溶かすという対応で、痒みを軽減させられます。

一方で、山芋の摂取によって口のまわりの赤みやかゆみ、全身の蕁麻疹などのアレルギー症状を起こすことがあります。これは、山芋に含まれるアセチルコリンという成分が皮膚を刺激し、接触性皮膚炎を引き起こすためであり、これは「仮性アレルギー反応」に分類されます。

ただし、ごく一部では、山芋に対する特異的IgE抗体が関与する「Ⅰ型アレルギー反応(本当の食物アレルギー)」を起こすことも報告されています。
そのため、山芋アレルギーの既往がある人は、山芋を原料とする漢方薬(山薬を含む処方:八味地黄丸、六味丸、牛車腎気丸、啓脾湯)の服用は避けるのが望ましいと考えられます。

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