2025年11月28日更新.2,672記事.

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レスキュラとキサラタンの違いは?― プロストン系とプロスト系の違い

レスキュラとキサラタンの違いは?― プロストン系とプロスト系の違い

緑内障治療薬の第一選択薬として広く使われているのが「プロスタグランジン関連薬」である。
中でも最も有名なのが ラタノプロスト(キサラタン) であり、現在ではタプロス、トラバタンズ、ルミガンなど多くの関連薬がラインナップとして存在している。

一方、同じプロスタグランジン関連薬でありながら、独特の位置づけにあるのが レスキュラ(イソプロピルウノプロストン) である。

レスキュラは
「プロストン系」
キサラタンは
「プロスト系」

という分類がされており、両者は似ているようで、実は“構造も作用も全く異なる薬”である。

レスキュラとキサラタンの本質的な違い、併用の可否、作用経路、薬理学的背景、プロスタマイド系との比較など勉強していく。

プロスト系とプロストン系とは何か?

まず押さえておきたいのは、レスキュラとキサラタンは
同じ「プロスタグランジン関連薬」でも“成り立ちが違う” という点である。

● キサラタン(ラタノプロスト):プロスト系
・プロスタグランジンF2α(PGF2α)の構造・受容体活性を利用
・FP受容体作動薬
・緑内障治療の王道・第一選択の代表

● レスキュラ(イソプロピルウノプロストン):プロストン系
・PGF2αの代謝産物(不活化型)に着目して開発
→ 代謝型PGである「プロストン」が特定活性を持つことを発見
・FP受容体にほとんど作用しないという特徴
・開発コンセプトがキサラタンとは根本的に異なる

レスキュラは
「PGF2αをあえて不活化した構造」
キサラタンは
「PGF2αの活性を最大化した構造」

この“方向性の真逆ぶり”が、両者の薬理作用の違いを生み出している。

レスキュラ開発の経緯:世界初の「プロストン」緑内障薬

レスキュラは、アールテック・ウエノが日本で開発した薬であり、世界的にも非常に珍しい“国産の緑内障治療薬”である。

● プロストン(代謝型PG)の発見
PGF2αは体内で
・酵素により分解
・不活化される
と考えられていたが、研究者の上野隆司博士は、
代謝型PG(プロストン)にも一部の活性が残っている
ことを見出した。

この研究の成果がウノプロストン(レスキュラ)の開発につながる。

● FP受容体活性が「ほぼゼロ」
レスキュラは
・FP受容体への親和性が低く
・作用機序の説明が困難
という状況が長らく続いた。

その後、研究が進み、レスキュラには
イオンチャネル(BKチャネル)開口作用
があることがわかり、房水流出の説明がついたという歴史がある。

キサラタン(ラタノプロスト):FP受容体を最も強く刺激する王道薬

キサラタンは1990年代後半に登場し、現在でも世界の緑内障治療薬の中心に位置している。

主な特徴は以下。
・FP受容体作動薬として非常に強力
・房水流出経路のうち「副経路(ぶどう膜強膜流出路)」を強力に促進
・1日1回で強い眼圧下降作用
・副作用として虹彩色素沈着、まつ毛増毛、目の周りの変化(PAP)などが有名

レスキュラと比べると
眼圧下降作用はキサラタンの方が明らかに強い
ことは多くの文献で一致している。

レスキュラとキサラタンの作用機序の違い

最も重要なポイントである。

● キサラタン(FP受容体作動)
作用部位:毛様体・ぶどう膜
・PGF2αのFP受容体に結合
・ぶどう膜強膜流出路(副経路)を広げる
→ 房水の排出が増えて眼圧が下がる

● レスキュラ(BKチャネル開口)
作用部位:線維柱帯
・線維柱帯細胞のBKチャネルを開口
・線維柱帯細胞を弛緩させ、主経路(線維柱帯流出路)からの流出を増加
→ 主経路での房水流出を改善

★ 両者の違いを一文で
・キサラタン:副経路を広げる薬
・レスキュラ:主経路を広げる薬

同じ“プロスタグランジン関連薬”でも、流出経路が全く異なる点が両者の最大の違いである。

レスキュラには視神経保護・眼血流改善作用の報告あり

レスキュラの特徴として、眼圧下降以外にも:
・視神経保護作用(in vitro)
・眼血流改善作用(正常眼圧緑内障で報告)
がある。

臨床的に確立したエビデンスとは言えないものの、
日本に多い正常眼圧緑内障(NTG)患者で使われる理由
のひとつにもなっている。

レスキュラとキサラタンは併用できるのか?

これもよく質問されるポイント。

結論は:
併用は理論的には可能だが、臨床的有用性は報告が分かれる。

● 併用が理論上「有効」な根拠
・キサラタン:副経路
・レスキュラ:主経路

→ 流出経路が違うため、
併用で相加的な効果が期待できる可能性がある。

● 併用が「無効だった」という報告
複数の研究で、
・併用しても眼圧があまり下がらなかった
・ラタノプロストの単剤効果が強く、レスキュラの追加効果が少ない
という結果も存在する。

● 実臨床では「ほとんど見ない」
日本の処方の現場では
レスキュラ+キサラタンの併用は非常に稀
である。

なぜか?

理由は単純で、

ラタノプロスト単剤で十分に強いから。

眼圧が下がらない場合は
・β遮断薬
・炭酸脱水酵素阻害薬
・α2作動薬
・配合剤(コソプト・アイベータ・ミケランLAなど)
を選ぶのが一般的である。

プロスタマイド系(ルミガン)の位置づけ

患者からよく質問されるため、ここで整理しておく。

● ビマトプロスト(ルミガン)
・プロスタグランジンではなく、「プロスタマイド」
・プロスタマイド受容体 に作用する
・現行PG系の中でも眼圧下降作用は最も強力な部類

副作用としての
・まつ毛増毛
・眼周囲皮膚の色素沈着
・瞼のくぼみ(DP=深部脂肪萎縮)

はよく知られている。

ラタノプロストは1日2回で効果が低下する?

臨床的に重要な性質として、

ラタノプロストを1日2回に増やすと、かえって効果が弱まる
という報告がある。

これは「受容体のダウンレギュレーション」によるものと考えられており、
ラタノプロストを増量・増回数で治療強化はできない
という注意点がある。

副作用の増強もあるため、
原則「1日1回」が必須である。

レスキュラ vs キサラタン:総まとめ

項目レスキュラ(ウノプロストン)キサラタン(ラタノプロスト)
分類プロストン系(代謝型PG)プロスト系(PGF2α類縁体)
作用機序BKチャネル開口 → 主経路流出促進FP受容体作動 → 副経路流出促進
眼圧下降作用中等度非常に強力
視神経保護作用報告あり(in vitro)不明
眼血流改善報告あり不明
副作用比較的少ない色素沈着・まつ毛増毛など
日本での立ち位置NTGで一定の使用ありPG系の王道・第一選択
併用有効性は報告が分かれる単剤で効果強

結論 ― レスキュラとキサラタンは「似て非なる薬」

最後にポイントを整理する。

◆ レスキュラは

代謝型PGである“プロストン”

FP受容体にほぼ作用しない

イオンチャネルを介して主経路の流出改善

NTGで使用されるケースあり

◆ キサラタンは

FP受容体作動薬

副経路からの房水流出促進が非常に強力

世界の標準的第一選択薬

◆ 併用は理論的には可能だが、臨床的利益は限定的

眼圧が下がらない場合は別機序の薬を足すことが一般的。

レスキュラとキサラタンは
「プロスタグランジン関連薬」という表面的な分類は同じだが、
構造も作用も、攻めている場所(主経路か副経路か)も全く違う薬である
ということが重要な理解ポイントである。

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