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グラナテックの眼圧降下作用は弱い?
公開. 更新. 投稿者:緑内障/白内障.この記事は約4分31秒で読めます.
4,418 ビュー. カテゴリ:グラナテックは弱い?
緑内障は、眼圧が上昇することで視神経が障害され、失明する可能性もある疾患である。
40歳以上の日本人における緑内障有病率は5.0%に上る。
緑内障の薬物治療は、眼圧を下げることを目的に行われる。
緑内障の点眼薬は房水産生を抑制する薬剤と、房水流出を促進する薬剤に大別される。
前者の代表はβ遮断薬で、チモロールマレイン酸塩 (チモプトール)やベタキソロール塩酸塩(ベトプティック)などがある。
後者の代表はプロスタグランジン(PG) 関連薬で、ラタノプロスト(キサラタン)やトラボプロスト(トラバタンズ)などがある。
β遮断薬とPG関連薬はいずれも緑内障治療の第一選択薬とされる。
リパスジル塩酸塩水和物(グラナテック)は、Rhoキナーゼ阻害薬に分類される新規の眼圧降下薬である。
Rhoキナーゼは、低分子量G蛋白質であるRhoと結合するセリン・スレオニン蛋白リン酸化酵素であり、平滑筋細胞の収縮、各種細胞の形態制御など、様々な生理機能における情報伝達に関与している。
リパスジルはRhoキナーゼを選択的に阻害することでその下流へのシグナル伝達を抑制し、細胞骨格や線維柱帯細胞の形状を変化させる。
これにより線維柱帯同士の結合が弱まり、房水が流出する際の抵抗が減ることで房水流出が促進する。
PG関連薬は副流出路(ぶどう膜強膜流出路)からの流出を促進させるのに対し、リパスジルは房水流出の主要経路(80~90%)である線維柱帯-シュレム管からの流出を促進させる点が特徴である。
リパスジルの眼圧降下作用に関しては第一選択薬とされるβ遮断薬やPG関連薬に及ばないことが推察される。
リパスジルによる眼圧変化量のトラフ値・ピーク 値のプラセボ比較群間差(mmHg)は、それぞれ-1.0および-2.3であったのに対し、PG関連薬は-2.1~-5.1および-3.3~-5.1、β遮断薬はそれぞれ-3.1および -3.2と、リパスジルより高い。
このため、リパスジルの臨床上の位置付けとしては、β遮断薬およびPG関連薬で効果不十分な難治例への使用が想定される。
添付文書でもリパスジルは、「β遮断薬やPG関連薬など他の治療法が使用できない、または効果がない場合に用いる」旨が記載され、緑内障の初回治療では使用できない。
ただし、上記の薬と併用することは可能であり、その場合さらなる眼圧の低下が期待できる。
なお、リパスジルの臨床試験では、高率(69.0%)に結膜充血が見られた。
これは、リパスジルが眼の血管平滑筋の収縮を抑制することで生じるものであり、点眼後1~2時間で軽快する。
グラナテック点眼液とは?
緑内障治療薬を大別すると、房水排泄促進薬と房水産生抑制薬に分けられます。
房水排泄促進薬にはプロスタグランジン製剤(トラバタンズ、レスキュラ、キサラタン、タプロス、ルミガン)、副交感神経刺激薬(サンピロ)、抗コリンエステラーゼ薬(ウブレチド)、α1遮断薬(デタントール)があります。
プロスタグランジン製剤は、ぶどう膜強膜経路の房水排出を促進します。
副交感神経刺激薬は、シュレム管経路の房水流出を促進します。
抗コリンエステラーゼ薬は、瞳孔括約筋の収縮による縮瞳がおきて、シュレム管の圧迫がなくなり房水の流れを良くします。
α1遮断薬は、ぶどう膜強膜経路の房水排出を促進します。
房水産生抑制薬には、炭酸脱水酵素阻害剤(エイゾプト、トルソプト)、交感神経刺激薬(ピバレフリン)、β遮断薬(ミケラン、チモプトール、ベトプティック、ハイパジール)があります。
炭酸脱水酵素阻害剤は、房水の産生に関与している炭酸脱水酵素を阻害することにより、房水の量を減します。
交感神経刺激薬は、房水の産生を抑制して、房水の量を減らします。
β遮断薬は、房水の産生に関与しているβ受容体の作用を遮断することにより、房水の量を減らします。
Rhoキナーゼ阻害薬(グラナテック)は、Rhoキナーゼを阻害することにより、線維柱帯-シュレム管を介する主流出路からの房水流出を促進することで眼圧を下降させます。
なので、房水排泄促進薬。
Rhoキナーゼってなんなんだろう?
現在臨床の現場で使用できるRho-kinase阻害薬は静注薬が脳血管攣縮抑制の保険適応を持つファスジルのみでありますが、国内外で約15社が選択的Rho-kinase阻害薬の開発を進めており、その多くが心血管病の適応を目指しています。
(8)血管生物学(動脈硬化/基礎):東北大学病院 – 循環器内科
エリル点滴静注液(ファスジル)というくも膜下出血術後に使われる薬もRhoキナーゼ阻害薬らしい。
Rhoキナーゼ阻害薬のもつ血管平滑筋の弛緩作用という作用機序から、循環器系の疾患に使われる可能性が高い。
今使われている緑内障治療薬でも内服薬として循環器系の疾患に使われているものも多い。
副作用としては、血管平滑筋弛緩→血管拡張→目の充血という副作用が多い69%。
参考書籍:日経DI2015.5
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2 件のコメント
リパスジルなどのROCK阻害薬は作用機序的に平滑筋弛緩作用を示すと思うのですが、これは緑内障の患者さんに抗コリン薬を使用したのと同じ現象は起きないのでしょうか?
筋弛緩でシュレム管開口というピロカルピン等のコリン作動薬との相反する作用がイマイチ理解できないのですが、なぜリパスジルは筋弛緩で眼圧降下作用を示すことができるのでしょうか?
教えていただけるとありがたいです。
コメントありがとうございます。
難しい質問で、私のような不勉強な薬剤師にはわかりませんでした。グラナテックの作用機序は難しいですね。
ただ、抗コリン薬による眼圧上昇は、毛様体筋弛緩→シュレム管圧迫→房水流出阻害→眼圧上昇という間接的な働きですが、グラナテックは、房水の主流出路(線維柱帯─シュレム管)に直接作用するようなので、筋は弛緩するけれど房水の流出は促進する、ということなのかなと推測しますが、やっぱりわかりません。