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リオナ錠とフェロミア錠の違いは?
公開. 更新. 投稿者:血液/貧血/白血病.この記事は約7分40秒で読めます.
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高リン血症治療薬で、リオナ錠250mg(一般名=クエン酸第二鉄水和物)という薬があります。
リンを(お)治す(なおす)という意味からリオナ。
クエン酸第二鉄。
クエン酸第一鉄といえば、フェロミア。
Fe2+が第一鉄、Fe3+が第二鉄。
インクレミンはピロリン酸第二鉄だから第二鉄だ。
Fe2+(2価鉄)の状態じゃなければ吸収されないので、Fe3+(3価鉄)は胃酸で還元される必要性がある。
貧血の治療目的ではないので、体内に吸収される量は少なくてもよいのだろう。
リンと鉄が結合して体外に排泄されることを目的としている。
今までのフォスブロック、レナジェル、カルタン、ホスレノールなどと比べてどうか。
成分中にカルシウムを含まないため、カルタン(沈降炭酸カルシウム)のような、高カルシウム血症のリスクがない。
非ポリマー性のため、レナジェル錠/フォスブロック錠(セベラマー塩酸塩)、キックリンカプセル(ビキサロマー)のようなポリマー性の経口リン吸着薬で認められる便秘や腸閉塞などの重篤な副作用のリスクが低くなる。
生体内必須金属元素である鉄を主成分としているため、ホスレノール(炭酸ランタン水和物)で危惧される生体内非必須金属元素であるランタンの長期投与に伴う骨への蓄積のような懸念も少ないとされている。
鉄の補充にもつながるというメリットもある。血清フェリチン値の低い患者にはリオナがいいだろう。
鉄欠乏性貧血にリオナ?
リオナ錠は2021年3月に「鉄欠乏性貧血」の適応が追加された。
リオナ錠250㎎の薬価は現在(2022年12月)1錠76円。それに対してフェロミア錠50㎎の薬価は1錠7.7円。
リオナ錠の鉄欠乏性貧血に対する用法は、以下の通り。
通常,成人には,クエン酸第二鉄として1回500mgを1日1回食直後に経口投与する。患者の状態に応じて適宜増減するが,最高用量は1回500mgを1日2回までとする。
フェロミア錠の用法は、以下の通り。
通常成人は、鉄として1日100〜200mg(2〜4錠)を1〜2回に分けて食後経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
フェロミア錠50㎎の薬価7.7円を5倍にしても、38.5円なので、リオナ錠250㎎の薬価76円の半分くらいであるので、コスパ的にはフェロミア圧勝だが、フェロミアをそれだけ高用量で処方したら査定される。
ピートルとリオナの違い
鉄を成分とした高リン血症治療薬として、リオナ錠に次いでピートルチュアブル錠という薬が出るようだ。
P(リン)摂る、で、ピートル。
ピートルの成分は「スクロオキシ水酸化鉄」
鉄、スクロース、でんぷんから化学合成されており、胃の中ででんぷんとスクロースが溶け、表出された水酸化鉄とリンが吸着するようです。
リオナの用法用量は、
通常,成人には,クエン酸第二鉄として1回500mgを開始用量とし,1日3回食直後に経口投与する。以後,症状,血清リン濃度の程度により適宜増減するが,最高用量は1日6,000mgとする。
リオナ錠250mgだと最高用量飲むのに、1日24錠飲まなければならない。
ピートルの用法用量は、
通常,成人には,鉄として1回250mgを開始用量とし,1日3回食直前に経口投与する。以後,症状,血清リン濃度の程度により適宜増減するが,最高用量は1日3000mgとする。
ピートルチュアブル錠500mgなら最高用量飲むのに、6錠で済む。
リオナ錠の250mgという規格は、クエン酸第二鉄の量で、鉄に換算すると40mgらしい。
ピートルチュアブル錠のほうは、そのまま鉄の量が規格の量のようなので、少ない量で効率よく摂取できるようだ。
しかし、リオナには鉄剤としての効果もあり、適応症として「鉄欠乏性貧血」があるが、ピートルには鉄剤としての効果はない。
リンと腎臓
リンの主な排泄経路は尿であるため、腎疾患においてカリウムと共に体内蓄積が問題になる場合が多い。
腎不全によりリンの排出障害が起きると、高リン血症が生じる。
日本透析医学会の「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」(2012)では、透析患者で高リン血症を認めた場合は、十分な透析とリンを多く含む食品の摂取制限を行った上で、高リン血症治療薬を開始・増量することとしている。
経口の高リン血症治療薬としては、セベラマー塩酸塩(レナジェル、フォスブロック)や沈降炭酸カルシウム(カルタン)、炭酸ランタン水和物(ホスレノール)、ビキサロマー(キックリン)、クエン酸第二鉄水和物(リオナ)のほか、スクロオキシ水酸化鉄(ピートル)が発売されている。
リオナは、消化管内で食物由来のリン酸イオンと同薬の酸化水酸化鉄(3価鉄) が結合することで、消化管でのリンの吸収を抑制する。
透析患者では血清カルシウム濃度のバランスも崩れやすいため、カルシウム含有製剤は慎重に投与する必要がある。リオナはカルシウムを含有していないので使いやすい。
リオナは非ポリマー性であるため、ポリマー性のセベラマーやビキサロマーで認められる便秘や腸閉塞・腸管穿孔などのリスクが低いことが期待されている。
高リン血症治療薬は服用錠数の多さが問題になることがある。
セベラマーは1回1~2gを毎食直前に服用するが、剤形が250mg錠のみであるため、1回4~8錠(最大12錠) を服用する必要がある。
ピートルは、成人には1回250~1000mgを1日3回朝昼夕食直前に服用するが、500mg錠が発売されているため、1回に服用する薬の数が多くても2錠で済む。
高リン血症治療薬は、薬剤によって服用のタイミングが異なる。
具体的には、スクロオキシ水酸化鉄、セペラマー、ビキサロマーは食直前に服用する。
一方、沈降炭酸カルシウム、炭酸ランタン水和物、クエン酸第二鉄水和物は食直後に服用する。
ビートルはチュアブル錠であり、口の中で噛み砕いて服用する。
噛み砕いた後は唾液、または少量の水で飲み込む。
同薬は割れてしまうことがあるが、患者には薬が割れていても気にせずに服用するよう伝える。
また、噛み砕く際に歯や舌が着色することがあるが、うがいや歯磨きで取り除ける。
さらに、同剤は鉄剤であるため、便が黒くなることも、あらかじめ患者に伝えておきたい。
副作用としては下痢が最も多く、臨床試験では22.7%に発生した。
これは、例えばセベラマーでは、便秘・便秘増悪(38.2%) が報告されているのと対照的である。
その他、悪心・嘔吐、腹痛、腹部膨満なども報告されている。
透析と高リン血症治療薬
透析を必要とする重度の腎不全患者では、十分な透析に加えて、リンの摂取制限を行うが、改善が見られない場合には高リン血症治療薬を投与する。
高リン血症治療薬は、食物中のリンを糞便と共に排泄させる作用を持つ。
クエン酸第二鉄水和物(リオナ)は、唯一の水溶性金属塩タイプの高リン血症治療薬である。
クエン酸第二鉄は体内に多く存在する生理的金属塩で、食品添加物としても使用されている。
第二鉄(3価鉄)は3価の陽イオンであり、同じ3価の陽イオンであるランタン、アルミニウムとほぼ同等のリン結合力を示す。
難溶性の沈澱であるリン酸第二鉄を形成し、体外にリンを排出させる。
人工透析患者を対象とした臨床試験では、投与開始から1週間で血清リン濃度の低下が認められた。
高リン血症治療薬には他に、難溶性金属塩である沈降炭酸カルシウム(カルタン)、炭酸ランタン水和物(ホスレノール)、イオン交換樹脂であるセベラマー塩酸塩(レナジェル、フォスブロック)およびビキサロマー(キックリン)などがある。
クエン酸第二鉄は透析患者を対象とした臨床試験において、セベラマーに対する非劣性を示している。
先行する他の薬と比較したクエン酸第二鉄の利点は、副作用が少ないと考えられることである。
まず、炭酸カルシウムと比較すると、副作用である高カルシウム血症を来す懸念が少ない。
また炭酸ランタンで報告されている悪心、嘔吐の発現、セベラマーでみられる便秘や、それに伴う腸管穿孔などの重篤な胃腸障害が発現する懸念も少ないと考えられる。
リオナの副作用
リオナには1日摂取量の6錠中360mgの鉄が含まれている。
大量の鉄イオンを服用することに伴う鉄過剰症には注意が必要で、添付文書でも血清フェリチンなどの鉄に関する検査指標の定期的な測定を求めている。
特に、腎性貧血の治療に用いられる赤血球造血刺激因子製剤と併用する場合には、過剰造血に注意することとなっている。
また、糞便中に難溶性の金属塩を排泄することから、臨床試験では下痢の副作用が10.1%、便秘が3.2%、腹部不快感が2.5%の患者で見られている。
クエン酸第二鉄の製剤上の特徴は、比表面積を大きくすることで、消化管で速やかに溶解するようにしている点である。
他のリン吸着薬も同様に消化管内で溶解するが、難溶性であるため、完全に溶けるまでに時間がかかる。
早く溶解すれば、食物に含まれるリン酸をより多く吸着できると期待されるため、水溶性であることはリン吸着薬として都合がよいと考えられる。
また、吸着後に形成されるリン酸塩の溶解度が低い点も特徴に挙げられる。
3価の陽イオンとリン酸が結合したリン酸第二鉄は、2価の陽イオンとリン酸が結合したリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムと比較して水への溶解度が低い。
これは血清中のリン酸値の効率的な低下につながると考えられる。
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