2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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アコファイドは世界初の機能性胃腸症治療薬

アコファイドと機能性ディスペプシア

日本において、「機能性ディスペプシア(FD)」の保険病名は、アコファイドの発売により、2013年5月に誕生しました。
FD患者の多くは、それまで慢性胃炎として診断・治療を受けていました。

しかし、慢性胃炎は「組織学的」に、FDは「症候学的」に定義される疾患であるため、両者は同一のものではありません。
実際に、胃粘膜の慢性炎症と症状の程度は相関しないとの報告が多く、両者を異なる疾患として区別すべきとされています。

機能性胃腸症

機能性胃腸症とは、内視鏡検査でも組織学的検査でも何ら所見が認められず、胃の機能異常だと考えられている病態です。

原因は、まだ明確になっていませんが、精神的ストレスや、過労などの身体的ストレスが原因で、胃の緊張状態が様々な機能に影響を与え、早期膨満感(拡張機能が低下した状態)、胃のもたれ(収縮機能が低下した状態)や胃の痛み(知覚過敏)を起こしているのではないかと考えられています。

機能性胃腸炎は自覚症状の改善を目的とし、運動不全型にはモサプリドクエン酸水和物(ガスモチン)やイトプリド塩酸塩(ガナトン)など消化管改善薬、潰瘍症状型には制酸薬やH2RA、特異型には抗不安薬や抗うつ薬なども使用します。

機能性胃腸症に使う薬

モサプリドクエン酸塩(ガスモチンほか)、イトプリド塩酸塩(ガナトンほか)などの適応は慢性胃炎に伴う消化器症状。

胃粘膜の炎症がなく、胸焼けや胃もたれなど胃腸症状だけがある場合は適応外となる。

慢性胃炎という概念

慢性胃炎という概念には、種々の議論があります。

内視鏡検査で粘膜などに所見があれば内視鏡的胃炎、ピロリ菌が原因であれば組織学的胃炎、内視鏡検査では病変を認めないが胃もたれや胃痛などの心窩部の症状を訴える臨床的胃炎(機能性胃腸炎)と分類されたり、診断や治療が複雑になっています。

欧米では、前述の臨床的胃炎にあたるものをnon-ulcer dyspepsiaとして診断しています。

日本でも「機能性胃腸症(FD)」として、慢性胃炎とは区別して考えようとする動きが出てきています。

急性胃炎と慢性胃炎の違い

胃炎は、病歴的には、急性胃炎慢性胃炎に分けられます。

急性胃炎は、胃前庭部と胃体部の粘膜層に、浮腫、出血、びらんなどが急激に発生したものです。

原因は外的要因と内的要因があります。

慢性胃炎では、胃前庭部や胃体部の粘膜機能の喪失を伴う萎縮により、胃の細胞が失われガストリン分泌が減ったり、酸分泌腺が失われ胃酸・ペプシンなどの内因性要素が減少したりします。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシア(FD)は、症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないにもかかわらず、胃・十二指腸領域に由来すると思われる症状を慢性的に呈する疾患です。日常診療において、腹部の愁訴を訴える患者は多く、日本におけるFDの有病率は、健診受診者の10%程度、上腹部症状を訴え病院を受診した患者の半数程度と報告されています。

FDは主な症状によって、食後愁訴症候群(PDS)と心窩部痛症候群(EPS)に分類されます。実際にはPDSとEPSが併存することも少なくありません。

【食後愁訴症候群(PDS)】
①煩わしい食後膨満感
食物がいつまでも胃内に停滞しているような不快感(胃もたれ)
②早期飽満感
食事開始後、すぐに胃がいっぱいになるような感覚

【心窩部痛症候群(EPS)】
③心窩部痛
心窩部に生じる非常につらく、差し込むような不快な自覚症状(痛み)
④心窩部灼熱感
心窩部に生じる熱感を伴う不快な自覚症状

機能性消化管疾患(FGID)

通常の臨床検査では症状の原因となりうる器質的病変を見出せないにもかかわらず、消化器症状が長期間持続もしくは再燃・寛解を繰り返す疾患群を機能性消化管疾患(FGID)と総称します。FGIDは、心理社会的因子と消化管の運動・知覚などの生理機能が相互に作用することで病態が形成されていると考えられています。そのため、心理社会的因子を共通の背景として、複数のFGIDを合併する患者や精神疾患を合併するFGID患者も多く存在します。
【機能性食道障害】
胸やけ、胸痛、嚥下困難など
【機能性胃十二指腸障害】
機能性ディスペプシア(FD)、曖気(げっぷ)、悪心・嘔吐など
【機能性腸障害】
過敏性腸症候群(IBS)、機能性便秘・下痢など
【機能性直腸肛門障害】
便失禁、肛門痛、排便障害など

機能性ディスペプシア治療薬

機能性ディスペプシア(FD)に対する有効性が示されている薬剤には、酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬、抗うつ薬、抗不安薬、漢方薬があり、推奨の強さから初期治療と二次治療に用いられるものに分けられています。

FDの初期治療では、食後愁訴症候群(PDS)に対しては主に消化管運動機能改善薬が、心窩部痛症候群(EPS)に対しては主に酸分泌抑制薬が用いられます。
実際には、PDSとEPSが併存することも多く、併用療法も考慮されます。
なお、現在、「機能性ディスペプシア」の効能・効果を有する薬剤はアコチアミドのみです。

【酸分泌抑制薬】
酸分泌抑制薬は、痛みを中心とするEPSに対する改善効果が報告されています。
また、十二指腸への胃酸の流入を抑えることで、PDSに対しても改善効果が期待されています。
[ヒスタミンH2受容体拮抗薬][プロトンポンプ阻害薬][ムスカリン受容体拮抗薬]

【消化管運動機能改善薬】
消化管運動機能改善薬とは、消化管運動機能を改善するとともに、胃・十二指腸の知覚過敏の改善効果を示す薬剤の総称です。
作用機序は薬剤によって異なりますが、主に副交感神経系に作用することで消化管運動機能を改善すると考えられています。

副交感神経は、節後線維から遊離されるアセチルコリン(ACh)により、主に消化管平滑筋のM3受容体を刺激し、消化管運動を促進します。
AChの遊離は、5-HT4受容体やドパミンD2受容体、オピオイド受容体などを介した、種々の神経伝達物質によって制御されています。

食後愁訴症候群と心窩部痛症候群の違い

持続性または反復性の上腹部愁訴を有するものの、症状の原因となる明らかな器質的異常が認められない疾患群は、古くは胃下垂、胃アトニー、慢性胃炎などと呼ばれていた。

診断技術が消化管透視(エックス線造影検査)から消化管内視鏡へと進歩し、さらに1980年代から90年代にかけて消化管の運動やH.pyloriに関する研究が盛んになったことも相まって、ようやくこうした疾患群にも光が当てられるようになった。

その端緒は、1987 年の米国消化器病学会議(AGA)において、潰瘍のない上腹部症状(Non-Ulcer Dyspepsia : NUD)という考え方が提唱されたことにより開かれた。
その後、1992年にローマで開かれた世界消化器病学会では、当時は上部消化管不定愁訴などと呼ばれていたFDやIBS、機能性便秘などのFGIDs に関する病態の検討および治療の開発を、世界共通の対象において行うことを目的に診断基準を定めた。
これがROME診断基準(ROMEⅠ)であり、その後、1998年にROMEⅡ、2006年にROMEⅢと順次改訂されている。

従来の上部消化管不定愁訴という概念から、ROMEⅠでは胃食道逆流症(GERD)が除外され、ROMEⅡではFDの定義のもとに運動不全様症状、潰瘍様症状、非特異症状に分類されている。
さらに、ROMEⅢでは非特異症状が除外されるとともに、食後愁訴症候群(Postprandial Distress Syndrome: PDS)、心窩部痛症候群(Epigastric Pain Syndrome : EPS) に分類された。

FD のうち、PDS は患者が辛いと感じる食後のもたれ感(普通の量の食事でも、食物がいつまでも胃内にとどまっているような不快感)、早期飽満感(普通の量の食事でも、食べ始めてすぐにお腹がいっぱいになり、それ以上食べられなくなる感じ)が、それぞれ少なくとも週に数回以上みられるタイプを指す。
また、EPSは心窩部痛や心窩部灼熱感(排便や放屁では改善しない、上腹部に限局した間欠的な痛みや灼熱感)に少なくとも週1回以上悩まされるタイプと定義されている。
ただし、実際にはPDSとEPSの両方の症状がみられる例が多いという。

FDと診断されるのは、診断の6ヵ月以上前から辛いと感じる食後のもたれ感、早期飽満感、心窩部痛、心窩部灼熱感の4つの症状のいずれかが発現しており、なおかつ3ヵ月以内に上部消化管内視鏡などが施行され、器質的異常が否定されている患者である。

アコファイドの作用機序

アコファイド(アコチアミド)はアセチルコリンエステラーゼを阻害してコリン作動性神経終末から遊離されたアセチルコリンの分解を抑制することで、コリン作動性の胃の正常な運動機能を取り戻す、胃の運動を増強する作用を持つ薬です。

胃の運動は、食事をしたときに副交感神経から分泌されるアセチルコリンによって起こる。
アセチルコリンが平滑筋のムスカリン受容体(主にM3受容体)に結合することで、胃の収縮や胃酸の分泌が生じる。
しかしFD(機能性胃腸症)患者では、心理的ストレスなどによりアセチルコリンの分泌能が弱まり、胃の運動機能が低下している。
そのために起こる諸症状に、コリンエステラーゼ阻害薬のアコファイドが奏功する。

アセチルコリンエステラーゼ阻害作用により胃以外の消化管の運動も亢進する可能性があるため、下痢や便秘、悪心、嘔吐といった副作用に注意したい。

アコファイドの特徴

アコチアミド塩酸塩水和物は、ゼリア新薬によって創製された新規化合物であり、消化管運動に重要な役割を果たす神経伝達物質アセチルコリンの分解酵素である末梢のアセチルコリンエステラーゼを阻害することにより、胃運動の低下および胃からの食物排出遅延を改善させ、FDの自覚症状のうち食後膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感を改善します。

ローマIII基準で診断されたFD患者を対象に有効性を証明した世界初のFD治療剤として、アコファイド錠は世界に先駆けて日本で発売されました。

ガナトンとかガスモチンの適応症名は慢性胃炎。

ガスモチンの作用機序は、胃や十二指腸に存在するセロトニン5-HT4受容体を刺激して、アセチルコリンの遊離を増大させ、アセチルコリンの作用により消化管運動促進作用および胃排出促進作用を示す。

ガナトンはドパミンD2受容体拮抗作用によりアセチルコリン(ACh)遊離を促し、更にアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害作用を有しており、遊離されたAChの分解を阻害する。これらの協力作用により消化管運動亢進作用を示す。

アセチルコリンエステラーゼ阻害作用ってことはガナトンに近いのかな。
とにかく、アセチルコリンの作用を増強して、消化管の働きを高める。これといって真新しい薬ではないような。

消化管運動賦活薬

消化管運動賦活薬は、消化管の神経叢と平滑筋に作用して運動機能異常を改善する効果が期待される。

ドパミン受容体拮抗薬のイトプリド(ガナトン)は、ドパミンD2受容体拮抗作用とアセチルコリンエステラーゼ阻害作用を併せもち、アセチルコリンの遊離を促進するとともに遊離したアセチルコリンの分解を阻害するという2つの働きで消化管運動賦活作用を発揮する。

オピオイド受容体作動薬のトリメブチン(セレキノン)は、オピオイドμ受容体刺激作用およびオピオイドμ受容体拮抗作用により、消化管の運動を改善する。

また、メトクロプラミド(プリンペラン)、ドンペリドン(ナウゼリン)、スルピリド(ドグマテール)などのドパミンD2受容体拮抗薬も用いられてきた。

現在、消化管運動賦活薬としてもっとも繁用されているモサプリド(ガスモチン)は、胃・十二指腸に存在するセロトニン5-HT4 受容体を刺激してアセチルコリンの遊離を増大させ、アセチルコリンの作用により消化管運動促進作用および胃排出促進作用を示す。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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