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アコファイドを使うには胃カメラが必須?
公開. 更新. 投稿者: 16,611 ビュー. カテゴリ:消化性潰瘍/逆流性食道炎.この記事は約8分1秒で読めます.
アコファイドを使うには胃カメラが必須?

アコファイド(一般名:アコチアミド塩酸塩水和物)は、機能性ディスペプシア(FD)に適応を持つ薬です。
機能性ディスペプシアとは、
「胃もたれがする」
「少し食べただけでお腹いっぱいになる」
「胃が張る」
といった症状が続いているにもかかわらず、胃潰瘍や胃がんなど症状を説明できる明らかな器質的疾患が見つからない状態です。
では、
「胃もたれがするから、とりあえずアコファイドを出しておきましょう」
という処方はできるのでしょうか?
アコファイドには、他の胃薬とは少し違ったルールがあります。
アコファイドを処方するには胃カメラが必要?
結論からいえば、アコファイドを機能性ディスペプシアに対して使用する場合には、胃がんなどの器質的疾患がないことを検査によって確認することが重要です。
アコファイドの電子添文には、効能・効果に関連する注意として、
「上部消化管内視鏡検査等により、胃癌等の悪性疾患を含む器質的疾患を除外すること」
という趣旨の記載があります。
これはアコファイド特有の問題というより、「機能性ディスペプシア」という病気そのものの性質を考えるとわかりやすいでしょう。
機能性ディスペプシアは、胃の症状があるにもかかわらず、それを説明できる器質的疾患が認められない病気です。
つまり、
「胃がんや胃潰瘍などがない」ことを確認して、初めて機能性ディスペプシアという診断につながる
わけです。
単に問診だけで「胃もたれだからFDだろう」と判断してアコファイドを使う薬ではありません。
保険請求にも検査日の記載が必要
さらにアコファイドの場合、この検査は添付文書上の注意だけではありません。
保険診療上もルールがあります。
厚生労働省の「診療報酬明細書の『摘要』欄への記載事項等一覧」では、アコファイドについて、
「上部消化管内視鏡検査等の実施年月日」
を診療報酬明細書に記載することになっています。
ただし、毎月ずっと検査日を書く必要があるわけではありません。
検査を実施した月には実施年月日を記載し、さらに、
アコファイドの初回投与時には必ず実施年月日を記載する
というルールです。
これは昔だけのルールではありません。
2026年現在の厚生労働省の資料にも、この取り扱いは残っています。
したがって、
「昔は胃カメラが必要だったけれど、今は必要なくなった」
というわけではありません。
「胃カメラのある病院でなければ処方できない」は正しい?
ここは少し注意が必要です。
以前は、
「胃カメラのある施設以外ではアコファイドを処方できない」
と説明されることもありました。
しかし、これは正確には言いすぎでしょう。
求められているのは、
上部消化管内視鏡検査等によって器質的疾患が除外されていること
であって、
アコファイドを処方する医療機関自身が胃カメラを実施しなければならない
とはされていません。
例えば、消化器内科で胃カメラを受け、胃がんや胃潰瘍などが否定されて機能性ディスペプシアと診断された患者が、その後別の医療機関で治療を継続するというケースは考えられます。
重要なのは、検査が適切に行われ、その情報を処方医が把握していることです。
したがって、
「胃カメラ設備のないクリニックでは絶対にアコファイドを処方できない」
という理解は適切ではありません。
「胃カメラが必須」と言い切っていい?
さらに細かく見ると、添付文書や保険上の文言は、
「上部消化管内視鏡検査等」
となっています。
「上部消化管内視鏡検査」とだけ書かれているわけではなく、「等」が付いています。
そのため、厳密には、
「アコファイド=必ず胃カメラそのものを実施しなければならない」
と単純化するより、
「胃がんなどの器質的疾患を除外するため、上部消化管内視鏡検査等による検査が必要」
と理解するのが適切です。
ただし、胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などを直接確認できる上部消化管内視鏡検査は、機能性ディスペプシアを診断するうえで非常に重要な検査です。
実際の臨床では、いわゆる「胃カメラ」が中心になります。
なぜアコファイドだけこんなに厳しい?
理由は、アコファイドの適応症を見るとわかります。
アコファイドの効能・効果は、
「機能性ディスペプシアにおける食後膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感」
です。
例えば「胃もたれ」という症状だけなら、原因は機能性ディスペプシアとは限りません。
胃がんでも胃もたれが起こる可能性があります。
胃潰瘍でも起こります。
胃炎など別の病気が隠れていることもあります。
それなのに、検査をせず、
「胃もたれだからアコファイド」
としてしまうと、重大な器質的疾患を見逃す可能性があります。
だからこそ、アコファイドを使用する前には、器質的疾患を除外することが重要なのです。
昔受けた胃カメラでもいい?
ここで薬剤師として気になるのが、
「胃カメラはいつ受けたものでもいいの?」
という問題です。
例えば、
「5年前に胃カメラをして異常ありませんでした」
という患者に、新たに胃もたれが出現した場合です。
添付文書や保険請求上のルールには、「○か月以内」「○年以内」のような一律の有効期限は明記されていません。
しかし、
昔の検査で異常がなかったことと、現在も器質的疾患がないことは同じではありません。
特に、高齢者、体重減少、貧血、出血を疑う症状、嚥下障害、繰り返す嘔吐など、器質的疾患を疑わせる所見があれば、以前の検査結果だけで判断するのは難しくなります。
「胃カメラを一度でも受けていれば、一生アコファイドを使える」という意味ではありません。
再検査が必要かどうかは、症状や年齢、前回の検査時期などを踏まえて医師が判断します。
他院で胃カメラを受けていたら?
薬局では、こちらのケースのほうが遭遇しやすいかもしれません。
患者が、
「去年、別の病院で胃カメラをして異常なしと言われました」
と言っているケースです。
この場合、
「この病院には胃カメラがないからアコファイドは処方できない」
とは限りません。
他院で実施した検査結果を処方医が把握し、器質的疾患が除外されていると判断できれば、アコファイドによる治療につながることはあり得ます。
ただし、初回投与時にはレセプト上、上部消化管内視鏡検査等の実施年月日の記載が必要です。
したがって、処方医側では「検査をしたらしい」だけでなく、検査の実施年月日を含めた情報を確認する必要があります。
薬局では「胃カメラしましたか?」と聞く?
アコファイドが初めて処方された患者であれば、
「胃カメラなどの検査は受けましたか?」
という確認は意味があります。
特に、
「胃の調子が悪いと言ったら今日初めてアコファイドが出たけど、検査は何もしていない」
という患者であれば、処方意図や検査歴を確認するきっかけになります。
ただし、患者本人が検査名を正確に覚えていないこともあります。
また、他院で以前検査を受けている可能性もあります。
そのため、
「胃カメラをしていない=即、処方不可」
と機械的に判断するのではなく、必要に応じて処方医へ確認することが重要でしょう。
アコファイドは胃痛には効かない?
アコファイドについてもう一つ注意したいのが、機能性ディスペプシアならどんな症状にも使えるわけではないことです。
アコファイドの適応となっている症状は、
- 食後膨満感
- 上腹部膨満感
- 早期満腹感
です。
一方、
心窩部痛や心窩部灼熱感に対する有効性は確認されていません。
機能性ディスペプシアは、大きく、
食後愁訴症候群(PDS)
と
心窩部痛症候群(EPS)
というタイプに分けて考えることができます。
PDSでは、食後の胃もたれや早期満腹感など、食事に関連した症状が中心です。
EPSでは、みぞおちの痛みや焼けるような感覚が中心になります。
両方の症状を持つ患者も珍しくありません。
アコファイドは、このうち特に胃もたれ・膨満感・早期満腹感といった症状を対象とした薬と考えるとわかりやすいでしょう。
アコファイドはどうやって効く?
アコファイドは、アセチルコリンエステラーゼを阻害することなどにより、消化管におけるアセチルコリンの働きを高めます。
アセチルコリンは、胃の運動に関係する神経伝達物質です。
その働きを高めることで胃の運動を改善し、
「食べると胃が重い」
「少し食べただけでいっぱいになる」
「食後ずっと胃に食べ物が残っている感じがする」
といった症状を改善します。
通常、食物が胃に入ると胃の上部が広がって食物を受け入れ、その後、胃の運動によって内容物を少しずつ十二指腸へ送り出します。
機能性ディスペプシアでは、この胃の運動や食物を受け入れる機能などに異常があることが、症状の一因と考えられています。
アコファイドは「胃もたれに使う普通の胃薬」とは少し違う
アコファイドを理解するうえで重要なのは、
「胃もたれを訴えた人にとりあえず使う胃薬ではない」
ということです。
「胃もたれ」という症状がある。
↓
胃がんや胃潰瘍などの器質的疾患がないか調べる。
↓
器質的疾患では症状を説明できない。
↓
機能性ディスペプシアと診断する。
↓
その中でも食後膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感がある。
↓
アコファイドの使用を検討する。
という流れになります。
アコファイドの処方に検査の条件が付いているのは、この薬が単なる「胃もたれの薬」ではなく、機能性ディスペプシアという診断を前提として使う薬だからと考えると理解しやすいでしょう。
まとめ
「アコファイドを使うには胃カメラが必須?」
という質問に対しては、
「胃カメラなどによって胃がん等の器質的疾患が除外されていることが必要。ただし、処方する医療機関自身が胃カメラを行わなければならない、という意味ではない」
と答えるのが適切でしょう。
2026年現在も、アコファイドを保険診療で使用する場合には、上部消化管内視鏡検査等の実施年月日についてレセプト上の記載ルールがあります。
特に初回投与時には、実施年月日の記載が必要です。
そのため薬局でも、初めてアコファイドが処方された患者に対して、
「胃カメラなどの検査は受けていますか?」
と確認することには意味があります。
ただし、
「このクリニックには胃カメラがないから処方できない」
とまでは言えません。
他院で行われた検査結果を踏まえて処方されるケースも考えられるからです。
アコファイドを見ると、「機能性ディスペプシア」という病名の「機能性」という言葉の意味がよくわかります。
症状があるのに器質的な病気が見つからない。
だからこそ、その「器質的な病気がない」ことを確認するプロセスが、治療薬を使ううえでも重要なのです。
参考資料
PMDA「アコファイド錠100mg 添付文書」
厚生労働省「診療報酬明細書の『摘要』欄への記載事項等一覧(薬価基準)」
厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その10)」
PMDA「アコファイド錠100mg 審査報告書」



