2025年5月16日更新.2,475記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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副甲状腺と甲状腺の違いは?

副甲状腺とは?

副甲状腺は、甲状腺の裏側にある小さな臓器で、1つ数ミリの米粒ほどの大きさのものが通常4個(左右上下2対)あります。「副」とついていますが、甲状腺とはまったく異なる機能をもつ独立した臓器で、別名「上皮小体」とも呼ばれています。

副甲状腺の主な働きは、副甲状腺ホルモン(PTH:パラトルモン)を分泌すること。このホルモンは、血液中のカルシウム濃度を調節する重要な役割を担っています。カルシウムは骨の材料であるだけでなく、筋肉の収縮、血液凝固、神経伝達など生命活動に不可欠なミネラルです。

【甲状腺との違い】
甲状腺は、代謝全般を調節する甲状腺ホルモン(T3, T4)を分泌し、体温や心拍、エネルギー代謝に関与します。
一方、副甲状腺はカルシウム代謝の制御に特化しています。

名前は似ていても、場所こそ近いものの機能も分泌ホルモンも全く異なる臓器なのです。

【豆知識:副甲状腺のルーツ】
脊椎動物の進化過程では、かつてエラとして機能していた構造が、陸上進出に伴いカルシウム調節機能を担う副甲状腺に変化したと考えられています。

カルシウム代謝と副甲状腺の役割

PTHは以下のような作用によって、血中カルシウム濃度を一定に保つよう働きます

・骨からカルシウムを血液中に動員(骨吸収)
・腎臓でのカルシウム再吸収の促進
・腎臓でのビタミンD活性化(→腸からのカルシウム吸収を促進)
・リンの尿中排泄の促進(リンはカルシウムと拮抗する)

逆に、血中カルシウム濃度が上がるとPTH分泌は抑制されます。このようにして、カルシウム濃度は厳密に制御されています。

腎臓と副甲状腺の関係

腎臓は、PTHのターゲット臓器の1つであり、活性型ビタミンD(1,25(OH)2D3)を産生する場所でもあります。腎機能が低下するとビタミンDの活性化が不十分となり、腸管からのカルシウム吸収が低下します。その結果、血中カルシウム濃度が低下し、PTH分泌が過剰になります(二次性副甲状腺機能亢進症)。

この状態が続くと、骨からカルシウムが過剰に動員され、骨密度が低下しやすくなり、骨折リスクが増加します。

レグパラとテリパラチド

レグパラ(シナカルセト):副甲状腺ホルモンの分泌を抑えるカルシミメティクス(カルシウム受容体作動薬)。透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症などに使用されます。

テリパラチド(フォルテオ/テリポン):PTHの活性部分(1-34アミノ酸)をもとに作られた骨形成促進薬。骨芽細胞を刺激し、骨形成を促進します。皮下注射製剤です。

副甲状腺は甲状腺とは無関係の臓器
副甲状腺ホルモンはカルシウム代謝の要
腎臓とビタミンDとも深く関連
CKDや透析患者では副甲状腺の過活動に注意

薬剤師としては、骨代謝、ビタミンD製剤、カルシウム調節薬(レグパラ・フォルテオなど)の理解において、副甲状腺の基礎知識は重要です。

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