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ステロイドをワセリンに混ぜても薄まらない?
公開. 更新. 投稿者:アトピー性皮膚炎/ステロイド外用薬.この記事は約4分33秒で読めます.
6,267 ビュー. カテゴリ:皮膚外用剤の希釈
内服薬と違って、外用薬の場合、濃度の違うものはあまり聞かない。
プロトピック軟膏の0.1%と0.03%はありますが。
濃度を濃くすればよく効いて、薄くすれば弱まるという単純なものではないようだ。
一般に、皮膚外用剤は透過性を高めるために薬物(主薬)は基剤中に飽和しており、大部分が結晶として存在しています。
そのため、希釈しても効果や副作用が減弱しないことがあります。
基剤中に溶解している薬物濃度
皮膚外用剤からの薬物放出は基剤中に溶解している薬物濃度に依存するため、希釈により、溶解している薬物濃度が薄まると放出が低下します。
しかし、皮膚外用剤では、薬物が基剤中に全て溶解しているよりも飽和しているほうが放出に優れるため、大部分は結晶として存在しています。
ステロイド外用剤では、薬物は基剤中に一部しか溶解していません。
例外として、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン軟膏のように、薬物が基剤中に完全に溶解していると添付文書に記載されている製剤もあります。
このような製剤では、希釈により効果や副作用が軽減できます。
また、基剤中に溶けている薬物濃度は先発医薬品と後発医薬品では異なり、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン軟膏の後発医薬品では表示含量の1/10しか溶けていません。
主なステロイド外用剤の基剤に溶けている薬物の割合(表示含量に対する基剤中に溶けている薬物の割合)
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル 1/16
クロベタゾールプロピオン酸エステル 1/50
酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン 2/3
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル 1/130
ヒドロコルチゾン酪酸エステル 1/130
液滴分散型製剤
皮膚外用剤の効果は基剤中に溶解している薬物濃度に依存するため、できるだけ高濃度で溶解させています。
液滴分散型製剤は、薬物をプロピレングリコールなどの溶媒に完全に溶解させた後、基剤中に分散させています。
ステロイド外用剤のプロピオン酸アルクロメタゾン軟膏とフランカルボン酸モメタゾン軟膏、活性型ビタミンD3製剤およびタクロリムス水和物軟膏が該当します。
これらの製剤を希釈した場合、効果は減弱することが予想されます。
このように、皮膚外用剤の希釈は、期待したとおりの効果や副作用の減弱を得られない場合があるので、注意が必要です。
なるほどつまりは白色ワセリンで混ぜれば、カサが増えるわけだから経済的ともいえるかな。
計量混合加算が算定されるので、必ずしもそうとはいえないか。
ステロイドを希釈する意味
ステロイドの外用薬を単剤で全身に塗る量を処方するとかなりの量になり、塗布に抵抗感を持つ患者もいる。
ワセリンで希釈して塗るようにすれば、ステロイドの量も少なく済み、患者も安心するためか、コンプライアンスの向上につながる。
ステロイドの混合を行っている医師の26.1%が「ステロイドの副作用の軽減を期待している」と回答。
保湿剤などと混合して、皮膚透過性を上げる効果を期待しているのは18.5%だった。
しかし、ステロイドの副作用の軽減、保湿剤との混合による相乗効果を示した明確なエビデンスはほとんどないのが現状。
半分に混ぜれば効果も半分?
リドメックスコーワ軟膏を白色ワセリンで2分の1、4分の1に希釈して塗布したところ、皮膚蒼白度を指標とした血管収縮効果はリドメックス単剤よりもそれぞれ3分の2、2分の1で、希釈率と同程度には低下していなかった。
パスタロンソフト軟膏やケラチナミンコーワ軟膏といった尿素などと混合した場合は、リドメックス単剤よりも血管収縮効果は高まっていたという。
アンテベート軟膏について、4分の1、16分の1に希釈しても、血管収縮反応の陽性率に差はなかったとも報告されている。
配合変化によりステロイドの含量が低下し過ぎてしまうこともある。
エステル基を持つステロイドは、基剤が酸性の状態で安定しているが、混合によりpHがアルカリ性に傾くと、エステル基の加水分解によって、その含量が低下してしまうものがある。
特に17位にエステル基を持ち、21位OH基を持つモノエステルのロコイド軟膏やボアラ軟膏、リンデロンV軟膏は、ワセリンなどとの混合で含量が低下した報告されている。
希釈して皮膚透過性が上がる例もある。
油脂性基剤のステロイドはもともと皮膚透過性が低いのだが、乳剤性の保湿剤を混ぜると、皮膚透過性が高まったという。
リドメックス軟膏の単剤と、パスタロンソフト軟膏あるいはヒルドイドソフト軟膏でそれぞれ1:1に混合して、ステロイドの濃度を希釈したものの皮膚透過性も調べた結果、皮膚透過比は、リドメックス単剤よりもパスタロンとの混合では4〜5倍、ヒルドイドとの混合でも2倍に増加していた。
アンテベート軟膏やマイザー軟膏も、単剤よりも混合した方が皮膚透過性が高まっていたという。
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