2025年7月9日更新.2,512記事.

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ドライアイの原因はシェーグレン症候群?

ドライアイの原因はシェーグレン症候群?

「目が乾く」「目がゴロゴロする」といった違和感をドライアイと捉えがちですが、その背後には思わぬ疾患が隠れていることもあります。その代表的なものが「シェーグレン症候群」です。ドライアイの原因としてのシェーグレン症候群を中心に、その他の原因やリスク因子についても勉強します。

シェーグレン症候群とは?

シェーグレン症候群は自己免疫疾患の一種で、主に涙腺や唾液腺が標的になります。免疫系が自分自身の分泌腺を攻撃することで、涙や唾液の分泌が著しく低下します。その結果、目や口の乾燥といった症状が出現します。

・好発年齢:40~60歳
・性別:圧倒的に女性に多い(男女比は約1:9)

シェーグレン症候群の初期症状は「ただのドライアイ」と誤認されやすく、眼科での診察によって初めて疑われることもあります。

シェーグレン症候群の診断基準(厚生労働省基準)

以下の4項目のうち、2項目以上が陽性であればシェーグレン症候群と診断されます:

・唾液腺生検:口唇小唾液腺の生検でリンパ球の浸潤が認められる。
・唾液分泌量の低下:ガムテスト、サクソンテスト、唾液腺造影、唾液腺シンチグラフィーなどで証明される。
・涙液分泌の低下:シャーマーテスト、ローズベンガル試験、蛍光色素試験などで評価。
・抗体検査:抗SS-A抗体または抗SS-B抗体が陽性である。

その他のドライアイの原因

●βブロッカー点眼液(緑内障治療薬)

βブロッカー点眼薬は、緑内障治療で頻用されますが、長期使用によって涙液の分泌量が減少したり、角膜障害を引き起こすことがあります。これは、涙液の安定性を表すBUT(Break Up Time)を短縮させることで示されています。

BUTとは:まばたき後に涙液層が破綻するまでの時間。短いほど涙液層が不安定であることを示します。

●アイメイクとドライアイの関係

特に若年女性のドライアイの原因として、アイメイクの影響も無視できません。マイボーム腺という脂分を分泌する腺の開口部が、アイライナーやマスカラによって塞がれることで、涙の蒸発が促進され、ドライアイが発症します。

アイメイクの長期使用や不適切な使用がリスクに。

まつ毛パーマやエクステンションに使用される薬液・接着剤も刺激因子に。

化粧品の使用期限目安
アイシャドウ:約1年
アイライナー:約1年
マスカラ:約4カ月
ファンデーション:約6カ月

これらを超えて使用されるケースも多く、目の周囲での使用は眼感染症やマイボーム腺炎の原因となることがあります。

●コンタクトレンズの影響

・長時間装用や、使用期限切れのレンズの使用
・レンズケアが不十分な場合
・これらはマイボーム腺の炎症や涙液の質的異常の要因に

ドライアイの治療

■薬物療法
・人工涙液:ヒアレイン点眼液、ソフトサンティア(OTC)など
・ムチン産生促進薬:ジクアス、ムコスタ点眼液
・抗菌薬の併用:感染予防目的に使用されることもある
※防腐剤無添加の製剤が望ましい

■涙点プラグ
点眼治療で効果が不十分な場合は、涙の排出経路である涙点を一時的に閉鎖する「涙点プラグ」が適応となることがあります。

まとめ

ドライアイの原因は単なる加齢やパソコン作業のせいだけではありません。シェーグレン症候群のような全身性の疾患が背景にある可能性もあり、特に涙液分泌の低下を伴う症状が続く場合には専門医の受診が推奨されます。

また、日常的に使用するアイメイクやコンタクトレンズにも注意が必要です。ドライアイの症状が長引く場合は、その背景にある原因を見極め、適切な対処を行うことが大切です。

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