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ACE阻害薬で肺炎予防?
公開. 更新. 投稿者:高血圧.この記事は約5分26秒で読めます.
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誤嚥性肺炎予防にACE阻害薬
ACE阻害薬に咳の副作用があることは有名です。
この咳を利用して、高齢者の誤嚥性肺炎の予防に使うことがあります。
誤嚥性肺炎は、咳反応や嚥下反射が低下することで、気が付かないうちに口腔内の雑菌を唾液とともに気管や肺に吸引することにより発症します。
高齢者は、喉の反応が低下しているので誤嚥性肺炎を起こしやすいのです。
誤嚥性肺炎の予防に効果があるとされる薬物
・ACE阻害薬
ACEはサブスタンスPの分解酵素の1つ。
ACE阻害薬は咽頭や喉頭、気管の粘膜に放出されるサブスタンスPの分解を阻害し、嚥下反射を正常化する。
・ドパミン作動薬
サブスタンスPの産生は大脳基底核のドパミン作動性ニューロンによって調節される。
・シロスタゾール
シロスタゾールは血管拡張作用を持つ。
・葉酸
高齢者に共通してみられる葉酸欠乏は、ドパミンの欠乏を招き、嚥下機能を低下させている。
・半夏厚朴湯
半夏厚朴湯は、気分がふさいで、咽頭、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う諸症状に用いられる漢方薬。
・サブスタンスP
11個のアミノ酸で構成されている神経ペプチド。
神経伝達物質として嚥下反射や咳反射にも関わる。
食物を飲み込むとき、誤って気管に入ったときに刺激があると、サブスタンスPが放出され、末梢神経から迷走神経・舌咽神経を通じて中枢に伝わり、食物を飲み込むときは嚥下反射が、誤嚥した場合は咳反射が起こる。
ゆえに、サブスタンスPの産生が少ないと、これらの反射・咳反射が生じず、誤嚥性肺炎になりやすい。
このサブスタンスPの産生は、大脳基底核を有している患者では、ドパミン産生とドパミンにより促されるサブスタンスP産生が不足し、嚥下反射・咳反射という防御機能が低下して、不顕性誤嚥を招きやすく、ひいては誤嚥性肺炎に至りやすい。
プレタールで肺炎予防?
プレタール(シロスタゾール)は抗血小板薬ですが、気管の反射を良くする作用があり、誤嚥性肺炎の発症を減少させる効果を併せ持つことが臨床試験で示されています。
プレタールが肺炎を予防する機序は、大脳基底核の脳血管障害を予防するために肺炎が予防された可能性のほか、サブスタンスPの合成量を増やす可能性も指摘されています。
サブスタンスPには、咽頭や気道に働きかけて嚥下反射と咳反射を起こす役割があります。
ドーパミンによってサブスタンスPの合成が促されます。
サブスタンスPの分解を阻害するACE阻害剤や、ドーパミン放出を促すアマンタジンにも誤嚥性肺炎を予防する効果があります。
脳梗塞で飲み込めなくなるのはなぜ?
脳梗塞によって、大脳基底核が傷害を受けると、ドーパミンの産生が低下し、ドーパミンによって合成が促される神経伝達物質サブスタンスPが減少します。
サブスタンスPには、咽頭や気道に働きかけて嚥下反射と咳反射を起こす役割があるため、サブスタンスPの減少は、嚥下機能の低下につながります。
脳卒中で嚥下障害
摂食・嚥下障害の原因疾患の約40%が脳卒中であるといわれています。
脳卒中患者のうち、急性期には約30%の患者に誤嚥が認められます。
慢性期にまで誤嚥が残存する患者は全体の約5%程度とみられていますが、誤嚥を認めない軽度の嚥下障害例はさらに数多く存在していると考えられます。
日本の脳卒中患者は約134万人(厚生労働省2008年患者調査)であり、高齢化の急速な進展に伴い患者数は増加すると推測されていますから、脳卒中後の嚥下障害に対する対応の確立は社会的な急務といえます。
ACE阻害薬で禁煙?
喫煙は脳卒中などの動脈硬化性疾患の最も重要な危険因子の一つである。
したがって禁煙は最重要課題であるが、禁煙の成功率は低くまた、現在のところ禁煙補助薬の保険適用の敷居も高い。
非喫煙者と比較して喫煙者は咳反射感受性が低下している。
喫煙愛好家ははじめから咳反射が低下していて、煙草の煙などで咳き込まない人が愛煙家となっていくようである。
これにACE阻害薬のサブスタンスPを上昇させ咳反射感受性を鋭敏にする作用を応用すると、喫煙による咳き込みが誘発され、禁煙の手助けとなる場合が考えられる。
咳反射は加齢で低下しない?
従来、咳反射は加齢とともに低下すると信じられてきましたが、ADLの高い健常人20歳代から80歳代を対象にした最近の知見によると、咳反射、嚥下反射ともに有意な変化はみられないことが示されています。
一方、大脳基底核の脳梗塞を主体とした脳血管障害があると嚥下反射は低下し、しかも、夜間には顕著な低下が認められ、不顕性誤嚥の頻度が高くなることが明らかにされました。
このように、脳血管障害が高齢者の誤嚥性肺炎の大きな原因と考えられることから、予防のためには、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病のコントロールが重要であり、すでに脳血管障害が存在する場合は、障害の進展を防ぐ必要があります。
咳は止めないほうがいい?
咳は喉の異物を外に出す生理的作用として必要なものなので止めない方がいいと言われます。
特に痰を伴う湿性咳嗽では、咳止めによって痰の排出が妨げられ、換気障害、咳の増強、病原菌の増殖などの悪影響が生じる可能性があります。
上気道炎では痰を伴わない乾性咳嗽が多いですが、肺炎や気管支炎では湿性咳嗽が多いです。
乾性咳嗽では、咳による身体的負担を軽減する目的で咳止めを使うのが一般的です。
咳は出たほうがいい?
咳は出ない場合のほうが問題で、「適正な」咳反射は必要なものとされます。
たとえば「むせ」に続く咳は、食物などが気道に侵入したときに誤嚥をふせぐためにおこる生理的反射です。
要介護老人の大半では咳反射の低下による不顕性誤嚥がおこっているといわれ、それが肺炎へ進展し、肺炎は現在我が国第4位の死因であります。
高齢者は咳をしたほうがいい
生体は本来、咳反射、嚥下反射といった誤嚥に対する防御機構が備わっている。
しかし、脳血管障害や高齢者はこの防御機構が減弱または破綻していることがある。
また咳反射や嚥下反射には大脳基底核が関与しており、大脳基底核損傷・梗塞患者であは日中でも嚥下反射は低下している。
この低下は夜間になるとさらに著明になり高率に誤嚥を起こす。
両側基底核梗塞患者の90%以上、一側基底核梗塞患者の約60%以上に不顕性誤嚥が認められている。
このメカニズムとして、大脳基底核の損傷により、黒質線条体などからのドパミン分泌の減少と、神経刺激伝達物質であるサブスタンスPの減少によると考えられている。
また、本来気道に誤嚥された異物は咳によって排出されるはずであるが、咳反射の低下も誤嚥を招き、誤嚥性肺炎の既往のある高齢者は咳反射が低下しているとの報告もある。
このように嚥下反射の低下や咳反射の低下による誤嚥は、高齢者や脳血管障害の肺炎の背景因子として極めて重要なメカニズムとなっている。
咳の出ない肺炎?
肺炎のおもな症状は、咳、発熱、胸痛、呼吸困難などですが、高齢者では食欲不振や元気がないなどの症状しか前面に出ない場合があります。
食事の誤嚥による肺炎はおもに口腔内に常在している嫌気性菌が原因で、高齢者や術後の人に多い疾患です。
健康な人でも痰が出てる?
健康な人でも痰は1日数10ミリリットル出ています。
ただし、95%が水分のため、気道から再吸収され、実際にはなにも出ない、つまり、たんがないのが普通です。
参考書籍:ファーマトリビューン2011.2
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