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ACE阻害薬で認知症予防?
公開. 更新. 投稿者:高血圧.この記事は約2分10秒で読めます.
2,486 ビュー. カテゴリ:ACE阻害薬と認知症
ACE阻害薬が認知症の予防になる?
ACE阻害薬に認知症の予防効果があるという話があります。
ACE阻害薬による認知機能低下の抑制効果は以下のようなメカニズムによると考えられている。
血圧や体液の恒常性の維持に関連することで知られるレニン・アンジオテンシン系(RA系)は、末梢循環系とは別に、脳内にも存在することがわかっています。
脳内のRA系は、大脳の認知機能に関与しており、アルツハイマー患者やその前段階の軽度認知障害患者では、脳内のACE活性が亢進していることが国内外の研究で確認されています。
ACE活性が亢進すると、脳内でのアンジオテンシンⅡの産生が過剰になり、その結果、脳内神経細胞からのアセチルコリンの遊離が抑制されて、認知機能の低下が起こるのではないかと考えられています。
また脳内ACE活性の亢進は、ACEの基質の一つであるサブスタンスPの分解を促進します。
サブスタンスPは、アミロイドβ蛋白の分解酵素であるニュートラルエンドペプチダーゼ(NEP)でも代謝されます。
ACE阻害薬で脳内のACE活性を低下させてサブスタンスPが増えれば、NEPの活性が亢進し、アミロイドβ蛋白の脳内での蓄積が抑制される可能性があります。
脳内移行性のACE阻害薬
①脳内移行性のACE阻害薬
(商品名:コバシル、カイトリル、ロンゲス、プレランなど)
②非脳内移行性のACE阻害薬
(商品名:レニベース、タナトリル、コナン、チバセンなど)
脳内移行性(中枢作用性)ACE 阻害薬は認知症のリスクを減らし、非脳内移行性(非中枢作用性)ACE 阻害薬はリスクを上昇させることが報告されています。
ACE阻害薬のうち、脳内移行性が確認されているペリンドプリル(コバシル)やカプトプリルは、アルツハイマー病患者さまにおける認知機能低下抑制効果を示すとする論文があります。効果発現の機序は不明ですが、以下のように推測されています。
①脳組織親和性ACE阻害薬が脳内に過剰発現しているACE活性を抑制し、神経細胞シナプス間隙のアセチルコリン遊離を促進することで認知機能を改善する。
②アルツハイマー病病態の本質であるアミロイドベータ蛋白の脳内蓄積を抑制する
降圧剤と認知症
ACE阻害薬以外の降圧剤でも、脳血管性の認知症に対する予防効果という意味では効果ありそうです。
しかし、逆に、過度な降圧が認知機能に悪影響を及ぼす危険性も示唆されています。
日中の血圧が128mmHg以下の良好な血圧なコントロールを達成している群では、認知機能の低下が強いことが示されたという研究結果がある。
血圧というのは平たく言えば「組織に必要な血液を届ける力」と言い換えることができます。もし低い血圧と認知機能の低下に因果関係があるならば、血圧が強すぎると動脈硬化を起こし、一方で血圧が弱すぎると、脳に必要な血液が足りなくなり認知機能に影響を与える、という説明ができるのかもしれません。
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