2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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カマ服用中に大量の牛乳を飲んではいけない?

ミルクアルカリ症候群

薬剤師

酸化マグネシウム服用中に牛乳飲んじゃダメ?

酸化マグネシウムの相互作用について、薬情に「大量の牛乳」と書かれている。
これについて聞かれることがあるが、具体的な量がわからない。

酸化マグネシウム製剤の添付文書の相互作用に「活性型ビタミンD3製剤(アルファカルシドール、カルシトリオール等)、大量の牛乳、カルシウム製剤:milk-alkali syndrome(高カルシウム血症、高窒素血症、アルカローシス等)があらわれるおそれがあるので、観察を十分に行い、このような症状が現れた場合には投与を中止すること。」と記載があります。
機序は「代謝性アルカローシスが持続することにより、尿細管でのカルシウム再吸収が増大する。」とのこと。

milk-alkali syndrome(ミルクアルカリ症候群)は身体の要求量・排泄能力以上のカルシウム摂取により生じる可能性があります。したがって、それぞれのカルシウム要求量を考慮して推奨量程度を摂取している状況であれば、酸化マグネシウム製剤を服用してもほとんど問題とならないと考えられます。

ただし、ミルク・アルカリ症候群の病態にみられる高カルシウム血症の症状(倦怠感、食欲不振、多飲、多尿、口渇、嘔吐、情緒不安定等)が生じた場合には医療機関を受診することを勧める。
特に腎機能が低下している方など高カルシウム血症を生じやすい場合には注意が必要となります。

milk-alkali syndrome(ミルクアルカリ症候群と言われると、牛乳が関係するものと想像しますが、病態としては高カルシウム血症なので、カルシウム製剤、ビタミンD製剤との併用でも生じる。

日本人のカルシウム所要量は600mg。
牛乳コップ1杯200ccでカルシウム200mgくらい。

牛乳だけでカルシウムを摂取するとしたら1日600cc。
「毎日コップ3杯の牛乳を健康のために飲んでいます」というような人にはミルクアルカリ症候群についての注意喚起が必要になるだろう。

ミルク・アルカリ症候群は、大量の牛乳(カルシウム)やカルシウム製剤と炭酸カルシウムや酸化マグネシウム等の制酸薬を併用した症例に発症し、高カルシウム血症、高リン血症、高窒素血症、アルカローシス、異所性石灰化および腎不全などを主徴とした病態である。
臨床症状として、吐き気、嘔吐、頭痛、多飲、昏睡などが生じ、また角膜や腎に異所性石灰化を認める。発現機序は不明だが、血清カルシウム濃度の上昇と、血清pHの上昇が示唆されている。

牛乳とマグネシウムの併用療法

胃潰瘍に対して、胃の粘膜を保護する牛乳と、制酸剤であるマグネシウム製剤を併用するという治療法が、以前に行われていたことがあるそうだ。

20世紀の初め頃に、胃潰瘍の治療のために、牛乳とマグネシウム製剤とを、一緒に飲むという治療がありました。
マグネシウム製剤には、酸を抑える働きがあります。
牛乳は栄養を付け、粘膜を保護する働きがあります。

しかし、その治療を受けた人の中で、嘔吐したり、意識障害を起こしたりする患者さんが複数現れました。
その患者さんの血液の中のカルシウムは、異常に高い値を示しました。要するに、高カルシウム血症が起こったのです。

このように、牛乳やカルシウムの摂り過ぎと、マグネシウムの服用が合わさって起こるカルシウムの異常を、「ミルクアルカリ症候群」と呼びます。
現在ではこうした治療は行なわれていません。

酸化マグネシウムの漫然投与は危険?

酸化マグネシウムは便秘に使われる薬で、日本で使用している人の数は、年間で延べ約4500万人に上ると言われています。
比較的副作用の少ない安全な薬として、妊婦さんにも処方されることが多いです。

その酸化マグネシウムの副作用で2名の死亡例が出たという報道がされました。
80歳代と90歳歳代の高齢の方だそうです。

腎機能も低下してそうで、高マグネシウム血症になるのもわかります。
確かに漫然と投与されている薬の一つなので、注意は必要ですね。

認知症の患者などでは、何の目的で処方されているのか理解されていないケースもありそうですし。
患者さんが「いりません」って言わない限り、医者は処方を止めなかったりします。薬剤師が患者さんの状態を聞いて、医師に疑義照会して処方中止というのもよくあります。

比較的安全な薬ではありますが、副作用のない薬などありません。注意して使いましょう。

カルシウムとマグネシウムとリン

ナトリウムとカリウムが反対の働きで、マグネシウムとカルシウムが反対の働きをするという話を聞く。

マグネシウムは、体内でリンと結合し、リン酸マグネシウムとして骨や歯の構成成分となるとともに、その強度を増す役割があります。
体内のマグネシウムが不足すると、カルシウムの時と同様に、骨に蓄えられているマグネシウムが使用されます。
しかし、骨にあるマグネシウムが血液中に流出する際は、骨にあるカルシウムも一緒に流出してしまうため、結果として骨が弱くなります。
また、カルシウムやリンを多く摂取しすぎると、マグネシウムの吸収が阻害されることも知られています。
また、リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を阻害します。
そのため、カルシウム、マグネシウム、リンはバランスよく摂ることが大切になるのです。

カルシウムとリンは1:1の割合で摂るのが良いとされており、リンがカルシウムの2倍を超えないようにすることが理想とされています。カルシウムとマグネシウムは1.5~2:1の割合で摂取するのが理想とされています。リンやマグネシウムを多く摂取した場合はカルシウムもしっかり摂取することが必要なのです。

マグネシウムとアルカローシス

大量の牛乳と酸化マグネシウムの相互作用について調べてみました。

マグミットの添付文書をみると、相互作用の「大量の牛乳、カルシウム製剤」のところに、

機序:代謝性アルカローシスが持続することにより、尿細管でのカルシウム再吸収が増加する。

って書いてあるけど、そもそも酸化マグネシウムで代謝性アルカローシスになる、ってところからしてわからない。

マグネシウムが身体に入ると、副甲状腺ホルモンが低下します。
副甲状腺ホルモンの主な働きは、血液中のカルシウム濃度の調整です。
副甲状腺細胞がマグネシウム(Mg)を同じ2価陽イオンのカルシウム(Ca)と誤認して、副甲状腺ホルモン分泌が低下する。副甲状腺ホルモンが低下すると低カルシウム血症になるはず。
また、副甲状腺ホルモンが低下すると、腎臓からの重炭酸イオンの再吸収が増えます。
そのため、血液はアルカリ性になり、アルカローシスとなる。
アルカローシスになると、カルシウムの再吸収が増え、高カルシウム血症になる。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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