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ミノマイシンで歯が着色するのはなぜ?
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約4分23秒で読めます.
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テトラサイクリンと金属キレート
ミノマイシンで歯が黒くなる?
テトラサイクリン系抗生物質はカルシウムなどの金属イオンにキレート結合しやすく、歯の形成期にある小児が服用すると、形成途上の歯の象牙質にテトラサイクリン系抗生物質がリン酸塩として沈着して、新たに生える歯が黄色や褐色、灰色などを呈することがあります。
歯の表面を覆うエナメル質の形成にも影響が及び、エナメル質に小さなひび割れが多数入ったり、象牙質が露出することもあります。
一般にテトラサイクリン系抗生物質による歯牙着色は、最初は淡黄色あるいは黄色ですが、その後時間の経過とともに酸化されて褐色ないしはグレー系に変化していきます。
しかし、ミノマイシンによる着色は緑灰色から青灰色で、さらに紫外線照射による蛍光がないなど、ほかのテトラサイクリン系抗生物質とは少し異なっています。
これは、ミノマイシンがカルシウムだけでなく鉄とも結合するためだと考えられています。
歯の石灰化に伴い色素が沈着するため、使用した時期により永久歯の着色域が異なります。
出生直後から3歳頃までに投与された場合は前歯の先端部分と第一大臼歯が着色し、3~6歳頃の間に投与された場合は、前歯の根元部分と小臼歯に着色がありますが、第一大臼歯には着色がみられません。
歯牙着色の発生率
発生率については、テトラサイクリン系抗生物質を投与された小児の3分の1に歯の着色がみられたという報告がありますが、ミノマイシンについては小児発生率のデータはないようです。
着色の程度は、1回の投与量と投与期間、総投与量によって異なります。
総投与量が3g以上、あるいは投与期間が10日以上になると、着色が起こりやすくなるといわれていますが、特に問題となるのは総投与量です。
ミノマイシンによる歯の着色は短期間の服用なら問題ない?
ミノマイシンによる歯の着色は、投与期間が長いほど発生率が高く、3ヶ月の投与で約50%に発生するとされる。
しかし、5日間の投与で歯に着色が生じたとの報告もあり、短期間の投与なら問題ないとは言い切れない。
ミノマイシンでシミ?
ミノマイシンの副作用で歯牙着色というのはよく聞きます。
なので、小児や妊婦など歯の形成期に投与するのは注意を要する薬です。
しかし副作用をみると、
色素沈着(皮膚・爪・粘膜)
とも書かれており、色素沈着は歯に限ったことではありません。
先日ミノマイシンを長期服用している患者で、「シミができた」という訴えを聞いた。
年齢的なものなのか、副作用によるものかの判断はできないので、皮膚科医に相談するようお話しした。
一生モノの歯に比べて、皮膚や爪はターンオーバーのサイクルが短いから、色素沈着したとしても正常皮膚に戻る可能性は高そうだけど、いかがなものか。
ミノマイシンの特徴
グラウ陽性(多剤耐性ブドウ球菌含む)・陰性菌、クラミジア属、リケッチア属、炭疽菌に強い抗菌力。
胆汁、皮膚組織などへの移行が良好。
耐性は少ない。
ビブラマイシンでは歯牙着色は起こらない?
テトラサイクリン系による歯牙着色の起こりやすさは、抗生物質の種類によって違います。
ビブラマイシンは、添付文書には歯牙着色について記載がありますが、着色は起こらないという報告もあります。
どうしてもテトラサイクリン系抗生物質の使用が避けられない場合には、検討してみる価値はありそうです。
ミノマイシンを乳歯の段階で飲ませても永久歯には影響無い?
小児の歯の形成は胎児期(妊娠4ヶ月以降より始まり、生後11ヶ月ごろまでは乳歯、それ以降は8歳ごろまで永久歯の形成が行われます。
そのため、永久歯が生え始める前の段階でミノマイシンを服用したとしても、乳歯ではなく永久歯に着色が起こる可能性があります。
ミノマイシンを妊婦が飲んだら赤ちゃんの歯が着色する?
小児の歯の形成は胎児期(妊娠4ヶ月以降より始まり、生後11ヶ月ごろまでは乳歯、それ以降は8歳ごろまで永久歯の形成が行われます。
テトラサイクリン系抗生物質は分子量が比較的小さく、胎盤を容易に通過するため、妊婦の服用で出生児の乳歯に着色などが現れることもあります。
歯の機能を損なうエナメル質の形成不全はもちろんのこと、歯の審美性を損なう象牙質の着色も、小児の将来に大きな影響を与える恐れがあります。
授乳中のミノマイシンももちろん乳児の歯に影響が出る恐れがあります。
大人でもミノマイシンで歯が着色する?
ミノマイシンをニキビの治療などで長期間使用した場合には、大人でも歯の着色がみられることがあります。
着色のメカニズムは小児と異なるようですが、3~6%に発生したという報告があります。
ミノマイシンは9歳から使える?
小児にミノマイシンを使うこともありますが、副作用である歯牙着色を気にして処方しない医師が多数かと思います。
テトラサイクリン系抗生物質はカルシウムイオンとキレートを作ります。
また、テトラサイクリン-リン酸カルシウム複合体を形成して石灰化が進行中の歯に沈着し、着色を起こすことが知られています。
このため、歯が完全に石灰化するまでの間は、テトラサイクリン系抗生物質の使用は、他の薬剤が使用できないか、無効の場合にのみ適用を考慮するとされています。
さらに、胎盤通過性があるため妊娠中の使用で出産児の歯に着色が起こることがあり、注意が必要です。
歯牙着色の危険度の高い時期は、乳歯:妊娠4カ月~生後11カ月頃、永久歯生後数カ月~8歳頃です。
9歳以上になればほとんど気にしなくてもいいかとは思いますが、大人の歯でも着色がみられることがあるというので注意は必要です。
ミノマイシンの添付文書上は、
小児(特に歯牙形成期にある8歳未満の小児)に投与した場合、歯牙の着色・エナメル質形成不全、また、一過性の骨発育不全を起こすことがあるので、他の薬剤が使用できないか、無効の場合にのみ適用を考慮すること。
とあり、8歳未満は原則禁忌という解釈です。
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5 件のコメント
はじめまして、突然すみません。
歯牙着色の発生率のところにあるお話の元となっている資料を教えてください。
もし医療関係者しかみられないような文献でしたら仕方がないのですが、一般の人間でも閲覧可能な文献であれば教えてください。
4歳になる娘の母です。先日とびひの際に皮膚科で副作用説明もなくミノマイシンを処方されておりました。
歯の着色について知らず、1ヶ月の間に合計17日間飲ませており、小児科ではミノマイシンを飲んだなら着色があると思っておいた方がいいと言われ不安になっています。
小児科でも勿論個人差があるので出なければそれはそれでよかったね、と思えるので、あると思った方がいいとのことでした。気にしすぎもよくないとは言われましたがやはり女の子の事なので気になります。
総投与量のお話が確かであればそれほど心配はいらないのかなとも思えるので、このお話が気になっています。
よろしければ教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
スミマセン、個別にメールでの回答などはしないことにしていますので、ブログ上での回答とさせていただきます。
現在、非公開コメントは受け付けない設定としました。
記事内の総投与量の話は、記憶が定かではありませんが、薬剤師向けの雑誌上での話だったかと思います。
しかし、その情報源も不明でありますし、そもそも、年齢などによって影響が変わってくるのが当然なので、3グラムというのはあまり当てにならない数字だと思います。
健康を害するような副作用では無いので、軽んじている医師も多いのかも知れませんが、女性にとっては、目立つ場所に着色が起これば、深刻な問題かと思います。
ただ、とびひに対してミノマイシンを選択するのはメジャーな方法なので、他にも多くのお子さんがミノマイシンを飲んでいるとは思います。
経験上、それほど深刻な歯の着色を見たことが無いので、口をあけるのもはばかれる程の深刻な状態というのは少ないのではないかなあ、としか言えませんが。
そうでしたか。
小児科医師にはこどもには今は着色の話も広く知られているしセフゾンなどから試すのが一般的と聞いたので、なぜ皮膚科では最初からミノマイシンだったのか…と若干不満というか不信感を持ってしまったのですが、選択としてはメジャーなんですね。
結果がわかるのはまだまだ先のことですし、歯の着色については発現率などなかなかはっきりした情報が得られず、テトラサイクリン歯について検索すれば深刻な悩みを持っている方の情報を目にしたりもするものですから漠然とした不安にのまれていました。
ただ、薬剤師向けの雑誌にそのような記事があったのであれば、いずれは何らかの研究結果か臨床報告かがどこかで発表される日もくるのかもしれませんね。
お答えいただきどうもありがとうございました。
二人の子供の永久歯がエナメル不全です 特に下の子現在9歳女の子は、生え変わった永久歯全部が 黄ばんでいます 思い当たることは ミノマイシン 耳鼻科で よく処方されました 歯がこんなことになるなら 飲ませたくなかったです
ミノサイクリンの歯の黄ばみは、高次脳機能障害(発達障害)によって歯を磨かなくなることが原因ではないでしょうか?
強迫性障害への有効性も示されているので、反動で逆転すると考えられます。