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とびひの原因はMRSA?
公開. 更新. 投稿者:皮膚外用薬/皮膚病.この記事は約6分47秒で読めます.
3,291 ビュー. カテゴリ:とびひとMRSA
伝染性膿痂疹(とびひ)におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の割合は、実に3割を超えているとのこと。
MRSAはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌のことですが、メチシリンだけでなく、大半のペニシリン系・セフェム系抗生物質(βラクタム剤)にも耐性であり、βラクタム剤以外の抗菌剤にも耐性を示します。
昔はリンデロンVGで簡単に治ったそうですが、今はなかなかそうはいかないらしい。
たかがとびひ、と侮れない状態になっています。
MRSAは怖い?
とびひの原因の3割はMRSAと言われているように、皮膚科領域で分離される黄色ブドウ球菌の20~40%がMRSAであるといわれています。
MRSAというと抗生物質が効かない、怖い菌というイメージがあります。
しかし、皮膚科領域で分離されるMRSAは、一般的に院内感染を起こして問題となる多剤耐性の院内獲得型MRSA(HA-MRSA)ではなく、βラクタム系薬に対しては耐性ですが、それ以外の薬剤には感受性を示す市中獲得型MRSA(CA-MRSA)が大部分です。
海外のCA-MRSAは白血球破壊毒素(PVL)を産生し、重篤な肺炎などの感染症を引き起こしますが、日本ではCA-MRSAのほとんどがPVLを産生しないため、重篤化するリスクは低いのが現状です。
とびひと抗菌薬
外用抗菌薬は、皮膚の水疱に直接塗布することで原因菌を殺菌する。
近年、ゲンタマイシン硫酸塩(ゲンタシン)に原因菌が耐性を示し、治療が無効であることが多いため、フシジン酸ナトリウム(フシジンレオ)やテトラサイクリ
ン塩酸塩(アクロマイシン)、ナジフロキサシン(アクアチム)などの軟膏が処方される頻度が高い。
一方、内服抗菌薬は一般に皮疹の拡大傾向が強い場合に処方される。
黄色ブドウ球菌に感受性のあるセフェム系やペネム系の抗菌薬が第一選択となる。
しかし、感染者の20~40 % からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) が分離されたという報告がある。
このためセフェム系抗菌薬を3~4日投与しても皮疹の乾燥や痂皮化が認められない場合にはMRSAの感染を疑い、処方が変更されることが多い。
その場合、ホスホマイシンカルシウム水和物(ホスミシン)、スルタミシリントシル酸塩水和物(ユナシン)、クラブラン酸カリウム・アモキシシリン水和物(クラバモックス)、ノルフロキサシン(バクシダール)などが単剤または併用で用いられる。
MRSAは常在菌?
抗生物質の効かない耐性菌の代表として、MRSAは恐れられています。
MRSAというのは、元々人間誰しもが持っている黄色ブドウ球菌という皮膚の常在菌が耐性を獲得したもので、現在ではMRSAも常在菌として、人間と共存しているようです。
黄色ブドウ球菌では、以前からさまざまな抗菌薬に耐性を示すメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の増加が問題視されてきました。
皮膚科領域でも、分離される黄色ブドウ球菌の20~40%がMRSAであるといわれています。
ただし、皮膚科領域で分離されるMRSAは、一般的に院内感染を起こして問題となる多剤耐性の院内獲得型MRSA(HA-MRSA)ではなく、過去1年以内の入院歴や医学的処置歴のない患者さんから分離され、βラクタム系薬に対しては耐性ですが、それ以外の薬剤には感受性を示す市中獲得型MRSA(CA-MRSA)が大部分です。
海外のCA-MRSAは白血球破壊毒素(PVL)を産生し、重篤な肺炎などの感染症を引き起こしますが、日本ではCA-MRSAのほとんどがPVLを産生しないため、重篤化するリスクは低いのが現状です。
抗MRSA薬
抗MRSA薬として使用可能な薬剤は、グリコペプチド系薬のバンコマイシン、テイコプラニン、環状リポペプチド系薬のダプトマイシン、オキサゾリジノン系薬のリネゾリド、そしてアミノ配糖体系のアルベカシンの5つがあります。
バンコマイシンは、抗MRSA薬として50年以上の豊富な使用経験を持つ薬剤で、各疾患への適応も多くMRSA感染治療の標準薬として間違いはないでしょう。
近年、MICクリープ(MRSAのバンコマイシンに対するMICが上昇している)という現象が報告され始め、MICが2以上になれば、MRSAに対してバンコマイシンが効きにくいかもしれないという報告が出てきました。
【バンコマイシン】
・細胞壁合成阻害薬であり、殺菌的に作用する
・TDMで血中濃度を測定することができる
・AUC/MIC>400以上を目標にし、トラフ濃度は10~20μg/mLを維持しておく。
・トラフ濃度20μg/mL以上で腎毒性が増大する傾向にある(可逆性)。
・急速に投与するとヒスタミン遊離によるレッドネック症候群が発現するので、60分以上かけて(15mg/分)投与する。
・水溶性の高い薬剤で、腹水などへの移行性が非常に高い。肺や骨髄、髄液(髄膜炎発症時)などへは血中濃度の20~50%移行する。
【テイコプラニン】
・細胞壁合成阻害薬であり、殺菌的に作用する。
・TDMで血中濃度を測定することができる。
・トラフ濃度は10~30μg/mLを目標にするが、重症例や複雑性感染ではトラフ濃度を20μg/mLに設定する必要がある。
・脂溶性が高く、分布容積が非常に大きいので良好な組織移行性が期待できる。ただし、髄液への移行は不良。
・分布容積が大きい分、投与初期では十分に血中濃度が上がらない。必ず初期ローディングを行う。
・安全性の高い薬剤とされていて、より高用量を投与しても腎障害は発現しにくい。ただし、血中濃度トラフ濃度60μg/mL以上で腎毒性が増大する傾向にある。その他の副作用では肝障害、第8脳神経障害(聴力障害)も報告されている。
・ヒスタミン遊離によるレッドネック症候群はバンコマイシンに比べると少ない。
・極性の高い薬剤で、腹水などへの移行性が非常に高い。肺や骨髄、髄液(髄膜炎発症時)などへは血中濃度の20~50%移行する。
【ダプトマイシン】
・細胞膜へ結合し、膜電位の脱分極を引き起こし破壊する。溶菌を伴わず殺菌し、殺菌速度は非常に速い。
・感染性心内膜炎や人工関節の感染症でも効果が期待できるが、ダブトマイシンの活性は肺サーファクタントで阻害される、肺炎には使用できない。
・皮膚や骨への組織移行性は良好であるため、皮膚軟部組織感染症には十分な実績があるが、髄液への移行は不良。
・腸球菌への効果は乏しい。
・長期間使用すると、MRSAの感受性が低下する可能性がある。
・腎障害は極めて少なく、全般的に安全性は高い。ただし、骨格筋への影響が知られているため、ダブトマイシン使用中はクレアチニンホスホキナーゼ(CPK)を測定する(筋肉痛や疲労感の確認など、スタチン系使用中患者など)。ほかに、好酸球性肺炎の報告もある。
【リネゾリド】
・蛋白質合成阻害薬、静菌的に作用する。
・蛋白合成の初期段階で抗菌力を示すことから、βラクタム系薬、グリコペプチド系薬と全く交差耐性を示さない。
・分子量が小さく組織移行性に優れていて、肺組織、皮膚、骨、髄液などに良好な移行性を示す。
・注射剤とともに経口剤もある。消化管からの吸収率は良く、バイオアベイラビリティはほぼ100%。注射剤から経口剤へ同じ投与量でスイッチができる。
・薬物動態は腎機能、体重に影響されないので、腎障害患者でも用量調節不要である。
・副作用として、血小板減少、貧血などの造血器障害があり、投与期間が2週間を超えるとその頻度は増加する(ただし可逆性)。まれだが視神経障害もある。
・わずかながらモノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用も持っているので、セロトニン作動薬が併用されている場合は注意する(錯乱、せん妄、振戦などのセロトニン症候群が起きやすい)。
【アルベカシン】
・アミノグリコシド系薬に属していて、蛋白合成阻害作用を示し、殺菌的である。
・TDMで血中濃度を確認することができる。
・Cpeak/MICと相関するとされていて、ピーク濃度15~20μg/mL、トラフ濃度2μg/mL以下を目標にする。
・水溶性抗菌薬であるため、胸水、腹水、滑膜液などへの移行性は良いが、髄液、骨、膿瘍への移行性は悪い。
・副作用としては、他のアミノグリコシド系薬同様、腎障害、聴力障害に注意する。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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