上皮機能変容薬の服薬タイミング

上皮機能変容薬の服薬タイミング

最近みかけるようになった新しい下剤のカテゴリー、「上皮機能変容薬」。

グーフィス、アミティーザ、リンゼスなどのことを指します。

慢性便秘症の治療には古くからラキソベロン（ピコスルファートナトリウム）、プルゼニド（センノシド）などの大腸刺激性下剤や、酸化マグネシウムやモニラック（ラクツロース）などの浸透圧性下剤が使用されてきました。

しかし、近年、アミティーザ（ルビプロストン）やリンゼス（リナクロチド）のような腸管上皮で作用する新しい機序の便秘薬が使用されるようになっている。

医薬品名	一般名	作用機序
アミティーザ	ルビプロストン	小腸上皮にあるクロライドチャネルを活性化し、腸管内への水分の分泌を促進させ、便を軟らかくし、腸管内の輸送を高めて排便を促す。
リンゼス	リナクロチド	結腸上皮細胞に発現するグアニル酸シクラーゼC受容体を活性化させることで、管腔内への腸液分泌が亢進し、腸管輸送能を促進する。
グーフィス	エロビキシバット	回腸末端部の上皮細胞に発現している胆汁酸トランスポーターを阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制することで、大腸管腔内に水分を分泌させるため、消化管運動が促進される。

上皮機能変容薬のうち、グーフィスとアミティーザの効能・効果は慢性便秘症のみであるが、リンゼスは便秘型過敏性腸症候群（ＩＢＳ）にも適応を持つ点が異なる。

また、グーフィスとリンゼスは妊婦に対して有益性投与とされているが、アミティーザは妊婦に対して禁忌となっている。

監査時の注意点として、リンゼスとグーフィスは食前投与、アミティーザは食後投与となっている点である。

医薬品名	一般名	用法	理由
アミティーザ	ルビプロストン	1日2回、朝食後及び夕食後	空腹時に服用すると吐き気が出やすくなるため
リンゼス	リナクロチド	1日1回、食前	食後に服用すると下痢の頻度が高くなるため
グーフィス	エロビキシバット	1日1回食前	食事の刺激により胆汁酸が十二指腸に放出される前のタイミングでの服用が望ましいため

例えば、アミティーザを食前空腹時に服用すれば吐き気を催す、グーフィスを食後に飲めば効果が落ちる。

リンゼスを食後に飲めば、下痢を起こす。つまり効果が強まるということ。医師によっては、食前服用で効果不十分な場合、食後に飲ませて効果を促すということもあるようだ。
保険請求上は「食前」服用であるため、処方が「食後」となっていたら疑義照会は必要であるが、口頭で「効果不十分な場合、食後に飲んでも良い」と指示がされていることもある。その際に「必ず食前に飲んで下さい」と指導してしまったら「医師と違うことを言っている」という不信感につながるので注意が必要である。

胆汁酸トランスポーター阻害薬

グーフィス（エロビキシバット）は、回腸末端部の上皮細胞に発現している胆汁酸トランスポータ（ileal bile acid transporter:IBAT）を阻害する薬剤である。

グーフィスは、胆汁酸の再吸収に関わるＩＢＡＴを阻害し、大腸内の胆汁酸の量を増加させる。これにより大腸内への水分分泌と大腸の蠕動運動を促進し、排便を促す。

クロライドチャネルアクチベーター

アミティーザ（ルビプロストン）やリンゼス（リナクロチド）は、腸管粘膜上のClC-2クロライドイオンチャネルを活性化し、小腸腸管内腔へのCl-輸送により浸透圧を生じさせ腸液の分泌を促進します。

腸管の水分泌にはクロライドイオン（Cl^–）が関与しており、粘膜上皮細胞の基底膜側にあるNa⁺-K⁺-2Cl^–共輸送体等を介して粘膜上皮細胞内に取り込まれたCl^–は、小腸上皮頂端膜（腸管内腔側）に存在するClC-2クロライドチャネルを介して腸管内腔に移動します。それに伴い、Na⁺も受動的に腸管内腔に移動し、その結果、腸管内腔へ水が分泌されます。

そして、便の水分含有量が増え柔軟化、腸管内輸送がうながされ便秘が改善します。

ちなみにクロライドチャネル作動薬と呼んでも良いと思うのですが、アクチベーターと呼ぶ。インヒビターはよく聞くがアクチベーターはあまり聞かない。受容体だとアゴニストとアンタゴニスト。阻害薬と作動薬で統一したほうが薬理的にはわかりやすい。