2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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下剤の一覧

下剤の一覧

分類医薬品名一般名
刺激性下剤大腸刺激性下剤プルゼニド/センノサイドセンノシド
アジャストA/ヨーデルSセンナエキス
アローゼンセンナ・センナ実
ラキソベロンピコスルファートナトリウム水和物
小腸刺激性下剤ヒマシ油ヒマシ油
直腸刺激性下剤新レシカルボン炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム
テレミンソフトビサコジル
グリセリン浣腸グリセリン
機械的下剤浸潤性下剤ビーマスジオクチルソジウムスルホサクシネート・カサンスラノール
膨張性下剤コロネル/ポリフルポリカルボフィルカルシウム
浸透圧性下剤塩類下剤重カマ/マグミット/マクラックス酸化マグネシウム
糖類下剤モニラックラクツロース
マルツエキスマルツエキス
その他モビコールマクロゴール4000
上皮機能変容薬クロライドチャネル活性化薬アミティーザルビプロストン
グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体作動薬リンゼスリナクロチド
胆汁酸トランスポーター阻害薬グーフィスエロビキシバット水和物
その他μオピオイド受容体拮抗薬スインプロイクナルデメジントシル酸塩

下剤の分類

下剤はその機序から、腸内容物の容量を増加させ柔らかくし、排泄を容易にするなど物理的に働く機械的下剤と、腸の蠕動運動を亢進させる刺激性下剤の二つに大きく分けられる。

細かく分けると、①機械性下剤(塩類下剤、糖類下剤、膨張性下剤、浸潤性下剤など)、②腸刺激性下剤(大腸および小腸)、③自律神経に作用する薬剤、④プロスタグランジン製剤、⑤坐薬や浣腸薬、⑥腸管洗浄剤などに分けられる。

大腸刺激性下剤

大腸刺激性下剤は、大腸の粘膜を刺激して腸の蠕動運動を活発にし排便を促します。

センナ、センナエキス、センノシドなどのアントラキノン誘導体、ビサコジル、ピコスルファートナトリウムなどがあります。

センノシド類は大腸で腸内細菌により分解されレインアンスロンとなり、腸粘膜の神経細胞を刺激して腸管運動を亢進させます。
ピコスルファートナトリウムは腸内細菌(アリルスルファターゼ)により生じた活性型のジフェノール体が大腸を刺激するとともに、水分吸収阻害作用により腸管内に水分貯留をきたして軟便化させる。

効果は一番強いですが、習慣性があり連用により効かなくなって量が多くなる可能性があります。
服用によりおなかが痛くなることも多い下剤です。
習慣性、連用性から長期間大量に服用し続けないよう注意が必要です。

ガイドラインでは頓用または短期間の投与を推奨。
長期連用により耐性が出現し、難治性便秘になることがある。

【アントラキノン系】
センナ、大黄、アロエなどの生薬類に含まれる配糖体であり、小腸より吸収されて血行性に、または直接大腸粘膜を刺激する。

センナなどのアントラキノン誘導体はいずれも成分にセンノシドA、Bを含有し、これが大腸の腸内細菌の作用でレインアンスロンとなり、大腸のアウエルバッハ神経叢を刺激して、蠕動運動を亢進、水分、ナトリウムの吸収を抑制するといわれています。

配合剤の成分となっているダイオウ、カサンスラノールの成分もアントラキノン誘導体で、その作用はセンナと同様と考えられています。
アルカリ尿で赤色を呈し、連用すると大腸黒皮症をきたす。長期連用すると、大腸(偽)メラノーシスを起こす。

・常習性弛緩性便秘に用い、痙攣性便秘に用いてはならない。
・腹痛を伴う場合、重症硬便、腸管や骨盤に炎症が存在する場合には原則禁忌。腹部手術後も慎重投与。
・妊婦や授乳中には禁忌。ただし、ラキソベロンは妊娠中でも有益性が危険性を上回る場合のみ投与可能。
・アントラキノン系薬剤、フェノールフタレイン系薬剤は尿が赤くなることがある。
・耐性が生じた場合は難治性となるので、可及的に連用を避ける。
・ラキソベロンやアントラキノン系薬剤は、併用薬や食物の吸収に影響する可能性がある。流動パラフィンは、脂溶性ビタミンの吸収障害を起こすことがある。

【メラノーシス】
アントラキノン系薬剤は長期に連用すると消耗色素が大腸粘膜に沈着して、内視鏡にて黒色の粘膜を呈する。色素は粘膜固有層のマクロファージに取り込まれたもので上皮
への沈着ではない。下剤中止後1年程度で正常化する可逆的で良性の病態であるが、長期に経過すると上皮細胞への障害や腸管神経叢の機能障害が生じる可能性も指摘されている。

【ジフェノール誘導体】
ピコスルファート(ラキソベロン)は 大腸の腸内細菌叢由来の酵素であるアリルスルファターゼ による加水分解を受けて活性体のジフェノール体となり、大腸粘膜刺激によって大腸の蠕動運動の亢進、水分吸収阻害作用を示し、下剤作用を現す。

液剤があり、投与量の微調整がしやすい。
大腸検査の前処置には150mgと大量に用いる。
液体のため量が調節しやすい、習慣性がないなどの利点があり、幼小児、高齢者でも頻用される。

坐薬・浣腸

坐薬・浣腸薬は、直腸を局所的に刺激して排便反射を誘発する。
長期使用は副作用の発現や習慣性を招くため控える。

【炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム(新レシカルボン)】
炭酸ガスにより蠕動運動を高め、自然に近い排便を促す。
通常、15~30分で排便がある。
新レシカルボンは直腸内で徐々にCO2を発生し、腸運動を亢進させるため直腸性便秘に使用する。

【ビサコジル(テレミンソフト)】
刺激性の緩下作用を示す。直腸挿入後、15~60分以内に作用する。

ビサコジル(テレミンソフト)は大腸刺激性下剤に属し、大腸検査の前処置に頻用される。
ビサコジルは、そのままの形で大腸粘膜に作用し、 腸粘膜の副交感神経末端に作用して蠕動運動の亢進、排便反射への刺激をもたらす。また、直腸内の水分、ナトリウムの吸収を抑制し、便の容積を増大させる作用も示す。
ビサコジルは、医療用では坐薬のみであるが、OTCでは飲み薬として使われている。 胃や小腸に対する刺激作用を防ぐため腸溶性製剤となっています。
ビサコジルとアルカリ性制酸薬、牛乳との併用に注意。

【グリセリン浣腸】
速効性があり便排出障害や糞便塞栓の予防や治療などに適宜使用することが推奨されている。
定期的な使用は避ける。

小腸刺激性下剤

ヒマシ油は、腸内でリシノール酸とグリセリンに分かれるのだが、リシノール酸は、小腸を刺激して、グリセリンは便の流れをよくする作用がある。

ヒマシ油は、かつて下剤の代表であったが現在はほとんど使用されない。
ヒマシ油は、不飽和脂肪酸が主成分で腸管を刺激するが、峻下剤で日常臨床ではあまり用いない。
ヒマシ油は、胆汁、膵液の作用でリシノール酸とグリセリンに分解され、リシノール酸ナトリウムが小腸の運動を亢進させる。
また、水分と電解質の分泌、粘膜の透過性も亢進させる。

浸透圧性下剤

浸透圧性下剤は、腸内の浸透圧を高めて、腸内腔へ水分を引き寄せることで便の水分量を増加させ、やわらかくする効果があります(ウォータリング効果)。膨張・軟化した便が、腸管を刺激します。

塩類下剤

習慣性が少なく長期間の投与も可能である。
非吸収性塩類下剤は腸管内に水分を移行させ腸管内容を軟化増大させ、その刺激により便通促進効果を現す。
大量の水分とともに服用するとより効果的である。
腎障害患者ではマグネシウムなど電解質の吸収に留意する。
塩類下剤は難吸収性の無機塩で、浸透圧により腸内に大量の水分を保持し、腸内容量を増大させる。
難吸収性糖質の糖類下剤とともに、浸透圧性下剤の代表といえる。
・習慣性が少なく、作用が穏やかで常習性弛緩性便秘でも痙攣性便秘でも第一選択となる。多量の水分とともに服用する。
・難吸収性とはいえ塩類であるので、心・腎疾患例には原則禁忌。Mgを含むものは高マグネシウム血症に注意。
腸管吸収されにくいマグネシウムやナトリウムなどの塩類を服用すると、腸管内と体液とが等張になるよう水分が腸管内に移行するので、蠕動運動が亢進する。

安価で最も汎用されている。
腸で便の通過が正常なタイプには反応しやすい。
効果発現までに数日かかる。
高マグネシウム血症に注意が必要。

糖類下剤

塩類下剤と同じように浸透圧を利用して便をやわらかくし、増大させることでぜん動運動を促進する。
また、糖類なので腸内で善玉菌に分解され乳酸などを作り、腸内を酸性にして悪玉菌の棲みにくい環境にする効果もある。

海外では推奨度の高い薬剤だが、日本では小児の便秘や産婦人科術後の排ガス・排便の促進、高アンモニア血症の改善にしか保険適応がない。

腸管洗浄剤

腸管洗浄剤はマグネシウム塩を含むマグコロールや、ポリエチレングリコールと電解質からなるニフレック、あるいはリン酸ナトリウム含有製剤のビジクリアなどがある。

主に注腸検査や大腸内視鏡検査の前処置に用いられ、機序的には浸透圧性下剤に分類される。

・マグコロール、ニフレックやビジクリアなどの腸管洗浄剤は、大腸検査や腹部外科手術の前処置以外は保険適応がない。また、重症の腸管感染症に使用してはならない。
・大量の水分を大腸に負荷するため、腸管内圧亢進による腸管穿孔や腸閉塞、虚血性大腸炎の発生が報告されており、重大な副作用として注意喚起されている。
特に高齢者での使用には注意すべきで、用量の変更や、他の下剤(ラキソベロン)との併用などの工夫も必要。
・飲用できない場合に、糖質を添加したりすると浸透圧が変化し、可燃性ガスの発生をみるので行ってはならない。

上皮機能変容薬

臨床試験が行われており、便秘に対するエビデンスレベルが高い。
副作用や相互作用が比較的少ないが、高価。

【クロライドチャネル活性化薬】
ClC-2クロライドチャネルを活性化し、腸管内への水分分泌を促進する。

・アミティーザ(ルビプロストン)
主な副作用として悪心、下痢が報告されている。
悪心は特に若い女性に多い。妊婦、器質的な腸閉塞を伴う場合は禁忌。

【グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体作動薬】
GC-C受容体を活性化することにより細胞内のcGMP濃度を増加させる。
それにより嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)が活性化し、腸管分泌及び腸管輸送能を促進するとともに大腸痛覚刺激を抑制する。

・リンゼス(リナクロチド)
便秘型過敏性腸症候群の治療薬で、慢性便秘症にも適応追加された。
副作用は下痢や腹痛などで、重篤な副作用はこれまでのところ報告されていない。

膨張性下剤

膨張性下剤は多量の水と共に服用すると、寒天と同じように吸収されず、腸内の水を保持して膨張することによって便量が増加し、排便が促進されます。

同時に服用した水ととみに腸内で粘性のコロイド液となり、軟化した便に浸透することで便容積を増大させ、腸壁に物理的刺激を与える。

カルメロースが代表的な製剤で、最も生理的な排便が期待できます。

浸潤性下剤

浸潤性下剤は、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)が主成分として使用されることが多い便秘薬です。

この成分は、化学成分である界面活性剤です。浸潤性下剤では、ジオクチルソジウムスルホサクシネートが、便の表面張力を小さくしようと働きかけてくれます。
そして、水分を便に浸透させて軟らかくし、便を排出しやすくします。
ジオクチルソジウムスルホサクシネートは、単体で使用すると、働きが弱いものです。
なので、便秘薬では、腸を刺激する刺激性下剤の成分と一緒に使うことで、より排便に効果的な薬になっていることが多いです。
有名な薬だと、コーラックやベンコールなどがこのタイプの薬です。薬の作用は、数日間続くことがあります。
便秘の中でも、腸管が緊張しすぎてしまう痙攣性便秘に効果的だと言われています。

μオピオイド受容体拮抗薬

オピオイドの副作用で生じる便秘の治療薬である。そのためオピオイドが処方されていなければ使われない。

消化管のμオピオイド受容体へのオピオイドの結合を阻害することで、受容体に起因する便秘症状を改善する。鎮痛作用を弱めてしまうのではないかという懸念がもたれるが、中枢におけるオピオイドの鎮痛作用に影響する可能性は低いという。

胆汁酸トランスポーター阻害薬

胆汁酸の再吸収に関わる回腸末端部の胆汁酸トランスポーターを阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制することで、大腸管腔内に流入する胆汁酸量を増加させる。

その後、大腸に移行した胆汁酸が胆汁酸受容体(TGR5)に結合し、cAMP生成、CFTRを活性化することで水分量を増加させるとともに、消化管運動を促進させることで排便を促す。

下剤の使い分け

一般的に、便秘の治療薬としては塩類下剤からはじめ、弛緩性常習性便秘で効果が乏しい場合には膨張性下剤、さらに刺激性下剤を使用する。

自律神経作動薬を併用することも勧められる。

同一薬剤の長期間投与(特に大腸刺激性下剤)は習慣性になり常用量の増加をもたらすので、下剤の種類や他の下剤との併用など工夫が必要であり、排便習慣が回復した場合には減量や中止を必ず考慮する。

また、特に高齢者の常習便秘では弛緩性と直腸性の合併が多く、その場合には積極的に坐薬・浣腸薬の併用を行うべきである。

刺激性下剤は常習性便秘に有効であるが、痙攣性便秘にはむしろ刺激性下剤は避け、塩類下剤に膨張性下剤を加え、また自律神経系に作動する薬物を併用するのがよいと考えられる。

・痙攣性便秘に関しては、塩類下剤や膨張性下剤を用い、また積極的に自律神経に作動する消化管運動機能調整薬を使用する。

・直腸性便秘は弛緩性便秘に合併している場合が多く、弛緩性便秘に対する処方に坐薬や浣腸薬を併用してもよい。

・いずれにせよ全身衰弱患者、高齢者、腹部手術後の患者には下剤の投与と投与量は慎重に考慮する。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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yakuzaic
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職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
著書:薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
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