記事
高尿酸血症治療薬の一覧
公開. 更新. 投稿者:痛風/高尿酸血症.この記事は約8分34秒で読めます.
15,828 ビュー. カテゴリ:高尿酸血症治療薬の一覧
分類 | 商品名 | 一般名 | 特徴 |
---|---|---|---|
痛風発作治療薬 | コルヒチン | コルヒチン | ・発作前兆期に服用する。 |
尿酸排泄促進薬 | ベネシッド | プロベネシド | ・尿酸排泄低下型の高尿酸血症に用いる。 ・尿中尿酸濃度が上昇し、尿路結石ができやすくなるため、十分な水分摂取および尿アルカリ化薬の併用が必要となる。 |
パラミヂン | ブコローム | ||
ユリノーム | ベンズブロマロン | ||
尿酸生成抑制薬 | フェブリク | フェブキソスタット | ・尿酸産生過剰型の高尿酸血症に用いる。 |
ウリアデック/トピロリック | トピロキソスタット | ||
ザイロリック | アロプリノール | ||
ユリス | ドチヌラド | ||
尿アルカリ化薬 | ウラリット | クエン酸カリウム/クエン酸ナトリウム | ・尿pHを上昇させ、尿路結石の発生を予防する。 ・独特の味(塩味)がすることを前もって伝える。 |
高尿酸血症治療薬の分類
痛風・高尿酸血症治療薬は大きく分けて、発作時の痛風関節炎を治療する痛風関節炎治療薬と、尿酸をコントロールする尿酸降下薬があります。
痛風関節炎治療薬には、コルヒチン、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、副腎皮質ステロイド薬があります。
尿酸降下薬には、尿酸生成抑制薬、尿酸排泄促進薬があります。
コルヒチン
白血球や好中球の走化性因子(LTB4、IL-8)に対する反応性を低下させることにより痛風の発作を抑制する。
コルヒチンは、発作を抑えるため、発作早期(前兆期)に用いることが一般的です。
また、発作が頻発する場合や、尿酸降下薬の投与開始後に血清尿酸値の低下に伴う痛風発作が予想される場合には、コルヒチン1日1錠を連日投与することがあります(コルヒチン・カバー)。
NSAIDs
シクロオキシナーゼ(COX)阻害によるプロスタグランジンの合成を抑制し、鎮痛作用、抗炎症作用を示す。
NSAIDは、痛風発作の極期に短期間に限り比較的多量に投与し、炎症を抑制します(NSAIDパルス療法)。
また、激痛が軽減したあと(回復期)も関節痛が持続し日常生活に支障をきたす場合は、NSAIDを常用量投与します。
痛風関節炎が軽快すれば、NSAIDの投与を中止します。
アスピリンは、尿酸値の変動(低下)を招き症状を増悪させる可能性があるので、痛風発作治療では避けるべきとされる。
副腎皮質ステロイド
副腎皮質ステロイドは、NSAIDが使用できない患者やNSAID投与が無効だった場合、多発性に関節炎を生じている場合などに経口で用いられます。
尿酸降下薬
血清尿酸値を下げる薬を総称して尿酸降下薬と呼びます。
尿酸降下薬には、尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬があります。
①尿酸降下薬による血清尿酸値の変動は、痛風発作を発生・増悪させることがある。そのため、尿酸降下薬を服用していない場合に生じた痛風発作には、尿酸降下薬を投与せず NSAIDパルス療法を用いる。
②尿酸降下薬は、痛風関節炎の寛解約2週間後に少量(ベンズブロマロン12.5mg、アロプリノール50mg、フェブキソスタット10mg)で開始する。投与開始初期には、痛風関節炎の発症を防止するため、少量のコルヒチンを併用するとよい。
③すでに尿酸降下薬を服用している場合に生じた痛風発作には、尿酸降下薬の使用を中断せず NSAID パルス療法を併用する。
尿酸排泄促進薬
近位尿細管での尿酸再吸収を抑制し、尿中への尿酸排泄を促進し、血清中の尿酸濃度を低下させます。
尿酸排泄促進薬は尿中の尿酸溶解量を増やすため、尿酸結石を生じやすくなります。水分を多くとったり、尿アルカリ化薬を併用することで予防します。
尿酸生成抑制薬
尿酸生成抑制薬は、尿酸合成の最終段階のプリン代謝経路に関与するキサンチンオキシダーゼを阻害します。
尿酸はヒトにおけるプリン体の最終代謝産物であり、主に肝臓でキサンチンオキシダーゼの作用によりヒポキサンチンからキサンチンを経て産生され、腎臓を介して尿中に排泄される。
・酸性尿では尿酸の溶解度が低下し結石を誘発するため、尿pHを調整し、尿路結石を予防する。
・アロプリノールの活性代謝産物であるオキシプリノールは腎排泄されるため、腎機能の低下による副作用発現に注意する。
・フェブキソスタットは肝代謝によって不活化されてから胆汁と腎臓から排泄されるため、軽度~中等度の腎機能低下患者でも通常用量で治療できる。
尿アルカリ化薬
高尿酸血症などによって血液中の尿酸量が増えると、尿が酸性に偏りやすくなります。この状態であると、尿路結石が生成されやすくなります。
そこで、尿をアルカリ性に近づけることによって痛風や高尿酸血症による「尿の酸性化」を防ぎ、尿路結石を溶かすようにします。このような薬としてクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム(ウラリット)があります。
しかし、過度な尿アルカリ化は、逆にリン酸カルシウムや尿酸ナトリウムの析出を促進するため、pH6.0~7.0に維持されるよう用量を調節する。
高尿酸血症
高尿酸血症は、血液中の尿酸濃度が正常域を超えて上昇した状態です。
この状態が持続すると、尿酸は体液中に溶けきれず結晶化して、尿酸塩沈着症(痛風関節炎、腎障害など)の原因となります。
具体的数値としては、血中尿酸濃度が7mg/dLを超えると高尿酸血症とする。
血清尿酸値には著明な性差があるが(男性>女性)、血清尿酸の飽和濃度に性差はないため、高尿酸血症の定義に性差は設定されていない。
高尿酸血症の原因
DNAの合成に不可欠な物質であるプリン体の産生過剰あるいは排泄低下がその原因である。
高尿酸血症は、原因により「原発性高尿酸血症」と「二次性高尿酸血症」に分類されます。高尿酸血症の多くは原発性であり、一般には遺伝的要因に尿酸値を上昇させる環境要因が加わることで発症すると考えられています。
生活習慣病として誰にでも起こりうる。
体が合成する尿酸は食物由来の尿酸より数倍多いとされ、肥満が決定的な危険因子となる。
プリン体の多い煮干しやレバー、白子などは長期にわたって大量に摂取すれば危険因子である。
高尿酸血症の病型
健常者では、尿酸の産生と排泄の量がほぼ同量であるため、体内の尿酸は一定量に保たれています。
一方で、高尿酸血症の患者では、尿酸の産生と排泄のバランスが崩れることで血清尿酸値が上昇しています。
高尿酸血症は、その成因によって「尿酸産生過剰型」「尿酸排泄低下型」「混合型」の病型に分類されます。
【健常者】
尿酸産生量:約700mg / 日
体内尿酸量:約1,200mg
尿酸排泄量 :尿中:約500mg / 日、汗・消化液など:約200mg / 日
尿中尿酸排泄量 0.483~0.509 尿酸クリアランス 7.3~14.7
【尿酸産生過剰型】
原発性高尿酸血症の約10%
尿中尿酸排泄量>0.51 および 尿酸クリアランス≧7.3
【尿酸排泄低下型】
原発性高尿酸血症の約50~70%
尿中尿酸排泄量<0.48 あるいは 尿酸クリアランス<7.3
【混合型】
原発性高尿酸血症の約20~30%
尿中尿酸排泄量>0.51 および 尿酸クリアランス<7.3
高尿酸血症の病期分類では、尿酸の産生量・排泄量を測定します。尿酸の産生量を直接測定することは難しいため、通常は尿中尿酸排泄量 [ mg/kg/ 時 ] から推測します。一方で、尿酸の排泄量は尿酸クリアランス [ mL/ 分 ] の多寡により検討されます。これらの測定を治療開始前に少数回行うことで、病型分類が可能となります。
尿酸
尿酸は、ヒトにおけるプリン体(プリン環を持つ物質の総称で、生体内エネルギーや核酸に利用される)の最終代謝産物です。
血液などの体液には難溶性であり、pHや温度の低下によって溶解度が低下すると、結晶として析出します
生体内のプリン体は、食事からの摂取、または肝臓などでの合成に由来しており、キサンチンオキシダーゼの働きによって尿酸へ変換されます。
尿酸は主に腎臓から、残りは腸管や汗などから排泄されます。
尿酸は、腎糸球体で濾過されたのち、尿細管での再吸収・分泌によって、尿中排泄量が調整されます。
健常者では、尿酸の産生量と排泄量は同等であり、体内の尿酸は一定量に保たれています(尿酸プール)。
尿酸値
項目 | 基準値 | 意義 | 高値で疑われる疾患 | 低値で疑われる疾患 |
---|---|---|---|---|
尿酸(UA) | 男性:4.0~7.0 mg/dL、女性:3.0~5.5 mg/dL | 核酸(プリン)が分解され最後に生成される物質で、尿中に排泄されます。プリンを多く含む食事をしたり、腎機能が低下している場合、血中の尿酸が増加します。痛風の原因となります。 | 高尿酸血症、痛風、慢性腎不全、 骨髄腫、白血病、薬剤性:サイアザイド系降圧利尿薬、ループ利尿薬の服用 | 2.0 mg/dL 未満:低尿酸血症、特発性腎性低尿酸血症、糖尿病、肝硬変、アスピリンの大量服用 |
尿酸値判定の目安
正常 | 7mg/dL以下 | ー |
基準外 | 7.0~7.9mg/dL | 生活に注意 |
8.0~8.9mg/dL | 医療機関で相談 | |
9mg/dL以上 | 薬物治療 |
薬物治療によって血清尿酸値を6.0mg/dL未満に維持することで、痛風結節を縮小・消失させ、再発を予防することができます。
また、自壊して感染を伴ったり、機械的刺激となったり、神経圧迫による疼痛抑制を必要とする場合は摘出術も考慮します。なお、摘出術を行った後も薬物治療は必要です。
高尿酸血症の治療では、体組織への尿酸塩沈着を解消し、痛風関節炎や腎障害などの尿酸塩沈着症を回避することを目指します。
また、高尿酸血症・痛風の生命予後に関係する肥満や高血圧、糖・脂質代謝異常などの合併症についても配慮します。
高尿酸血症の治療では、血清尿酸値、痛風関節炎または痛風結節の有無、合併症の有無などに応じて、適切な生活指導や薬物治療を行います。
治療目標としては、血清尿酸値を3~6か月かけて徐々に低下させ、6.0mg/dL以下を維持することが望ましいとされています。
[痛風関節炎または痛風結節のある場合]
血清尿酸値が7.0mg/dLを超え、痛風関節炎を繰り返す症例や痛風結節を認める症例では、生活指導に加えて薬物治療を行います。
[痛風関節炎または痛風結節のない場合(無症候性高尿酸血症)]
痛風発作、痛風結節、腎障害などの臨床症状のない高尿酸血症は「無症候性高尿酸血症」と呼ばれ、この段階で症状の発症を防ぐために、下記のような治療により血清尿酸値を低下させることが望ましいとされています。
・生活習慣の改善にもかかわらず、血清尿酸値が9.0mg/dL以上の無症候性高尿酸血症には薬物治療を考慮する。
・尿路結石や腎障害、高血圧などの合併がある場合は、血清尿酸値が8.0mg/dL以上で薬物治療を考慮する。
痛風
痛風は、高尿酸血症を背景として、針状の尿酸塩結晶が関節などの組織へ析出・沈着することで生じます。
尿酸塩結晶の析出部位によって特定の臨床症状があらわれ、代表的なものに痛風関節炎や痛風結節などがあります。
痛風の主症状である急性の痛風関節炎は、白血球が尿酸塩結晶を貪食した際に放出する炎症性物質などによって生じます。
なお、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えると、数値が高くなるに従って発症リスクが高まるとされています。
・痛風関節炎の多くは、親指の付け根にあるMTP関節(第一中足趾節関節、metatarsopharangeal joint)などの下肢関節に生じ、24時間以内に炎症のピークに達する。疼痛や腫脹が激しく、ときに歩行困難になるが、7~10日程度で軽快し、次の発作までは無症状(間欠期)となる。
・一般には、一度の発作につき単一の関節が冒され、発症は夜間が多い。
・人によっては前兆期の症状(発作前に足がむずむず・ぴりぴりするなど)を自覚する。
痛風結節
慢性期の痛風では、痛風結節(尿酸塩を中心とした肉芽組織)が出現します。
・痛風結節は無痛性で、血流の乏しい部位(足趾、足背、手指、肘関節、耳介など)に好発する。
・関節周囲に発生した場合、X線写真にて骨の萎縮が認められたり、重篤になると関節が変形することがある。
・痛風結節は、高尿酸血症の治療に反応して縮小する。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。