記事
家族性地中海熱に使う薬とは?意外と知られていない「コルヒチン」のもう一つの適応
公開. 更新. 投稿者:風邪/インフルエンザ.この記事は約2分54秒で読めます.
1,309 ビュー. カテゴリ:コルヒチン=痛風の薬?実は家族性地中海熱にも

「コルヒチン」と聞くと、まず思い浮かべるのは痛風発作の治療薬かもしれません。
一部ではベーチェット病での使用も知られていますが、実はもう一つ重要な適応があります。
それが、家族性地中海熱(FMF: Familial Mediterranean Fever)です。
厚労省の薬効分類では、「痛風・家族性地中海熱治療剤」として明記されています。
家族性地中海熱は、遺伝性の自己炎症性疾患で、主に地中海沿岸(トルコ、アラブ諸国、アルメニア、スペイン、イタリアなど)に多く見られますが、日本でも推定300〜500人程度の患者がいるとされています。
主な症状は以下の通りです:
・繰り返す発熱発作
・激しい腹痛・胸痛
・関節痛、皮膚の腫れ
・発作は1~3日ほどで自然軽快するが、何度も繰り返す
診断が難しく、症状が風邪や腹痛と類似しているため、診断までに平均8.8年かかるという報告もあります。
家族性地中海熱の治療において、コルヒチンは第一選択薬とされています。炎症発作を予防し、症状をコントロールする目的で使用されます。
【用法・用量(添付文書より)】
成人:1日0.5mgを1回または2回に分けて服用(最大1.5mg/日)
小児:体重あたり0.01〜0.02mg/kg(最大0.03mg/kg/日)、ただし成人の最大量を超えない
粉砕調剤も必要になるため、小児科領域では薬剤師の関与も重要です。
コルヒチンが効かないときは?
コルヒチン治療で十分な効果が得られない場合には、イラリス皮下注射液(カナキヌマブ)の使用が考慮されます。
コルヒチンによる適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に限り使用(添付文書より)
イラリスはインターロイキン-1β阻害薬で、炎症を抑制する免疫調節薬です。ただし、高額で投与間隔も月1回と限られるため、まずはコルヒチンで十分な効果を得ることが基本です。
日本における診断の課題
発熱や腹痛は誰にでも起こる症状であり、FMFは風邪や胃腸炎と診断されてしまうことも少なくありません。
「月に何度も原因不明の発熱を繰り返す」「腹痛があるが検査で異常が出ない」――そんな場合は、専門機関での診断や遺伝子検査を受けることで診断に近づける可能性があります。
痛風の薬という印象が強いコルヒチンですが、家族性地中海熱のコントロールにも欠かせない薬剤です。
「なかなか治らない発熱や腹痛がある患者がいたら、FMFの可能性も視野に」という視点を持つことで、薬剤師としての関わり方にも広がりが出るかもしれません。


薬剤師の人たちって、どうやって勉強してるんだろう…

勉強法はいろいろあるが、タイムリーな話題や興味深いコンテンツを提供しているエムスリードットコムはおすすめ