2024年3月28日更新.2,749記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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リンゼスとイリボーの違いは?

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便秘型過敏性腸症候群

過敏性腸症候群の新しい治療薬が出ました。
その名はリンゼス錠。一般名はリナクロチド

過敏性腸症候群治療薬といえば、イリボーラモセトロン塩酸塩)。
イリボーリンゼス、何が違うのかと聞かれれば、全然違う薬。下剤と下痢止めくらい違う薬。

同じ過敏性腸症候群治療薬ではありますが、適応は異なる。
イリボー下痢型過敏性腸症候群治療薬で、リンゼス便秘型過敏性腸症候群治療薬。
過敏性腸症候群といえば、別名「各駅停車症候群」とも言われるように、全体でみると「下痢型」のほうが多い印象。

しかし、女性に限って言えば、便秘型の方が多い。
下痢型に使われるイリボーは、便秘になりやすい女性に対しての用量は低めに設定されている。
イリボーの用法用量は以下のようになっている。

男性における下痢型過敏性腸症候群
通常、成人男性にはラモセトロン塩酸塩として5μgを1日1回経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は10μgまでとする。

女性における下痢型過敏性腸症候群
通常、成人女性にはラモセトロン塩酸塩として2.5μgを1日1回経口投与する。
なお、効果不十分の場合には増量することができるが、1日最高投与量は5μgまでとする。

リンゼスの用法用量は以下のようになっている。

通常、成人にはリナクロチドとして0.5mgを1日1回、食前に経口投与する。
なお、症状により0.25mgに減量する。

特に男性と女性で用量が異なってはいない。

リンゼスは食前服用?

リンゼス錠の用法は食前服用となっている。
なぜか?
添付文書ではわからなかったが、インタビューフォームに答えが載っている。

「リナクロチド経口投与後の臨床薬力学」に以下の記載が見られる。

BSFSスコアの調整済み平均値の差(食後投与-食前投与)(90%CI)は、0.68(0.33-1.02)であり、食前投与に比べて食後投与で、統計的に有意なBSFSスコアの上昇が認められた。SBM頻度、CSBM頻度及びいきみの重症度スコアでも、反復投与での薬力学的な変化が認められ、投与条件別では、食前投与に比べて食後投与で、変化量が大きかった。

BSFSスコアのBSFSとはブリストル便形状スケールのことで、スコア1から7まである。
スコア1:兎糞状便(硬くてコロコロ状の排便困難な便)
スコア2:塊便(コロコロ便の集合体、ソーセージ状だが硬い便)
スコア3:普通便(表面にひび割れのあるソーセージ状の便)
スコア4:普通便(バナナ状、表面が滑らかで軟らかいソーセージ状、蛇のようにとぐろを巻く便)
スコア5:軟便(軟らかいバナナ状、はっきりとしたしわのある軟らかい半固形で容易に排便できる便)
スコア6:泥状便(境界がほぐれてふにゃふにゃの不定形の小片便)
スコア7:水様便(水様で固形物を含まない液体状の便)

BSFSスコアが上昇するということは、下痢っぽくなるということ。
下剤なんだから、下痢っぽくなっても良いと思うのですが。
食前投与で効果が弱い患者に対しては、食後投与という選択をしてくる医師もいるだろう。でも薬局は疑義照会しないといけないわけだ。

リンゼスはアミティーザに似ている?

リンゼスの作用機序は、グアニル酸シクラーゼC受容体アゴニスト。
「本剤の腸管分泌及び腸管輸送能促進作用並びに大腸痛覚過敏改善作用が、便秘型過敏性腸症候群における排便異常及び腹痛・腹部不快感の改善に寄与すると考えられる。」
腸液の分泌促進といえば、アミティーザ。作用機序としては似ているようだ。

アミティーザは妊婦に禁忌となっているが、リンゼスは禁忌となっていない。
しかし、下剤というカテゴリの薬は、いずれにしても妊婦に注意する必要がある。
過敏性腸症候群の患者は20~40代の比較的若い年齢層が多く、便秘型過敏性腸症候群の患者も、若い女性が多いと考えられる。

便秘型過敏性腸症候群をターゲットとして、どれだけのマーケットがあるのかわからないが、処方を見る機会があるのだろうか。

リナクロチド(リンゼス)は体内にはほとんど吸収されず、腸管の管腔表面に存在するグアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体を活性化することにより、腸管内への水分の分泌を促進する。
類似薬のルビプロストン(アミティーザ)の作用点はClC-2クロライドチャネルであり、リナクロチドと異なるものの、腸管での水分分泌促進という同様の作用を持つ。
ただし、リナクロチドはGC-C受容体の活性化により、求心性神経の痛覚過敏を抑制することで腹痛や腹部不快感の改善にも効果を示す点が特徴である。
リナクロチドは、国内第1相反復投与試験の結果に基づき、食前投与である。
食後投与は、食前投与に比べブリストル便形状スコア(BSFS)が高まり(便が軟らかく、水っぽくなる)、下痢の発現率も高かった。
また、便秘型IBS患者は、食事の摂取により、腹痛・腹部不快感が増悪することも考えられるため、食前投与により、腹部症状の増悪やそれに伴う不安感を軽減できる可能性がある。一方、ルブプロストンは悪心の発現率を下げるために、食後に服用するので注意したい。

※リンゼスは2018年8月に「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」の適応も取得し、よりアミティーザと近い使い方ができるようになった。

処方例

リンゼス錠0.25mg 2錠  
 1日1回朝食前 30日分

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薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

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4 件のコメント

  • 匿名 のコメント
         

    朝5時頃にリンゼスのみ13時頃にアミテーザ飲んだけど大丈夫ですか

  • エセ薬剤師 のコメント
         

    大丈夫ですよ!

  • 匿名 のコメント
         

    今日過敏性腸症候群かもしれないと診断されてリンゼス錠を朝食後と処方されましたが、ネットで調べるとリンゼス錠は食前に飲む薬と書かれていて、どうしたらいいのかわかりません。病院も薬局ももう閉まってて連絡がつきません。先生が間違ったのか、あえての食後なのか?どう思いますか?

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    記事にも書いてある通り、食後に飲むと少し下痢っぽくなるかも知れないという理由なだけで、食前じゃなきゃダメだというわけでほありません。
    他に朝食後に飲んでいる薬があって、一度に飲んだほうが忘れない等、医師がなんらかの事情を考慮して食後にした可能性もありますが、下痢が心配であれば休み明けまで朝食前で飲んで、休み明けに問い合わせてみても良いでしょう。

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yakuzaic/著
2023年09月14日発売

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職業:薬剤師
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座右の銘:習うより慣れろ。学ぶより真似ろ。
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