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SGLT2阻害薬は術前3日前から休薬?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約3分25秒で読めます.
9,536 ビュー. カテゴリ:SGLT2阻害薬と休薬
糖尿病治療薬は、「重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者」に禁忌となっている。
手術前後は、食事が中止になることが多く、低血糖のリスクも高いので、そのタイミングで糖尿病治療薬は服用中止となる。血糖値に基づいた量のインスリンを投与して血糖コントロールを行うことが多い。
だが、SGLT2阻害薬は、投与中止後にもケトアシドーシスが遅延する報告も相次いだため、日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation」に「手術が予定されている場合には、術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開する」と2020年12月25日に追記された。
周術期のストレスや絶食により、ケトアシドーシスの発生リスクが高まる。
糖尿病に対してSGLT2阻害薬を投与すると、尿中への糖排泄増加により血糖および血中インスリンが低下し、肝臓での糖新生が増加します。脂肪分解が亢進し、遊離脂肪酸が肝臓でケトン体に代わり、体内にケトン体が増加します。
そのような状況で、周術期に絶食による糖質摂取不足や、侵襲に伴う体への極度のストレスを伴うと、脂肪分解がより亢進して体内のケトン体が急増し、ケトアシドーシス発症のリスクが増大する。
SGLT2阻害薬服用者では、高血糖を来さずにケトアシドーシスを呈するケースも問題視されている。
SGLT2阻害薬と膀胱炎
SGLT2阻害薬は、近位尿細管において、ナトリウム・グルコース共輸送体2(sodium-glucose co-transporter2;SGLT2)を選択的に阻害し、尿中グルコースの排泄を促進させる。
この作用により、尿中グルコース濃度が上昇するため、尿路感染症に気をつけなければならない。
一般的に尿路感染症は、女性のほうがなりやすい。女性は男性よりも尿道が短く、細菌が膀胱に到達しやすいためである。
糖尿病患者は尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)になりやすい。尿中グルコース濃度上昇による細菌増殖、高血糖による好中球機能の低下、膀胱機能障害などが要因としてある。
排尿痛や頻尿、残尿感などの膀胱炎を示唆する症状や発熱、背部痛などの急性腎不全を示唆する症状がみられた場合は尿路感染症を疑い、受診勧奨を行う。
SGLT2阻害薬でフルニエ壊疽?
2019年5月9日に添付文書が改訂され、SGLT2阻害薬の副作用に「フルニエ壊疽」というのが追加された。
尿路感染及び性器感染を起こし、腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症等の重篤な感染症に至ることがある。十分な観察を行うなど尿路感染及び性器感染の発症に注意し、発症した場合には適切な処置を行うとともに、状態に応じて休薬等を考慮すること。尿路感染及び性器感染の症状及びその対処方法について患者に説明すること。
フルニエ壊疽(Fournier’s gangrene)とは、1883 年にフランス人医師Fournier が、若年男性に突然発症し急速に進行する外陰部の壊疽として報告した疾患です。現在では外陰部に発生する壊死性筋膜炎を意味しており、消化器や泌尿器科領域で遭遇する比較的稀な疾患です。
細菌が皮下組織に進展し、肛門周囲、陰嚢・睾丸、会陰・大腿部の筋膜や筋肉内で膿汁の貯留が起こり、腐敗ガス・毒素を産生して組織が腐ることが原因だとういう。
SGLT2阻害薬によって糖が尿中に排泄されると、尿中に細菌が繁殖しやすくなり尿路感染症を起こしやすくなるが、それに加え、浸透圧が高まり頻尿となり、尿失禁を起こし、外陰部も感染し膿を出し腐敗するという機序になる。
現在販売されているSGLT2阻害薬は以下のとおり。
スーグラ(イプラグリフロジン L-プロリン)
カナグル(カナグリフロジン)
フォシーガ(ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)
ジャディアンス(エンパグリフロジン)
アプルウェイ/デベルザ(トホグリフロジン水和物)
ルセフィ(ルセオグリフロジン水和物)
配合剤もいつのまにか増えている。
カナリア配合錠(テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物/カナグリフロジン水和物)
スージャヌ配合錠(シタグリプチンリン酸塩水和物/イプラグリフロジン L-プロリン)
トラディアンス配合錠(エンパグリフロジン/リナグリプチン)
SGLT2阻害薬が処方されている患者で、泌尿器科も受診しているような患者がいたら要注意です。
陰部のむずむず
SGLT2阻害薬の副作用で、脱水に次ぐ特徴的なものに尿路や性器の感染症がある。
排尿時や性器にむずむずするような違和感がないかを確認する。
尿路・性器感染症は糖尿病患者以外でも珍しくない疾患だが、罹患したことが無い人もいる。異常を感じた場合には、内科や泌尿器科などの受診を勧める。
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