2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ユリスとユリノームの違いは?

ユリスとユリノームの違い

2020年5月に発売されたユリス錠(ドチヌラド)も、発売から1年が経過し、長期処方できるようになったため処方が増えているのではないでしょうか。

ユリスは、フェブリクやザイロリックなどの尿酸生成阻害薬の仲間ではなく、ユリノームやベネシッドといった尿酸排泄促進薬の仲間です。尿中に尿酸排泄増やすと尿酸結石ができやすくなるので、あまり使われていないような印象です。

でも、高尿酸血症のタイプでいうと、日本人に最も多いタイプは尿酸排泄低下型で約60​%、尿酸産生過剰型は12%で、混合型が25%と言われているので、尿酸排泄促進薬を第一選択で使ったほうが理にかなっている。そういった意味でもユリス錠の処方は増えてくる、かもしれない。

各尿酸排泄促進薬について、薬効分類名と適応症の違いからみていきます。

ベネシッドの薬効分類名は「痛風治療剤」です。尿酸排泄促進薬ではありません。
適応症は「痛風」となっており、高尿酸血症には適応がありません。これは使いにくい。それでいて、「急性痛風発作がおさまるまで、本剤の投与を開始しないこと。」という注意書きが記載されていて、「じゃあいつ使えばいいの?」という疑問も生じる。痛風発作を起こしたことがある人で、再発のリスクが高い人なら使えるのでしょうか。いずれにせよ、最近は処方をみません。

ユリノームの薬効分類名は「尿酸排泄薬」です。「促進」は入っていませんが、まあいいでしょう。
しかし、適応症は、「痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症」となっており、高尿酸血症単体には適応がありません。高血圧を伴う人は多いですが、尿酸値が高いだけの人も多いので、やはり使いにくい。しかも「高血圧を伴う高尿酸血症」ではないところが、まだ高尿酸血症という状態を軽んじている思惑がみられます。

ユリスの薬効分類名は「選択的尿酸再吸収阻害薬」です。かなり具体的になってきました。URAT1トランスポーターに対する選択性を高め、ユリノームよりも効率的に尿酸を下げられます。
適応症も「痛風、高尿酸血症」となって、高血圧を伴わなくても使えるようになりました。

このように、ユリスは「効果が高い」というだけでなく、保険請求上も使いやすい薬となっています。

ベネシッドとユリノームの違い

高尿酸血症に使われる薬には、尿酸排泄促進薬、尿酸生成阻害薬、尿アルカリ化薬などがあります。

ベネシッドもユリノームも尿酸排泄促進薬ですが、その違いは何でしょうか?

この2剤はいずれも尿酸排泄促進薬で、開発はプロベネシドのほうが早く、ベンズブロマロンが後に開発されました。

作用機序はどちらも、尿細管における尿酸の再吸収を阻害して、尿酸の尿中への排泄を促し、血清尿酸値を下げるというものです。

ただし、プロベネシドとベンズブロマロンでは、阻害する再吸収の部位が異なります。血中の尿酸は、腎の糸球体で100%濾過されたのち、尿細管で再吸収を受け、再び尿細管に分泌されたあと、もう一度再吸収されるという過程を経て、尿として排泄されていきますが、プロベネシドはこの2回の再吸収のうち、はじめの分泌前再吸収を主として阻害します。これに対し、ベンズブロマロンは分泌後再吸収を主に阻害するのです。

そのため、尿酸低下作用はベンズブロマロンのほうが強くなります。作用の持続時間もベンズブロマロンのほうが長く、したがって尿酸排泄促進薬としては一般的には、ベンズブロマロンが頻用されています。

薬剤相互作用の点でも、ベンズブロマロンが有用です。プロベネシドはもともと、ペニシリンの血中濃度を高めることを目的に開発されたという経緯があり、さまざまな薬剤と相互作用を示します。痛風や高尿酸血症は長期にわたる疾患で、薬剤をいろいろ併用することも多いですから、相互作用の多さは気になるところです。

ベンズブロマロンは、ワルファリンとの相互作用がよく知られていますが、それほど多くはなく、比較的使いやすい薬剤です。

以上の点から、尿酸排泄促進薬としては、ベンズブロマロンを第一とし、ベンズブロマロンで問題がある場合にプロベネシドが使われます。

ベネシッドは尿細管排泄抑制作用をもつが、ユリノームに尿細管排泄抑制作用はなく、再吸収阻害作用のみ。
ベネシッドの処方を見たことがありません。

尿酸排泄促進薬

尿管からの尿酸再吸収抑制により尿中への尿酸排泄を増加させる。

尿酸の尿細管からの再吸収を抑制して尿酸の尿中排泄を促進します。

一般に尿酸排泄低下型高尿酸血症にはベンズブロマロンを、尿酸産生過剰型にはアロプリノールを用いる。

尿アルカリ化薬を併用する。

尿酸排泄促進薬を使用する場合には、尿アルカリ化薬(重曹、ウラリットU、ウラリット錠)により尿pHを6.0~7.0に維持して尿路結石を予防する。

頻度は少ないが、ベンズブロマロンによる劇症肝炎が報告されたので、投与開始後6ヶ月は定期的に肝機能検査を実施する。

ユリノームの特徴

最も作用が強い。

ベネシッドの特徴

尿酸排泄促進薬。
尿細管における尿酸の再吸収を抑制して尿中排泄を促進。

処方例

ユリノーム錠50mg 3錠  
 1日3回毎食後 30日分

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

コメント


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yakuzaic
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