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HIF-PH阻害薬どれがいい?
公開. 更新. 投稿者:腎臓病/透析.この記事は約5分33秒で読めます.
6,134 ビュー. カテゴリ:HIF-PH阻害薬
HIF-PH阻害薬ってどれがいいの?
最近になり、腎性貧血の薬が多く発売されている。
これらの薬を、HIF-PH(ヒフ・ピーエイチ)阻害薬という。
HIF-PHとは、低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素(Hypoxia Inducible Factor-Prolyl Hydroxylase:HIF-PH)のことである。
腎臓は、赤血球の産生を促す「エリスロポエチン」というホルモンを作っています。エリスロポエチンが骨髄からの造血(赤血球産生)を促すことで赤血球が作られます。
腎臓のはたらきが悪くなるとエリスロポエチンが不足し、必要な赤血球が作られないため貧血になります。
血液中には低酸素誘導因子(HIF:Hypoxia Inducible Factor)と呼ばれる酸素濃度の低下を感知する細胞内の酸素センサー的役割を果たしている物質がある。
通常であれば、血液中の酸素濃度が低下した場合に、酸素を運ぶ役割の赤血球をたくさん作って、たくさん運ばなければ酸素不足に陥る。
しかし、腎臓病では、このHIFが関わるエリスロポエチン産生誘導の仕組みがうまく働いていないため、エリスロポエチン産生が低下する。
腎臓病では、腎臓の血流量が低下して酸素の供給量が少なくなりますが、尿細管障害によって酸素の消費量自体も低下しており、酸素濃度が低下しない。そのため、エリスロポエチン産生刺激が生じず、ヘモグロビン値の低下に見合うだけのエリスロポエチンが産生されない。そして赤血球が作られない。
HIFは低酸素誘導因子ープロリン水酸化酵素(HIFーPH:Hypoxia Inducible Factor Prolyl Hydoxylase)と呼ばれる物質によって分解されるため、HIF-PHを阻害することができれば、エリスロポエチン産生の誘導による造血(赤血球産生)が亢進され腎性貧血の改善が期待できるというわけだ。
HIF-PH阻害薬以前の薬
今まで、腎性貧血に使われていた薬としては、不足しているエリスロポエチンをそのまま補うエリスロポエチン製剤、赤血球造血刺激因子製剤(ESA製剤:erythropoiesis stimulating agent)というエリスロポエチンレセプターに作用して、赤血球造血刺激を行うものがあります。
しかし、これらの薬に内服薬はなく、医療機関を受診し、皮下投与を行わなければなりませんでした。
HIF-PH阻害薬の比較
医薬品名 | 一般名 | 規格剤形 | 用法用量 |
---|---|---|---|
エナロイ | エナロデュスタット | 錠(2mg、4mg) | 保存期慢性腎臓病患者及び腹膜透析患者:1回2mgを開始用量とし,1日1回食前又は就寝前 血液透析患者:1回4mgを開始用量とし,1日1回食前又は就寝前 |
バフセオ | バダデュスタット | 錠(150mg、300mg) | 1回300mgを開始用量とし、1日1回 |
ダーブロック | ダプロデュスタット | 錠(1mg、2mg、4mg、6mg) | 保存期慢性腎臓病患者: (赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合)1回2mg又は4mgを開始用量とし、1日1回 (赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合)1回4mgを開始用量とし、1日1回 透析患者:1回4mgを開始用量とし、1日1回 |
マスーレッド | モリデュスタット | 錠(5mg、12.5mg、25mg、75mg) | 保存期慢性腎臓病患者: (赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合)1回25mgを開始用量とし、1日1回食後 (赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合)1回25mg又は50mgを開始用量とし、1日1回食後 透析患者:1回75mgを開始用量とし、1日1回食後 |
エベレンゾ | ロキサデュスタット | 錠(20mg、50mg、100mg) | 赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合:1回50mgを開始用量とし、週3回 赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合:1回70mg又は100mgを開始用量とし、週3回 |
世界初のHIF-PH阻害剤であるエベレンゾは発売当初は「透析施行中の腎性貧血」が適応であったが、今は「腎性貧血」となっているので他の薬と同じように透析前でも使える。
正直どれがいいという決定的なものはないが、用法についてはエベレンゾは週3回で透析の曜日に合わせた用法ができる、エナロイが食前、マスーレッドが食後、といった違いがある。
また、相互作用についても挙げられている併用注意薬に違いがある。
でも、併用禁忌じゃないので、薬の選択の判断には影響しないだろう。
HIF-PH阻害薬と血栓塞栓症
HIF-PH阻害薬の警告欄に、以下のように記載されている。
本剤投与中に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の重篤な血栓塞栓症があらわれ、死亡に至るおそれがある。本剤の投与開始前に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の合併症及び既往歴の有無等を含めた血栓塞栓症のリスクを評価した上で、本剤の投与の可否を慎重に判断すること。また、本剤投与中は、患者の状態を十分に観察し、血栓塞栓症が疑われる徴候や症状の発現に注意すること。血栓塞栓症が疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。
赤血球が増えれば、血栓はできやすくなるというわけだ。
血栓塞栓症(0.8%)
脳梗塞(0.3%)、肺塞栓症(0.3%)、網膜静脈閉塞(0.3%)、深部静脈血栓症(0.3%)、バスキュラーアクセス血栓症(シャント閉塞等)(頻度不明)等の血栓塞栓症があらわれることがある。
頻度的には、少ないのかも知れないが、命に係わる副作用なので、注意する必要がある。
余談ですが、「バスキュラーアクセス」という言葉を初めて見たが、シャントのことらしい。
貧血の原因は腎臓病?
貧血といえば、鉄欠乏性貧血を思い浮かべますが、貧血の種類にもいろいろある。
たいがい血液検査をすると、MCVとかMCH、MCHCといった赤血球恒数が検査されている。
赤血球恒数の評価は、貧血があると判断された場合に行われるものです。
赤血球数・ヘモグロビン・ヘマトクリットの検査データから、赤血球の平均的な大きさ(MCV)、赤血球1個あたりの平均ヘモグロビン量(MCH)、赤血球中の平均ヘモグロビン濃度(MCHC)を算出。その数値から、どんな種類の貧血が疑われるかを判断します。
貧血というと、血液が薄くなる、というイメージです。
鉄欠乏性貧血とか、出血だとそういう感じ。
MCVが大きいのは、巨赤芽球性貧血とか、赤血球の大きさが大きくなっても貧血になる。
また、腎臓を悪くすると、赤血球が作られなくなり貧血になる。
腎臓は、酸素不足を完治を関知して赤血球造血を刺激するエリスロポエチンを産生する臓器であり、CKDに合併する貧血の多くはエリスロポエチン不足が原因である。
腎臓は様々なホルモンを分泌しています。そのひとつに赤血球をつくるはたらきを促進するエリスロポエチンというホルモンがあります。腎臓のはらたきが低下すると腎臓からのエリスロポエチンの分泌が減り、赤血球をつくる能力が低下することで貧血になります。
このようにしておこる貧血を「腎性貧血」といいます。
エリスロポエチン
なので、透析患者に鉄剤が処方されていることがある。
しかし、鉄剤の補給だけでは改善しないので、週1でエリスロポエチンの注射を行う。
クレアチニンクリアランスが40ml/分以下、あるいは血清クレアチニン1.6mg/dl以上になると貧血が出てくるといわれている。
クレアチニンクリアランス10ml/分以下が人工透析を始める一つの目安なので、エリスロポエチンの注射は透析導入以前から行われている。
慢性腎不全になると、ほぼ例外なく貧血になります。
保存期腎不全では1~4週ごとにエリスロポエチンの皮下投与が行われることが多い。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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