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シミに効く薬
公開. 更新. 投稿者:皮膚感染症/水虫/ヘルペス.この記事は約6分54秒で読めます.
3,261 ビュー. カテゴリ:シミに効く薬
世の中には実にたくさんの「美白剤」が販売されていますが、これらの効き目はどうでしょうか。
残念ながら、現在のところほとんど効果ありません。
実は、ハイドロキノンのようにある程度有効な美白剤もあるのですが、副作用が出やすいために、わが国では一般に販売される場合の濃度が非常に低く抑えられています。この濃度では効果はほとんど出ないでしょう。
病院では医師が自分で調剤・処方して濃いものを使用する場合もあるのですが、濃度を上げると肌が赤くヒリヒリしたり、ポロポロむけたり、いろいろな副作用が高率に出現します。
炎症が強く出て、しみの色がむしろ濃くなってしまう場合もあります。
安全で、なおかつはっきり有効性が証明された美白の外用療法は存在しないのが現状です。
ケシミンクリームとシミ
ケシミンクリームという小林製薬のしみ対策の塗り薬があります。
こういうカテゴリーの商品は小林製薬は得意ですね。効果的な医薬品が無い分野。
ケシミンクリームの成分は、「L-アスコルビン酸 2-グルコシド、グリチルレチン酸ステアリル、トコフェロール酢酸エステル」となっている。
1.ビタミンC誘導体(L-アスコルビン酸2-グルコシド)が集中的に角質層のすみずみまでじっくり浸透して、メラニンの生成を抑えます。
2.血行を促進させるビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)配合です。
ビタミンCがメラニンの生成を抑えるのでシミに効くという。
医療用でシミに使う薬はない。
病気じゃないから。
ヘパリン類似物質とシミ
ヘパリン類似物質がシミに効くといわれている。
なんでも効くのねヒルドイドソフトは。
これはおそらく、傷跡に効く「アットノン」のイメージから来ているものだと思われる。
ヒルドイドソフトの効能効果は、
血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期)
となっており、この中に「肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防」というのがある。
ケロイド=傷跡である。
この、傷跡を治す、血行促進効果がある、といったイメージからシミに効くんじゃないか?というイメージが出来上がったものと思われる。
ロドデノール
カネボウの化粧品回収問題。
大きなニュースになりましたが。
ロドデノールという美白成分。
白くなったのはいいけど、まだら模様じゃちょっと。
自然に美白になればいいのだけれどね。
回収された美白製品の有効成分「ロドデノール」は、皮膚においてメラニン色素(黒色・赤褐色)産生に関わる酵素「チロシナーゼ」の働きを抑制し、美白作用を示すとされています。
メラニンは、生体内でチロシンというアミノ酸から産生されます。
チロシンは、チロシナーゼによりドーパという化合物になり、さらにドーパキノンという化合物になります。このドーパキノンは化学反応性が非常に高く、ドーパキノンから変化した様々な物質同志がそれぞれ結合しあうことで(重合反応)メラニンの分子を作ります。
ロドレノールは、チロシンによく似た構造をしているので、チロシナーゼにチロシンが結合するのを邪魔します。すると、チロシナーゼがメラニンの材料であるドーパやドーパキノンを作れなくなるので、メラニンの産生は抑制される。
トラネキサム酸とシミ
いわゆる「しみ」にトラネキサム酸が使われます。
トラネキサム酸は抗プラスミン作用を有し、メラノサイトの活性化を阻害してメラニン生成を抑制する。
医療用のトラネキサム酸(トランサミン)の効能効果は、
○全身性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向
(白血病、再生不良性貧血、紫斑病等、及び手術中・術後の異常出血)
○局所線溶亢進が関与すると考えられる異常出血
(肺出血、鼻出血、性器出血、腎出血、前立腺手術中・術後の異常出血)
○下記疾患における紅斑・腫脹・そう痒等の症状
湿疹及びその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹
○下記疾患における咽頭痛・発赤・充血・腫脹等の症状
扁桃炎、咽喉頭炎
○口内炎における口内痛及び口内粘膜アフター
と、肝斑に対する効能・効果は医療用としては認められていないが、一般用医薬品として承認を取得し、トラネキサム酸1日750mgを含有する配合剤トランシーノ(第一三共ヘルスケア、第1類医薬品)が発売されている。なお皮膚科では1日1,000mg~1,500mgが保険適応外使用されている。
肝斑とシミの違い
トランシーノの適応症は「肝斑」で、ふつうのシミには適応が無い。
メーカーも「トランシーノは肝斑の専門薬です。肝斑以外のシミには、効能・効果が認められていません。」としつこく言ってくる。
しかし、肝斑もシミの一種であり、原因も不明だし、はっきりとした違いはわからない。メラノサイトの活性化を阻害してメラニン生成を抑制するのであれば、肝斑にも効くだろう。
使用上の注意には、「ご自分のしみが、本剤の効能・効果である肝斑かどうかの識別が難しい場合、また、色が黒ずんでおり、色調が不均一で、表面が隆起したようなしみ状のものがある場合は専門の皮膚科医に相談して下さい。」と書かれている。
皮膚がんには注意しろとのこと。
薬剤師が、肝斑かふつうのシミか鑑別するのは難しい。
「肝斑以外のシミに対しては、有効性・安全性を示す十分なデータがありませんので、使用しないでください。」と言われるが、作用機序的には効くだろうし。
安全性に関しては、その止血作用から血栓の恐れもあるので、ビタミンCよりもハードルは上げる必要はあるだろう。
美容目的で連用されることは避けた方が良い。
トランシーノとトランサミンの違い
女性の不正出血などで、止血剤のトランサミンが使われます。
成分はトラネキサム酸。
肝斑に使われる市販薬トランシーノと同じ成分です。
トランサミンでシミが治るかも?
トランシーノにはビタミン類も含まれるから、より良いのかも知れません。
それに、トランサミンが不正出血や咽頭痛で処方されたとしても、短期間の処方なので、シミを治すほどの効果は得られないと思いますし。
トランシーノの服用期間は「まずは1ヵ月、効果が感じられたら2ヵ月間服用を続けてみましょう。」となっています。
肝斑とトラネキサム酸
トラネキサム酸が肝斑に有効であるというのは、偶然見つかったものです。
OTC薬として最近トラネキサム酸、L-システイン、ビタミンCを含有するトランシーノが発売されました。
トラネキサム酸の1日投与量が750mgとやや少なめですが、有効と報告されています。
トラネキサム酸の外用も肝斑に有効という報告もあります。
トラネキサム酸はなぜ肝斑に有効なのかは不明です。
肝斑の発症機序も不明です。
しかし、妊娠中に肝斑が出現し、出産とともに肝斑が消失する人もいます。
妊娠中にはエストロゲンの血中濃度が上昇しますが、同時にプラスミノーゲンの血中濃度が上昇することも知られています。
トラネキサム酸が抗プラスミン作用を有する薬剤であることを考えると、肝斑に対する有効性も抗プラスミン作用によるものと考えられます。
高価な化粧品でシミが改善?
夏のあいだに日に焼いてしまったりしてしみが目立つようになったので高価な化粧品をつけていたら数ヶ月でだいぶ薄くなった、というのはよく聞く話です。
ただし、この場合でも高価な化粧品の効果が出たのではなく、数ヶ月間日に焼かないように気をつけていたので「日焼けが褪めた」と考えるのが自然でしょう。
おそらく、その化粧品をつけなくても同様の改善が得られたと予想できます。
人間の皮膚には、ある程度の自然治癒力が備わっているのです。
シミ対策と日焼け
日焼けはあらゆるタイプのしみの症状増悪因子ですから「日に焼けない」ことが、最も重要な対策となります。
日中外へ出る場合には、日傘や帽子で顔を日光に当てないようにしましょう。
各種日焼け止めも利用したほうが良いでしょう。
いつも「気をつける」ことが大切です。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
2 件のコメント
初めまして。
シナールやトラネキサム酸が処方されている明らかにシミに対しての処方が来たときはどういった対応をされていますか?
薬学管理料を外したほうがいいんですかね?
コメントありがとうございます。
正直あまりそのようなケースに遭遇したことがなく詳しくないのでわかりませんが、シナールの適応に「炎症後の色素沈着」というのがありますが、例えば「痒みがあって掻いた」その後のシミであれば保険請求上はOKということなんでしょうかね。
「この人はあからさまに美容目的だ」と感じて、個別指導をイメージしたときに恐怖を覚えるのであれば外した方が良いと思います。基本的には医師が自費ではない処方出してるのであれば、保険適応上OKなのだろうと思い、湿疹や痒みなどを伴う病的な何かがあるものとして聴取記載しますね。