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痛風予防にクエン酸?尿をアルカリ化して尿酸結晶を防ぐ仕組み
公開. 更新. 投稿者:痛風/高尿酸血症.この記事は約4分47秒で読めます.
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痛風予防にクエン酸?尿をアルカリ化して尿酸結晶を防ぐ仕組み

「痛風予防にクエン酸がいいらしい」と聞いたことはありませんか?
疲労回復に効くサプリメントやスポーツドリンクの成分としておなじみのクエン酸ですが、実は痛風や高尿酸血症の治療にも関連しています。
痛風は尿酸が体内に過剰にたまることで起こる病気です。足の親指の付け根に激しい痛みが出る「痛風発作」は、多くの患者さんにとって忘れられない経験になるほど強烈です。その原因のひとつが「尿酸結晶」であり、尿の性質(pH)が大きく関わってきます。
尿酸と痛風の基本知識
尿酸とは?
尿酸は、体の細胞の中にあるプリン体が代謝されるときに生じる老廃物です。プリン体はDNAやエネルギー代謝に必須の物質なので、完全になくすことはできません。通常、血液中の尿酸は腎臓から尿として排泄されますが、排泄がうまくいかなかったり、産生が過剰になったりすると血中尿酸値が上昇します。
痛風の原因
血中の尿酸値が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と呼ばれます。
尿酸は水に溶けにくいため、血液中で濃度が上がると結晶となり、関節や腎臓に沈着します。これが炎症を引き起こし、強烈な関節痛=痛風発作が起こるのです。
尿のpHと尿酸の溶解度
尿酸は酸性の環境ではさらに溶けにくくなります。
・尿pH 5.0 → 尿酸溶解度 約15mg/dL
・尿pH 7.0 → 尿酸溶解度 約200mg/dL
つまり、尿が酸性に傾くほど尿酸は結晶化しやすく、逆に弱アルカリ性に近づくと尿酸が溶けやすくなるのです。
高尿酸血症・痛風の患者さんの多くは「酸性尿」傾向にあります。したがって、尿を弱アルカリ性に保つことが尿酸排泄を促進し、結晶化を防ぐ重要な鍵になります。
クエン酸がなぜ効くのか?
「酸なのにアルカリ化する」不思議
クエン酸は名前の通り酸性の物質です。「酸を摂って尿をアルカリ化するなんて矛盾しているのでは?」と思う方も多いでしょう。
しかし、クエン酸は体内で代謝される過程でナトリウムやカリウムの塩として利用され、最終的に重炭酸イオンを生み出します。これが血液や尿をアルカリ性に近づける作用を持つのです。
医療で使われるクエン酸製剤
代表的なのがウラリット®(クエン酸カリウム・ナトリウム製剤)です。
痛風や尿酸結石の治療で用いられ、尿をアルカリ化することで尿酸排泄を助け、再発を防ぎます。
適切な尿pHの目標値
目標範囲:pH 6.2~6.8
この範囲なら尿酸がよく溶け、しかも他の結石(リン酸カルシウム結石など)のリスクも少なく済みます。
pHが7.0を超えると逆にリン酸塩結石ができやすくなるため、アルカリ化しすぎも禁物です。
尿酸値を下げるための生活習慣
① 十分な水分摂取
・1日2L以上の尿量を確保することが理想。
・特に夜間の濃縮尿を防ぐために夕方~寝る前に水分補給を意識。
・水・麦茶・ノンカフェイン飲料が基本。清涼飲料やジュースは糖分過多で逆効果。
② 食事による尿アルカリ化
・アルカリ化する食品:海藻類、大豆、ほうれん草、干ししいたけ、野菜・果物全般
・酸性化する食品:肉類、魚介類(特にカツオ・サバ)、卵
ただし、注意点もあります。
・干ししいたけはプリン体が多い
・ほうれん草はシュウ酸が多く、カルシウムと一緒に摂らないと結石リスクが高まる
そのため、野菜・果物をバランスよく摂りつつ、カルシウム源も組み合わせるのが望ましいです。
③ プリン体の摂取制限
痛風予防といえば「プリン体を減らす」ことがよく言われます。
・レバー、白子、ビールなどはプリン体が豊富
・ただし最近は「プリン体の量よりもカロリー過多・肥満」がより大きな要因とされています
④ 尿pHの自己測定
尿試験紙で簡単にチェックできます。
・起床時の尿pH(空腹時の影響が少ない)
・食前や食後3時間後も測定すると日内変動が把握できる
pHが6.0未満の状態が続く場合は、薬による尿アルカリ化療法の検討が必要です。
尿アルカリ化薬の適応
食事療法をしても尿pHが上がらない場合、薬の出番です。
・尿pH 5.5未満が続く場合
・尿路結石の既往がある場合
このようなケースでは、クエン酸製剤(ウラリット®など)が積極的に使われます。
痛風予防のための実践ポイントまとめ
・毎日2L以上の尿を出す(水分補給をこまめに)
・尿pH 6.2~6.8を維持(食事+必要なら薬)
・バランスのよい食生活(野菜・果物を増やし、肉・魚は摂りすぎない)
・アルコール・甘い飲料は控える
・定期的に尿酸値と尿pHを測定
まとめ
クエン酸は単なる疲労回復成分ではなく、尿をアルカリ化して尿酸を溶けやすくし、痛風予防につながる重要な役割を持っています。
「酸なのにアルカリ化する」という一見不思議な作用は、体内の代謝を通して生まれるものです。
日常生活では水分摂取と食事管理で尿環境を整えることが基本。うまくコントロールできなければ、医師の判断でクエン酸製剤が用いられます。
痛風は一度発作を経験すると生活の質を大きく損ないます。しかし、正しい知識と工夫で予防が可能です。尿酸値だけでなく「尿の性質」にも目を向け、日々の生活にクエン酸をうまく取り入れていきましょう。