記事
コミナティはmRNAワクチン?
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症. タグ:新型コロナ. この記事は約4分24秒で読めます.
3,269 ビュー. カテゴリ:mRNAワクチン
新型コロナウイルス感染症の切り札、コミナティについて、患者から聞かれることもあるかと思うので勉強しておく。
まず添付文書を読んで気になる点を、
接種不適当者(予防接種を受けることが適当でない者)
・明らかな発熱を呈している者
・重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
・本剤の成分に対し重度の過敏症の既往歴のある者
・上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
風邪をひいていたり、発熱があったり、免疫抑制剤を飲んでいる人は、新型コロナワクチンを接種すると、新型コロナに感染する・・・というわけではなく、ワクチンの効果があまり出ない可能性がある。
ワクチンとは何か?
まずワクチンとは何か?について、わかっているようでわかっていない人も多いので説明する。
ワクチンとは、身体の免疫を反応させて、病原体の攻撃に備えさせる医薬品のことを言います。
身体の免疫反応には2つあり、液性免疫(主にB細胞・抗体)と細胞性免疫(主にT細胞)があります。
私が学生の頃学んだときは、ワクチンは大きく「生ワクチン」「不活化ワクチン」「トキソイド」に分けられると教わりましたが、コミナティはmRNAワクチンという新しい分類のワクチンになります。
ワクチン | 例 | 説明 |
---|---|---|
生ワクチン | BCG、麻しん・風しん(MR)混合ワクチン、水疱瘡ワクチン、おたふくかぜワクチン、ロタウイルスワクチン | 生ワクチンは生きた細菌やウイルスの毒性を弱めたもので、これを接種することによってその病気にかかった場合と同じように抵抗力(免疫)ができます。 |
不活化ワクチン | ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオワクチン四種混合ワクチン(DPT-IPV)、ジフテリア・百日せき・破傷風三種混合ワクチン(DPT)、ジフテリア・破傷風二種混合ワクチン(DT)、日本脳炎ワクチン、インフルエンザHAワクチン、ヒブワクチン(インフルエンザ桿菌b型ワクチン)、小児用13価肺炎球菌ワクチン、子宮頸がんワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、不活化ポリオワクチン | 不活化ワクチンは、細菌やウイルスを殺し抵抗力(免疫)をつくるのに必要な成分を取り出して毒性をなくして作ったものです。 |
トキソイド | ジフテリア、破傷風 | 細菌の産生する毒素(トキシン)を取り出し、免疫を作る能力は持っているが毒性は無いようにしたものです。 |
サブユニットワクチン | シングリックス(帯状疱疹ワクチン) | ウイルス表面タンパクの一部を抗原とした組換えワクチンで、生ワクチンではない |
ベクターワクチン | エボラウイルスワクチン、新型コロナワクチン(アストラゼネカ、ジョンソンアンドジョンソン) | ヒトに対して病原性のない、または弱毒性のウイルスベクター(運び手)に抗原たんぱく質の遺伝子を組み込んだ、組み換えウイルスを投与するワクチン |
DNAワクチン | 新型コロナワクチン(アンジェス) | 病原体を構成する成分の設計図であるDNAをワクチンにしたもの。 |
mRNAワクチン | 新型コロナワクチン(ファイザー、モデルナ) | 抗原たんぱく質の塩基配列を作る情報を持ったmRNAのワクチン。 |
免疫力が落ちているときにワクチン接種すると、そのウイルスに感染するんじゃないかと誤解している人は多い。
生ワクチンの場合、その可能性もあるが、それ以外では感染する可能性はない。
特に今回の新型コロナワクチンは、mRNAという部品だけ使ったワクチンなので、感染することはあり得ない。
免疫力が落ちているときに予防接種を行うと、十分な免疫反応が行われず、抗体が産生されない可能性がある。すなわち、そのワクチンによる予防効果が十分発揮されない可能性があるということである。
十分発揮されないとはいえ、意味がないということではないので、免疫抑制剤を服用している患者にも接種は勧められる。
開発企業・企業体 | プラットフォーム | 接種回数 | 接種間隔 | 接種方法 | 保存 |
---|---|---|---|---|---|
ファイザー/バイオNテック | mRNA | 2回 | 21日 | 筋肉内投与 | -60~-90℃ |
モデルナ/米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID) | mRNA | 2回 | 28日 | 筋肉内投与 | -20℃ |
英オックスフォード/アストラゼネカ | ウイルスベクター | 2回 | 28日 | 筋肉内投与 | 2~8℃ |
副反応は?
新型コロナワクチンによる副反応としては、接種部の痛み、だるさ、頭痛、筋肉痛、寒気などがある。
今のところ重い副反応は見つかっていない。
近年のワクチンで副反応というか有害事象が目立ったものとして子宮頸がんワクチン「サーバリックス」がありますが、これは不活化ワクチンで、「アジュバント」というワクチン接種部位での免疫細胞を活発化する物質が含まれていました。アジュバントを含むことで異物として認識されやすくなるということです。
そのため有害事象との因果関係も取りざたされていますが、mRNAワクチンであるコミナティにはアジュバントは含まれていません。アジュバント忌避の方も安心して使用できます。
抗体依存性感染増強(ADE)
「抗体依存性感染増強」という聞き慣れない反応も、新型コロナワクチンで懸念されている。
抗体依存性感染増強(ADE)とは、ワクチンや過去の感染によって獲得した抗体がワクチンの対象となったウイルスに感染した時、もしくは過去のウイルスに似たようなウイルスに感染したときに、その抗体が生体にとって悪い作用を及ぼし、感染・炎症が重篤化してしまい、重症化をひきおこす現象のこと。
デング熱ワクチンやSARSワクチンで問題となった。
詳しい原因は不明で、中途半端な抗体ができたためともいわれています。
今のところ、新型コロナワクチンで報告されていないので、十分な量の抗体が作られているということかも知れません。
変異株にワクチンは効くのか?
インフルエンザのワクチンは毎年打たなければならないほど、変異スピードは速い。
それに比べて、新型コロナウイルスの変異スピードは今のところインフルエンザの50%程度といわれている。
新型コロナウイルスのタイプは基本的に1種類。
それに比べてインフルエンザウイルスのタイプは多い。インフルエンザウイルスは16種類のHAと9種類のNA(ノイラミニダーゼ)からできている。
新型コロナワクチンのターゲットはスパイクタンパク質(Sタンパク質)。
インフルエンザワクチンのターゲットは主にHA(ヘマグルチニン)。
南ア型(B.1.351)
B.1.351系統は別名「20H/501Y.V2」と呼ばれている。この変異株は、B.1.1.7系統といくつかの変異を共有している。B.1.351系統では、スパイク蛋白質に複数の変異(K417T、E484K、N501Yなど)がみられるが、英国で検出されたB.1.1.7系統とは異なり、69/70欠失は含まれない。
ブラジル型(P.1)
P.1系統は別名「20J/501Y.V3」と呼ばれている。P.1系統には、スパイク蛋白質受容体結合ドメインの3つの変異(K417T、E484K、N501Y)を含む、17の固有の変異がある。
イギリス型(B.1.1.7)
B.1.1.7系統は別名「20I/501Y.V1」または「Variant of Concern(VOC)202012/01」と呼ばれている。この変異株は、スパイク蛋白質受容体結合ドメインの501番目のアミノ酸に変異があり、そこではアスパラギン(N)がチロシン(Y)に置き換えられている。この変異の略名をN501Yと言う。この変異株には、他にもいくつかの変異(69/70欠失、P681H、ORF8ストップコドン)がある。
スパイクタンパクは1200以上のアミノ酸からなる大きなタンパクであり、変異株B1.1.7が変異を蓄積しているといっても、この巨大なタンパクのうち8箇所しか変異していない、ともいえる。
人間の免疫細胞(B細胞とT細胞)は、スパイクタンパクの様々な箇所に反応することがわかっているので、多少の変異があってもワクチンの効果が劇的に落ちるということは考えづらい。
ただし、変異株のスパイクタンパクにある変異がどれだけ免疫反応に影響するかはわかっていないので、今後の変異株に対するワクチンの効果を見ていく必要がある。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
1 件のコメント
いつも大変勉強になります。
ありがとうございます。