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セフェム系の調剤ミス
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤.この記事は約4分44秒で読めます.
3,806 ビュー. カテゴリ:セフェム系の一般名
最近多い調剤ミスに、一般名の勘違いというものがある。
一般名処方が広まり、その類の調剤ミスというのも増えている。
商品名は全く違うのに、一般名は似ているという薬がある。
そもそも一般名は薬効分類ごとに共通のステムを持っており、似た名称のものが多いので、自然と調剤ミスは増える。
一般名処方のデメリットです。
商品名 | 一般名 |
---|---|
ケフラール | セファクロル |
ケフレックス | セファレキシン |
フロモックス | セフカペン ピボキシル塩酸塩 |
メイアクト | セフジトレン ピボキシル |
セフゾン | セフジニル |
オラセフ | セフロキシム アキセチル |
パンスポリン | セフォチアム ヘキセチル塩酸塩 |
セフスパン | セフィキシム |
バナン | セフポドキシム プロキセチル |
トミロン | セフテラム ピボキシル |
接尾語よりも接頭語が似ているほうが間違えやすい。
代表例としてセフェム系の一般名を並べてみました。
この中でも、セファが共通するセファレキシン(ケフラール)とセファクロル(ケフレックス)、同じピボキシル基をもつセフカペンピボキシル塩酸塩(フロモックス)とセフジトレンピボキシル(メイアクト)が間違えやすい。
前回、(般)セフジトレンピボキシルが処方されてた患者が、今回、(般)セフカペンピボキシル塩酸塩に変更されてた、とか。惑わされないように。
セフェム系抗生物質
セファロスポリンは、β-ラクタム系抗生物質の一つの種類で、セファマイシン類やオキサセフェム類と共にセフェム系抗生物質と総称される。
ベータラクタム環(四員環ラクタム)にヘテロ六員環がつながった形をしている。
抗菌力・抗菌スペクトルの改善が重ねられてきたため、現在では多種多様なセフェム系抗生物質が販売使用されている。
消化管吸収は一般に良く、副作用が少ないため頻用される。その反面、耐性菌の出現が問題となっている。
セフェム系薬はペニシリン系薬と同じく、βラクタム系薬に属する薬剤の1つです。
作用機序もペニシリン系薬と同様に最近のペニシリン結合蛋白(PBP)に作用し、細胞壁の合成を阻害することで菌を死滅させます。
PBPには1や2、2a、2bなど多くの種類があり、細菌の種類によって産生するPBPの種類が異なります。
特に耐性菌として有名なMRSAはPBP2aを産生するため、βラクタム系薬はこのPBP2aに親和性がなく、効果を発揮することができません。
治療するためにはバンコマイシン(VCM)などの薬剤が必要となります。
つまり、同じような作用機序でも、それぞれのPBPに対する親和性の違いから、薬剤によって抗菌スペクトルが異なります。またPBPの違い以外にも、βラクタマーゼやポーリン孔透過性低下などによる耐性機構が存在します。数多くあるセフェム系薬ですが、世代ごとに抗菌スペクトルが大きく異なるのは、このような背景が複雑に絡み合っているからです。
ペニシリン系薬と同様にβラクタム系薬であるセフェムに関しても、時間依存性に殺菌作用を示します。
特に、MICを超えている時間が、投与サイクルの中で60~70%以上で最大殺菌作用を示すといわれています。
セフトリアキソンを除くほかのセフェム系薬の大半は半減期が1~2時間ですので、腎臓に問題がない場合は、通常1日3~4回で使用されます(ほとんどのセフェム系薬は腎排泄です)。
ペニシリン系薬と同様に即時型アレルギーが問題となりますが、ペニシリン系薬にアレルギーがある場合、セフェム系薬でも5~10%程度は交差アレルギーが認められるとされており、ペニシリンアレルギーの患者では注意が必要です。
第1世代
セフェム系薬は世代が若いほどグラム陽性菌に対する抗菌力が強く、世代が進むにつれてグラム陰性菌への抗菌力が強くなるといわれています。
第1世代はグラム陽性菌が得意なので、ターゲットとすべき原因菌は主にメチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)やレンサ球菌です。
ペニシリン系薬では、MSSAによるβラクタマーゼで分解されてしまいますが、セフェム系薬はMSSAによるβラクタマーゼには安定であるため抗菌活性を有しています。
第2世代
第2世代は第1世代に比べ、グラム陰性菌への抗菌活性が強くなっています。
βラクタマーゼに対して第1世代よりも安定であるため、大腸菌やクラブシエラ属に加え、インフルエンザ菌(BLNAR:β-lactamase negative ampicillin resistanceを除く)やモラクセラ菌などのグラム陽性菌に対しても抗菌活性があります。
第3世代
第3世代セフェムは第1、第2世代に比べ、グラム陰性菌に強くなっており、大腸菌、クレブシエラ属、インフルエンザ菌やモラクセラ菌はもちろん、エンテロバクターやシトロバクター、セラチアにも抗菌活性を持ちます。
ただし第3世代セフェムは、エンテロバクターやシトロバクター、セラチアがAmpC型βラクタマーゼを過剰産生している場合には、使用することができません。
第4世代
第4世代はグラム陽性菌に加え、SPACEを含むグラム陰性桿菌まで幅広く抗菌活性を持ちます。
また、AmpC型βラクタマーゼを過剰産生するグラム陰性に対しても抗菌活性がありますが、バクテロイデスなどの嫌気性菌に対しては抗菌活性がありません。
髄液への移行性もあり、髄膜炎に用いることもできます。
幅広い抗菌スペクトルを持つ半面、適正使用が特に求められる薬剤でもあるといえます。
使用される代表的な感染症は、緑膿菌を含むSPACEによる医療関連感染症や、発熱性好中球減少症などです。
したがって、これらの原因菌による感染症以外での使用は避けるべき薬剤であると考えられます。
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