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フロモックスでカルニチン欠乏症?― ピボキシル基含有抗菌薬と低血糖リスク
公開. 更新. 投稿者: 2,185 ビュー. カテゴリ:抗菌薬/感染症.この記事は約4分55秒で読めます.
目次
フロモックスでカルニチン欠乏症?― ピボキシル基含有抗菌薬と低血糖リスクを正しく理解する ―

「フロモックスを飲むとカルニチンが減るって本当?」
「小児に使って大丈夫なの?」
「低血糖になることがあると聞いて不安…」
ピボキシル基を有する抗菌薬について、薬剤師の間ではよく知られている一方、患者さんや保護者にはほとんど知られていない話題です。
この記事では、フロモックスを中心に、ピボキシル基とカルニチン欠乏症の関係を、基礎から臨床上の注意点まで勉強していきます。
ピボキシル基とは何か?
吸収を良くするための「工夫」
ピボキシル基は、医薬品の消化管吸収を高める目的で、活性成分に結合される官能基です。
特に抗菌薬では、
・有効成分そのものは吸収されにくい
・プロドラッグ化することで経口投与を可能にする
という目的で利用されています。
フロモックス(セフカペン ピボキシル)も、このプロドラッグ型抗菌薬の代表例です。
ピボキシル基含有抗菌薬の体内での運命
体内で何が起きている?
ピボキシル基を含む抗菌薬は、消化管から吸収される過程で
・活性成分
・ピバリン酸
に加水分解されます。
このうち、治療効果を示すのは活性成分ですが、問題となるのがピバリン酸です。
ピバリン酸とカルニチンの関係
カルニチン抱合による排泄
ピバリン酸は体内に蓄積されることなく、
・カルニチンと結合(カルニチン抱合)
・ピバロイルカルニチンとして尿中へ排泄
されます。
つまり、
ピボキシル基含有抗菌薬を服用すると、カルニチンが一緒に捨てられる
ということになります。
短期間であれば問題にならないことが多いものの、条件が重なると体内カルニチン量が著しく低下する可能性があります。
そもそもカルニチンとは?
カルニチンの役割
カルニチンは、
・長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ
・脂肪酸のβ酸化(分解)を可能にする
という、エネルギー代謝に不可欠な物質です。
空腹時のエネルギー供給に必須
空腹時や飢餓状態では、
・脂肪酸のβ酸化でエネルギーを産生
・そのエネルギーを使って糖新生を行う
ことで、血糖値が維持されます。
この過程でカルニチンは必須因子です。
カルニチンが欠乏するとどうなる?
脂肪が使えなくなる
カルニチンが不足すると、
・長鎖脂肪酸がミトコンドリア内に入れない
・β酸化が行われない
・NADHやATPの産生が低下
といった代謝障害が起こります。
結果として起こること
・糖新生が障害される
・血糖を維持できなくなる
・低血糖を起こす可能性
特に小児では、この影響が顕著に現れることがあります。
なぜ小児(特に乳幼児)は危険なのか?
カルニチンの貯蔵量が少ない
通常、カルニチンは
・肉類などの食事から摂取
・肝臓でリジン・メチオニンから合成
されるため、健康な成人では不足を心配する必要はほとんどありません。
しかし、乳幼児では
・体内カルニチン貯蔵量が少ない
・合成能力も未熟
・絶食・食事量低下が起こりやすい
という条件が重なります。
抗菌薬による低カルニチン血症
ピボキシル基含有抗菌薬の影響
ピボキシル基をもつ抗菌薬を服用すると、
・カルニチン排泄が亢進
・血清カルニチン濃度が低下
・低カルニチン血症
を来すことがあります。
この状態で、
・食事摂取量低下
・発熱・感染によるエネルギー需要増加
が重なると、低血糖発作につながる可能性があります。
低カルニチン血症による低血糖とは?
メカニズムの整理
・カルニチン欠乏
・脂肪酸β酸化ができない
・エネルギー産生が低下
・糖新生が行えない
・低血糖を発症
これは、空腹時低血糖として現れることが多いのが特徴です。
ピボキシル基を有する主な抗菌薬
以下の薬剤は、ピボキシル基を有する抗菌薬として知られています。
・セフカペン ピボキシル(フロモックス)
・セフテラム ピボキシル(トミロン)
・セフジトレン ピボキシル(メイアクト)
・テビペネム ピボキシル(オラペネム)
特に小児で使用頻度が高い薬剤が多いため、注意が必要です。
妊娠中の使用は大丈夫?
胎児への影響は?
妊娠中にピボキシル基含有抗菌薬を使用した場合、
・母体のカルニチン消費
・胎盤を介した影響
により、出生児で低カルニチン血症が認められた報告があります。
すべてのケースで問題になるわけではありませんが、
・長期投与
・妊娠後期
・他のリスク因子がある場合
には、慎重な判断が求められます。
では、フロモックスは使ってはいけない薬なのか?
答えは NO です。
正しく使えば有用な抗菌薬
・有効性が高い
・小児適応がある
・使用経験が豊富
というメリットがあります。
重要なのは、
・漫然と長期使用しない
・食欲不振・元気消失・嘔吐・低血糖症状に注意
・乳幼児では特に慎重に経過観察
することです。
薬剤師としてできること
・保護者に「念のための注意点」を伝える
・食事が取れているかを確認
・異変があれば早めに受診を勧める
「怖い薬」として伝えるのではなく、
リスクを理解したうえで安全に使うことが大切です。
まとめ
・フロモックスはピボキシル基含有抗菌薬
・体内でピバリン酸が生じ、カルニチンが消費される
・乳幼児では低カルニチン血症・低血糖のリスクがある
・しかし、正しく使えば有用で安全性の高い薬
・重要なのは「知って使う」こと




