2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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風邪に抗菌薬は効かない?

風邪に抗生物質は無意味?

風邪の原因はウイルスなので抗生物質は効かない、とよく言われます。

しかし、風邪の原因の全てがウイルスというわけではありません。
風邪の原因のほとんど(9割くらい)はウイルスですが、1割くらいは細菌性のものもあります。
上気道炎ではライノウイルスやコロナウイルス、RSウイルスなどのウイルスが多いですが、下気道炎では肺炎球菌、インフルエンザ菌など細菌性のものが多いです。

医師が細菌性の風邪を疑えば、「風邪に抗生物質」の処方もあります。
溶連菌による咽頭炎は抗生物質を処方しないと、後遺症を残すこともあります。

風邪の原因はウイルス

風邪の原因となるウイルスには、ライノウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルスなど、200以上あるといわれています。
ウイルスによって微妙に症状も異なりますが、病院を受診しても感染したウイルスを特定することはほぼ不可能なのです。

残念ながら、医師もどのウイルスによるかぜか、完全にかぜかどうか、本当のところ証明することはできないというのが現状です。
大学病院に依頼すればウイルスを特定できる可能性はあるのですが、自然に治るかぜにそこまでの時間とお金をかけることはできません。
症状から判断するしかないのです。

臨床病型主な原因ウイルス症状・所見
感冒ライノウイルス→成人に多い
コロナウイルス
RSウイルス→小児に多い
鼻汁
鼻閉
くしゃみ
インフルエンザインフルエンザウイルス発熱
頭痛
筋肉痛
全身倦怠感
咽頭炎症候群アデノウイルス
パラインフルエンザウイルス
咽頭痛
発熱
咽頭結膜熱(プール熱)アデノウイルス発熱
咽頭炎
結膜炎
ヘルパンギーナコクサッキーウイルスA群、B群
エコーウイルス
咽頭痛
咽頭粘膜の小水疱・潰瘍
クループ症候群パラインフルエンザウイルス
RSウイルス
アデノウイルス
吸気性喘鳴
犬吠様咳嗽
嗄声

細菌性かウイルス性か

細菌性の咽頭炎(A群溶連菌性咽頭炎)かウイルス性咽頭炎かを判断するコツとしては、ウイルス性に比べて細菌性はかなり強い咽頭痛(嚥下時痛)のことが多く、嚥下時の強い痛みで「食事で改善しない」という場合は細菌性を疑います。

ウイルス性の時は、咳嗽時に増強する咽頭~喉頭部の痛みや、起床時に強い咽頭痛、食事後に軽快する咽頭痛のことが多いといわれています。食事をとり始めると、最初は痛いのですが、いつの間にか痛みが気にならなくなるということも多いです。

風邪に抗菌薬は出さない?

一般的に、軽い風邪程度で抗生物質は必要無い。と言われます。

抗菌剤の必要無い段階で受診される人も多くいます。
ひどくなったらもう一度受診してください、と言われることも。

しかし、忙しい現代人が時間を作って受診できる日というのは限られている。
今は抗菌薬の必要な段階ではないけれど、悪化したときのために抗菌薬を処方する、というのは、医師の優しさでもあろうかと思う。

耐性菌は増えちゃうけど。

2008年に出された「臨床に直結する感染症診療マニュアル」には、「抗菌薬による風邪症状の改善や治癒に関して効果を示すエビデンスはない」と示され、「不適切な抗菌薬の使用は避ける必要がある」と記述されています。

しかしながら、咳、鼻水、口頭痛などの症状を伴う風邪に、細菌の二次感染予防を目的として、マクロライド系抗菌薬などを処方する医師も少なくありません。
また、症状が口頭炎、扁桃炎でも、ウイルス感染のほかにA群β溶連菌などの細菌感染の場合があります。
こういった場合には、抗菌薬が処方されます。

抗生物質を安易に使ってはいけない

細菌が抗菌薬に暴露されると、さまざまなかたちでMIC(最小発育阻止濃度)の上昇した株が出現することが知られている。

その分類として、①ミューテーション(細菌の遺伝子は自己複製過程において突然変異を起こすことがあるが、抗菌薬を使用することで抗菌薬の耐性化に関わる変異遺伝子が生じる場合)、②アダプテーション(遺伝子変異は起こさないが抗菌薬に馴れが生じ複製するにつれMICが上昇する現象、③セレクション(ごくわずかに存在したMICの高い株のみが抗菌薬投与によって生き残る場合)などがある。

抗菌薬に暴露(抗菌薬選択圧)される量が増加することで、耐性菌が増加することが知られており、不必要な抗菌薬を使用しないという選択が重要である。
一般的な問題としてあげられるのが、風邪症候群における抗菌薬使用であろう。
風邪で受診した小児患者の保護者が、熱のあるときに抗菌薬を希望する率は、「いつも」、「ときどき」をあわせると76%(2006年調査)にも及ぶという背景がある。

抗菌薬を十分量使うこと

外来治療における重要な起因菌の耐性化においてPK-PDの問題が指摘されている細菌に、インフルエンザ桿菌で認められる耐性菌BLNARがある。

肺炎球菌のBLNAR株は欧米ではほとんど検出されていないが、わが国では1998年(3.2%)、1999年(6.6%)、2000年(13.5%)と急増したことが報告されている。

インフルエンザ桿菌は抗菌薬が消失すると細胞壁の合成阻害によって変形した菌体が復元し、溶菌しにくいことが知られているが、わが国で使用頻度の高いセフポドキシムやセファクロル、セフジニルなどの血中濃度は、現在推奨されているPK-PDパラメータに不十分であることが要因となっていると示唆されている。
抗菌薬は十分なPK-PDパラメータが確保されることで有効性と耐性防止が期待されるものであり、不適切な投与によって残存した菌が耐性菌を伝播させることとなる。

抗菌薬を十分な期間使う

抗菌薬投与中のコンプライアンスは1日の投与回数ならびに経過日数が多くなるに伴い低下することが知られているが、治癒率の向上ならびに耐性化抑止における服薬コンプライアンスの向上は重要な役割を果たしている。

前々から言われていることですね。
安易に抗生物質を使ってはいけないというのは。

小児科や耳鼻科の医師は結構気を使っていますが、内科医はまだ安易に使っているかな。
安易に使うな、というよりも、選んで使え、というのが正しいかも。
なんでもかんでもニューキノロンではなく、ペニシリン系から始めるとか。

溶連菌感染症に抗菌薬は必要

溶連菌感染症は、広義にはグラム陽性球菌のうちレンサ球菌属によって惹き起こされる感染症すべてを指します。

しかしながら、レンサ球菌属のうち特に感染症を起こす頻度が高く、一般によく知られているのは化膿レンサ球菌であるため、通常単に「溶連菌」といえば化膿レンサ球菌の事を指し、「溶連菌感染症」といえば化膿レンサ球菌による感染症のことを指す。

化膿レンサ球菌には他に「A群レンサ球菌」という別名もある。

のどからくる風邪には抗菌剤が必要?

急性咽頭炎は感染性、非感染性要因による咽頭の急性炎症で、喉の痛み、38℃以上の発熱などを主症状とします。

感染性要因として多いのはウイルス性であるが、細菌性ではA群β溶血性連鎖球菌(GAS、溶連菌)によるものが主体であり、かつ注意を要する。

GASの分離頻度は、5歳をピークに4~9歳の小児で最も高いとされ、GASによる急性咽頭炎も学童期に好発するといわれる。

自然治癒するウイルス性咽頭炎に対し、GAS感染症はその後、頻度は高くないものの急性リウマチ熱(ARF)や急性糸球体腎炎を来し得ることが知られており、それらの発症予防のため抗菌薬を投与する必要がある。

ただし、投与が推奨されているのは迅速抗原検査または培養検査でGASが検出された患者である。GAS咽頭炎発症から9日以内の抗菌薬開始で急性リウマチ熱予防効果が認められている。

溶連菌感染症の治療

溶連菌感染症の治療はペニシリン系の抗生物質(サワシリンなど)を10日間内服します。

治療後24時間後には改善し、感染性はなくなるとされていますが、合併症の予防のために10日以上のむことがすすめられています。

アモキシシリンの場合、ガイドラインでは30~50mg/kg/日を分2または分3で投与することが推奨されている。添付文書上は1日3~4回投与だが、GAS咽頭炎の治療においては、1日2回の内服でも効果が認められている。理由としては、PAE(post-antibiotic effect、最小発育阻止濃度MICの値より低い濃度になっても抗菌薬の作用が持続する効果)を有することなどが考えられる。

この治療によりリウマチ熱は予防するとされていますが、腎炎を予防するというエビデンスは今のところないようです。

溶連菌は大人にもうつる?

溶連菌感染症は子供に多い病気ですが、大人にもうつります。

比較的強い感染力ですが、はしかやインフルエンザほど強くはありません。

抗生物質を飲めば、1日2日で感染力は無くなるので、そう怖がることは無いでしょう。

溶連菌の迅速診断は正しいか?

溶連菌は迅速診断できるキットがあるので、疑いがあれば迅速診断します。

しかし、溶連菌であっても陰性と出るケース(偽陰性)があり、5人に1人くらいの割合だそうです。

しかも症状がないにもかかわらず咽頭に溶連菌を持つ保菌者が、10~20%程度いるそうなので、溶連菌が出たからといって治療が必要かどうかは医師の判断になります。

そのため、素人目には溶連菌かも知れないと思って受診しても、検査もしてくれないということがあります。

検査をしない医師は怠慢ではなく、症状から治療の必要性を判断できる経験のある医師だと思います。

苺舌

溶連菌感染症に特徴的な症状の一つに苺舌というのがあります。

初期には舌は白い苔でおおわれ、充血し、苺にミルクをかけたような見た目となる。数日すると白い苔がとれて赤いブツブツが突出し、あたかも苺のように見えるようになる。

溶連菌感染症の約半数に苺舌の症状が現れます。

溶連菌以外に川崎病などでも、苺舌の症状は現れます。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

1 件のコメント

  • 匿名 のコメント
         

    喉の溶連菌は抗生物質がすぐに効いて治りがよいイメージですが、皮膚などから侵入して劇症型溶血性レンサ球菌感染症となると、人食いバクテリアと呼ばれるように急に恐ろしい病気に変わりますね。

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