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タグリッソとイレッサの違いは?
公開. 投稿者:喘息/COPD/喫煙.この記事は約2分2秒で読めます.
2,514 ビュー. カテゴリ:EGFRチロシンキナーゼ阻害薬
苦手な抗癌剤の勉強。分子標的治療薬。
肺がんの治療を進めていく上で、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異検査は重要な位置を占めている。ガイドライン上では、病期がⅣ期の非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)でEGFR遺伝子変異陽性の患者では、1次治療としてEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の使用が推奨されている。現在、非小細胞肺がんに適応のあるEGFR-TKIには、イレッサ(ゲフィチニブ)、タルセバ(エルロチニブ)、ジオトリフ(アファチニブ)、タグリッソ(オシメルチニブ)の4剤がある。
この既存のEGFR-TKIに対して耐性となった非小細胞肺がん患者の約50~60%でEGFR T790M変異が確認されている。この変異は、EGFR遺伝子エクソン20の790番目のスレオニン(T)がメチオニン(M)に置換されることで起こる。タグリッソ(オシメルチニブ)は、このEGFR T790M変異およびEGFR活性化変異を選択的に阻害する新規のEGFR-TKIとして開発された。
既存のEGFR-TKIの基本構造はEGFRの分子ポケットへの結合を考慮した「4-アニリノキナゾリン骨格」となっており、EGFR T790M変異が発現したEGFRの分子ポケットには物理的・電気的に入ることができない。
タグリッソは、既存のEGFR-TKIとは異なる「モノアニリノピリミジン骨格」を基本構造としてもつことで、T790M変異EGFRチロシンキナーゼにも阻害作用をもつように設計されている。
世代 | 商品名 | 一般名 | 薬価収載 | 阻害作用 |
---|---|---|---|---|
第1世代 | イレッサ | ゲフィチニブ | 2002年 | 可逆的 |
タルセバ | エルロチニブ塩酸塩 | 2007年 | 可逆的 | |
第2世代 | ジオトリフ | アファチニブマレイン酸塩 | 2014年 | 不可逆的 |
第3世代 | タグリッソ | オシメルチニブメシル酸塩 | 2016年 | 不可逆的 |
EGFRは膜貫通型受容体チロシンキナーゼであり、このチロシンキナーゼ領域のリン酸化が、がんの増殖・分化に関わるシグナル伝達に関与している。タグリッソはEGFR活性化変異およびEGFR T790M変異を有するEGFRチロシンキナーゼに対して、選択的かつ強力な不可逆的阻害作用を有することにより腫瘍細胞の増殖を抑制すると考えられている。また、野生型EGFRに対する阻害作用は弱いことが示されている。
肺がん
肺がんは、日本人のがんによる死亡原因の第1位である。喫煙との関係が非常に深いがんではあるが、喫煙しない人でも発症することがある。
肺がんは、小細胞がんと非小細胞肺がんの2つに大きく分けられる。小細胞肺がんは、増殖が速く、脳・リンパ節・肝臓・副腎・骨などに転移しやすく悪性度の高いがんであるが、非小細胞肺がんより抗癌剤や放射線治療の効果が得られやすいといわれている。非小細胞肺がんは、小細胞がんではない肺がんの総称であり、多くの異なる組織型がある。そのため、発生しやすい部位、進行形式と速度、症状などはそれぞれ異なる。化学療法や法写真治療で効果が得られにくく、手術を中心とした治療が行われる。
肺がんの分類 | 組織分類 | 好発部位 | 特徴 |
---|---|---|---|
非小細胞肺がん(約80~85%) | 腺がん | 肺野部 | ・女性の肺がんで多い ・症状が出にくい |
扁平上皮がん | 肺門部 | 喫煙との関連が大きい | |
大細胞がん | 肺野部 | 増殖が速い | |
小細胞肺がん(約15~20%) | 小細胞がん | 肺門部 | ・喫煙との関連が大きい ・転移しやすい |
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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