2024年3月28日更新.2,749記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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体重によって投与量の違う薬

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体重と用量

体重によって投与量の違う薬がある。

ってほとんどの薬がそうですが、添付文書上ではっきりと明示されている薬は少ない。

「体重当たり〇mg」という記載があっても、小児に使う場合についての記載が多い。

だから、体重100㎏の男性に出されている薬の効果と、体重50㎏の女性に出されている薬の用量が適正かどうか、といったことについて、あまり気にかけたことがない。そもそも患者に体重を聴取していないことも多い。

しかし、薬によっては成人においても体重ごとに投与量が決められている薬がある。

その場合は必ず患者に体重を聴取しなければならない。

ゾフルーザ

抗インフルエンザ薬ゾフルーザは2018年に発売されたばかりなので、ほとんどの薬剤師は知っているだろう。成人用量は以下の通り。

通常,成人及び12歳以上の小児には,20mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして40mg)を単回経口投与する。ただし,体重80kg以上の患者には20mg錠4錠又は顆粒8包(バロキサビル マルボキシルとして80mg)を単回経口投与する。

体重80kg以上かどうか、確認する必要がある。

見た目ではっきりわかる人はいいが、微妙なラインの女性だと聞きづらい。

イノベロン

抗てんかん薬のイノベロン(ルフィナミド)は維持量が体重によって異なる。

通常、ルフィナミドとして、最初の2日間は1日400mgを1日2回に分けて食後に経口投与し、その後は2日ごとに1日用量として400mg以下ずつ漸増する。維持用量は体重30.1~50.0kgの患者には1日1800mg、体重50.1~70.0kgの患者には1日2400mg、体重70.1kg以上の患者には1日3200mgとし、1日2回に分けて食後に経口投与する。なお、症状により維持用量を超えない範囲で適宜増減するが、増量は2日以上の間隔をあけて1日用量として400mg以下ずつ行うこと。

体重30.1~50.0kg、体重50.1~70.0kg、体重70.1kg以上の患者と3段階で維持量が分けられている。

コンバントリン

抗寄生虫薬のコンバントリン錠の用量は以下の通り。

通常体重1kg当りピランテルとして10mgを1回経口投与する。

体重50kgを超えたら5錠(500㎎)が上限なので、多くの成人では5錠飲む形だろう。女性の場合は50kg切っているスリムな人もいるので注意。

ブイフェンド

抗真菌薬ブイフェンドでは、体重40kg以上と40kg未満で用量が分かれている。

成人(体重40kg以上)
通常、ボリコナゾールとして初日は1回300mgを1日2回、2日目以降は1回150mg又は1回200mgを1日2回食間に経口投与する。なお、患者の状態に応じて、又は効果不十分の場合には、増量できるが、初日投与量の上限は1回400mg1日2回、2日目以降投与量の上限は1回300mg1日2回までとする。

成人(体重40kg未満)
通常、ボリコナゾールとして初日は1回150mgを1日2回、2日目以降は1回100mgを1日2回食間に経口投与する。なお、患者の状態に応じて、又は効果不十分の場合には2日目以降の投与量を1回150mg1日2回まで増量できる。

高齢者の場合、40kgを切っている方もいるので注意。

プラケニル

エリテマトーデスの治療薬プラケニルの用法用量は以下の通り。

通常、ヒドロキシクロロキン硫酸塩として200mg又は400mgを1日1回食後に経口投与する。
ただし、1日の投与量はブローカ式桂変法により求められる以下の理想体重に基づく用量とする。
 女性患者の理想体重(kg)=(身長(cm)−100)×0.85
 男性患者の理想体重(kg)=(身長(cm)−100)×0.9
(1)理想体重が31kg以上46kg未満の場合、1日1回1錠(200mg)を経口投与する。
(2)理想体重が46kg以上62kg未満の場合、1日1回1錠(200mg)と1日1回2錠(400mg)を1日おきに経口投与する。
(3)理想体重が62kg以上の場合、1日1回2錠(400mg)を経口投与する。

自分史上最も難解な用量の記載である。そもそも理想体重ってどゆこと?

「理想体重」とは、身長から特定の計算式で算出される体重のひとつで、必ずしも患者にとっての「理想的な体重」を指し示すものではない、らしい。

自分の身長は165cmくらいだから、理想体重は(165 −100)×0.9 =58.5㎏が理想体重かぁ。。。

体重での用量設定だけど、体重が聞き取れなくても身長だけ聞き取れば使用量がわかるという。。。んー、難解。

メファキン、リアメット

抗マラリア薬のメファキンとリアメットについてまとめてみてみる。

メファキンの用量は以下の通り。

治療
通常成人には、体重に応じメフロキン塩酸塩として、825mg(3錠)〜1,100mg(4錠)を2回に分割して経口投与する。
 30kg以上45kg未満:初回550mg(2錠)、6〜8時間後に275mg(1錠)を経口投与する。
 45kg以上:初回550mg(2錠)、6〜8時間後に550mg(2錠)を経口投与する。

感染地(メフロキン耐性のマラリア流行地域)及び症状によって、成人には体重に応じメフロキン塩酸塩として、1,100mg(4錠)〜1,650mg(6錠)を2〜3回に分割して経口投与する。
 30kg以上45kg未満:初回825mg(3錠)、6〜8時間後に275mg(1錠)を経口投与する。
 45kg以上60kg未満:初回825mg(3錠)、6〜8時間後に550mg(2錠)を経口投与する。
 60kg以上:初回825mg(3錠)、6〜8時間後に550mg(2錠)、さらに6〜8時間後に275mg(1錠)を経口投与する。

予防
通常成人には、体重に応じメフロキン塩酸塩として、206.25mg(3/4錠)〜275mg(1錠)を、マラリア流行地域到着1週間前より開始し、1週間間隔(同じ曜日)で経口投与する。流行地域を離れた後4週間は経口投与する。なお、流行地域での滞在が短い場合であっても、同様に流行地域を離れた後4週間は経口投与する。
 30kg以上45kg未満:206.25mg(3/4錠)
 45kg以上:275mg(1錠)

リアメット配合錠の用法用量は以下の通り。

通常、体重に応じて1回1錠〜4錠(アルテメテル/ルメファントリンとして20mg/120mg〜80mg/480mg)を初回、初回投与後8時間、その後は朝夕1日2回2日間(計6回)、食直後に経口投与する。
体重別の1回投与量は、下記のとおりである。5kg以上15kg未満:20mg/120mg(1錠)
15kg以上25kg未満:40mg/240mg(2錠)
25kg以上35kg未満:60mg/360mg(3錠)
35kg以上:80mg/480mg(4錠)

レンビマ

抗悪性腫瘍薬レンビマの「切除不能な肝細胞癌」に対する用法用量は以下の通り。

通常、成人には体重にあわせてレンバチニブとして体重60kg以上の場合は12mg、体重60kg未満の場合は8mgを1日1回、経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

正直言って、レンビマの用量設定が一番シビアに感じる。

なぜなら、体重が変化する可能性が高い、癌患者に投与する薬だからである。

抗ウイルス薬や抗寄生虫薬といった、単発で処方されるような薬は、その時の体重を確認して、1回投与すれば終了というものが多い。

しかし、連用する薬は初回に体重を聞き取っただけでは終わらないわけだ。

しかも病態の悪化とともに、体重が落ちていく、60kg以上体重のあった患者が60kgを切ることはざらにある。

なかなか「体重何キロでしたか?」と聞いて覚えていない患者もいたり、怪訝そうな顔をされることも多いですが、上記のような薬が処方されている患者においては「体重によって使う量が違うので教えてください」と堂々と聞けるので、必ず聞くようにする。

体重と用量

薬は体重によって使用量が異なる。

当たりまえのようで、小児では当たり前のことですが、大人では体重で使用量を変えているケースは多くない。

体重40kgくらいのお婆ちゃんも、体重80kgくらいの大きめの男性もスタートは同じ用量だったりする。何回か使って、効果の程度で用量を調整したりするが。

なので、薬剤師も新患アンケートに記載されている体重をよく見ていなかったり、記載されていなくても気にしなかったり、しばらく前に聞き取った体重を更新していなかったりする。

ただし、薬の中には、体重によって用量が決められている薬があるので注意が必要である。

最近ではゾフルーザが体重80kg以上と80kg未満の患者で異なることが注意喚起されている。

通常,成人及び12歳以上の小児には,20mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして40mg)を単回経口投与する。ただし,体重80kg以上の患者には20mg錠4錠又は顆粒8包(バロキサビル マルボキシルとして80mg)を単回経口投与する。

疥癬治療薬ストロメクトールは、大人も体重によって細かく添付文書に使用量が記載されている。

患者体重毎の1回当たりの投与量
体重(kg):15-24
3mg錠数:1錠
体重(kg):25-35
3mg錠数:2錠
体重(kg):36-50
3mg錠数:3錠
体重(kg):51-65
3mg錠数:4錠
体重(kg):66-79
3mg錠数:5錠
体重(kg):≧80
3mg錠数:約200μg/kg

経口FXa阻害剤のリクシアナも、体重によって用量が異なる。

通常、成人には、エドキサバンとして以下の用量を1日1回経口投与する。
体重60kg以下:30mg
体重60kg超 :60mg なお、腎機能、併用薬に応じて1日1回30mgに減量する。

非弁膜性心房細動に対するリクシアナ(エドキサバン)の用量は、体重60kg以下の場合は30mg/日、60kg超の場合は60mg/日である。ただし、体重60kg超であっても、腎機能が低下した患者では減量が必要である。クレアチニンクリアランスが30mL/分以上50mL分以下の場合は30mg/日に減量、同15mL/分以上30mL/分未満は慎重投与、同15mL/分未満は禁忌である。また、エドキサバンはP糖蛋白の基質であり、P糖蛋白阻害作用を持つ薬剤の影響を受ける点にも注意が必要である。

添付文書の併用注意欄には、ワソラン、エリスロシン、ネオーラル、ジスロマック、クラリス、イトリゾール、ヘルベッサー、アンカロンなど多数の薬剤が記載されている。これらの薬剤と併用する場合、エドキサバンを30mg/日に減量する。

体重を教えたくない患者

新患アンケートで体重の項目を書かない女性がよくいる。

よくわからないが、女性というのはそういうものなのだろう。

病院で書いてきたから、薬局で書く必要はない、ということなのかも知れない。

しかし、薬の用量設定に体重は必要となるものであり、処方箋に記載されている用量が正しいかどうか確認するために、体重を聞き取る必要がある。

とはいっても、ほとんどの内服薬では、小児については体重あたりの用量設定がありますが、成人については決められた用量で、体重による用量の違いは設定されていないものが多い。体重よりも腎機能や高齢者などで用量の違いが設けられているものが多い。

体重50kgの女性と体重100kgの男性に同じ用量の薬で聞くのか、と問われると疑問にも思いますが。まったく同じようには効かないのかも知れないけれど、だいたい同じように効くように設定されています、としか言えない。

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薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

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本の紹介

yakuzaic
yakuzaic/著
2023年09月14日発売

プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
座右の銘:習うより慣れろ。学ぶより真似ろ。
SNS:X(旧ツイッター)
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