記事
希少疾病用医薬品
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤.この記事は約3分30秒で読めます.
2,783 ビュー. カテゴリ:希少疾病
希少疾病とは、読んで字のごとく、希少な疾病、患者が少ない病気のことである。
希少疾病の概念は国や地域によって異なるが、日本では患者数が全国で5万人未満の疾患をいう。
その希少疾病に使われる薬を、希少疾病用医薬品、オーファンドラッグという。
比較的患者数の多い、潰瘍性大腸炎・クローン病に対するペンタサも入っているので、希少の程度には差がある。でも、アサコールやリアルダは希少疾病用医薬品ではない。
脊髄小脳変性症に対するセレジスト、特発性肺線維症に対するピレスパ、肺動脈性肺高血圧症に対するトラクリア、春季カタルに対するタリムス、多発性硬化症に対するイムセラなど処方を見たことのある薬も並んでいる。
それぞれの疾患の患者数としては、以下の通り。
潰瘍性大腸炎:人口10万人あたり100人程度、日本に166,060人
クローン病:人口10万人あたり27人程度、日本に約4万人
脊髄症小脳変性症:10 万人に約 4 〜 5 人、日本に約2万人程度
特発性肺線維症:10万人あたり10~20人、日本に1万3,000~1万5,000人
肺動脈性肺高血圧症:日本に3700人
春季カタル:日本に約8700人
多発性硬化症:日本に約19,000人
ちなみに日本の人口を約1億人とすると、10万人に1人だと、日本に1000人くらいの患者がいることになる。
潰瘍性大腸炎は希少疾病ではないだろう。
さて、自分が気になるのは、希少の中の希少、なんだその病名?という効能効果を持つオーファンドラッグです。
クロウ・深瀬(POEMS)症候群
サレド(サリドマイド)の適応に、クロウ・深瀬症候群という病名があります。
全国の推定患者数は340人ほどの極希少疾病です。
クロウ・深瀬症候群とは、骨髄の中にある形質細胞という細胞の異常によっておこる病気で、POEMS症候群とよばれることもあります。
POEMSは、
Polyneuropathy(多発性末梢神経障害)
Olganomegaly(臓器腫大)
Endocrinopathy(内分泌障害)
M-protein(M蛋白)
Skin change(皮膚変化)
という、この病気の特徴を表しています。
異常な形質細胞が増えると、異常なたんぱく質(血管内皮増殖因子、M蛋白)が産生され、様々な症状が出てきます。
ライソゾーム病
細胞の中にある小器官で、細胞内でいらなくなったタンパク質、脂肪、糖などを壊す役割をするライソゾームという小器官があります。
そのライソゾームの中では、様々な酵素が働いていますが、酵素の働きが悪いと、本来酵素で分解される物質が細胞内に過剰にたまり、細胞の働きを障害します。
これがライソゾーム病です。10万人~20万人に1人の患者がいます。
ライソゾーム病は、働きの悪い酵素の種類によって、細かく分類されています。
以下、病名と適応のある医薬品です。
ファブリー病:ガラフォルドカプセル
ゴーシェ病:サデルガ
ニーマン・ピック病C型:ブレーザベス
働きの悪い酵素は先天的に欠損しているので、先天性疾患です。
ハンチントン病
ハンチントン病とは 自分の意志に反して手足、顔面をピクつかせたり動かしてしまう舞踏運動と認知機能障害、精神症状(幻覚、妄想、抑うつなど)をきたす遺伝性、進行性の神経疾患です。
自分の意思とは関係なく、体が勝手に動いてしまう不随意運動を伴う疾患としては、パーキンソン病がありますが、パーキンソン病は運動が減少し、ハンチントン病は運動が増加する病気です。
ハンチントン病の患者数は約900人で、治療薬として、コレアジンがあります。
ドラベ症候群
てんかんの病型も複雑で、細かい。
あまり聞かない病名として、レノックス・ガストー症候群とか、ウエスト症候群とか、ドラベ症候群とかがある。
その中のドラベ症候群に適応を持つ薬が、ディアコミット。
適応症は、「クロバザム及びバルプロ酸ナトリウムで十分な効果が認められないDravet症候群患者における間代発作又は強直間代発作に対するクロバザム及びバルプロ酸ナトリウムとの併用療法」となっています。
Dravet症候群がドラベ症候群。なぜアルファベット記載なのかはわかりませんが。
トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー
これまた長ったらしい病名の「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」という病気があります。
適応をもつ薬は、ビンダケルです。
患者数は、約130人。
有効な治療を行わなければ、発症から平均10年で死亡に至ります。
体内の臓器や組織に「アミロイド」と呼ばれる異常なタンパク質凝集体が沈着することで発症する遺伝性疾患です。
しびれや感覚障害、吐き気や下痢、視力の低下など全身にさまざまな症状が現れます。
これら希少疾病に使われる薬の処方箋に遭遇した薬剤師は、希少薬剤師なので、ある意味ラッキーです。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。