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男性がなりやすい病気、女性がなりやすい病気
公開. 更新. 投稿者: 5,559 ビュー. カテゴリ:服薬指導/薬歴/検査.この記事は約8分0秒で読めます.
男性がなりやすい病気、女性がなりやすい病気

「痛風は男性の病気」「骨粗鬆症は女性の病気」というイメージがあります。
実際、病気の中には男女で発症しやすさが大きく違うものがあります。
もちろん、前立腺の病気は男性、子宮や卵巣の病気は女性というように、臓器そのものの違いによって生じる病気もあります。
しかし、それだけではありません。
同じ臓器を持っていても、ホルモン、体の構造、免疫、生活習慣、年齢などによって病気のなりやすさに男女差が生じることがあります。
では、どのような病気に男女差があるのでしょうか。
男性に多い病気・女性に多い病気
代表的なものを大まかに分けると、次のようになります。
| 男性に多い傾向 | 女性に多い傾向 |
|---|---|
| 痛風・高尿酸血症 | 骨粗鬆症 |
| 尿路結石 | 鉄欠乏性貧血 |
| 膀胱がん | 膀胱炎 |
| COPD | 関節リウマチ |
| 一部の心血管疾患 | 全身性エリテマトーデス(SLE) |
| パーキンソン病 | シェーグレン症候群 |
| 一部のがん | 甲状腺疾患 |
| 便秘 |
ただし、「男性に多い=女性はならない」という意味ではありません。
また、男女差は年齢によって変化します。
その典型が痛風、骨粗鬆症、心血管疾患などです。
なぜ病気に男女差がある?
男女で病気のなりやすさが違う理由は一つではありません。
大きく分けると、
- 体の構造
- 性ホルモン
- 遺伝・免疫
- 妊娠・出産・月経
- 生活習慣や職業などの環境
- 男女の平均寿命の違い
などが関係しています。
例えば膀胱炎は、ホルモンというより尿道の構造の違いが重要です。
一方、痛風や骨粗鬆症ではエストロゲンが男女差を考えるうえで重要になります。
さらに、喫煙や飲酒など生活習慣の男女差が影響する病気もあります。
つまり、
「男性だから」「女性だから」病気になるのではなく、性差に関連する複数の要因によって発症リスクが変わる
と考えたほうがよいでしょう。
痛風は圧倒的に男性に多い
男女差が非常に分かりやすい病気の一つが痛風です。
痛風の原因となるのは、血液中の尿酸です。
血清尿酸値が高い状態が続くと、尿酸塩結晶が関節などに沈着し、激しい関節炎を起こすことがあります。
では、なぜ男性に多いのでしょうか。
女性ホルモンと尿酸
一つの理由として考えられているのが女性ホルモン、特にエストロゲンの影響です。
エストロゲンは尿酸の腎排泄に影響するため、閉経前の女性は一般に男性より血清尿酸値が低い傾向があります。
ところが閉経するとエストロゲンが低下します。
そのため、女性でも閉経後には血清尿酸値が上昇していき、男女差が小さくなっていきます。
「女性は痛風にならない」のではありません。
閉経前の女性では痛風がかなり少ないと考えたほうが適切です。
偽痛風は痛風とは別の病気
高齢者の膝などが突然腫れて、
「痛風では?」
と思われることがあります。
しかし、痛風とよく似た関節炎を起こす病気にCPP結晶沈着症(いわゆる偽痛風)があります。
痛風で問題になる結晶は尿酸塩結晶ですが、CPP結晶沈着症ではピロリン酸カルシウム結晶が関係します。
つまり、症状は似ていても別の病気です。
痛風が典型的には足の親指の付け根などに起こるのに対し、CPP結晶による急性関節炎では膝などの大きな関節が侵されることが多いという違いもあります。
膀胱炎はなぜ女性に多い?
膀胱炎は女性に多い病気です。
ここではホルモンよりも体の構造が重要です。
女性は男性に比べて尿道が短く、尿道口と肛門の距離も近いため、腸内細菌などが尿道から膀胱へ侵入しやすくなっています。
そのため女性では膀胱炎を起こしやすくなります。
同じ「尿に関係する病気」でも、
痛風 → ホルモンや尿酸代謝
膀胱炎 → 解剖学的な構造
というように、男女差が生まれる理由は異なります。
女性は鉄欠乏性貧血になりやすい
鉄欠乏性貧血も女性に多い代表的な病気です。
特に月経のある年代では、毎月の出血によって鉄を失います。
さらに妊娠では母体だけでなく胎児や胎盤にも鉄が必要になります。
そのため、
月経・妊娠という女性特有の生理現象そのものが鉄欠乏のリスクになる
わけです。
ただし、閉経後の女性や男性で鉄欠乏性貧血がみられる場合には、消化管出血など別の原因が隠れていないかを考えることも重要です。
骨粗鬆症が女性に多いのはなぜ?
骨粗鬆症も非常に大きな男女差があります。
日本の推計では骨粗鬆症患者約1,590万人のうち、男性約410万人に対して女性約1,180万人とされています。
ここでも重要なのがエストロゲンです。
骨では常に、
古い骨を壊す「骨吸収」
と
新しい骨を作る「骨形成」
が行われています。
エストロゲンには骨吸収を抑える方向の作用があります。
閉経によってエストロゲンが急激に低下すると骨吸収が亢進し、骨量が減少しやすくなります。
そのため、閉経後の女性では骨粗鬆症のリスクが急速に高くなります。
女性には自己免疫疾患が多い
男女差を考えるうえでもう一つ興味深いのが免疫です。
関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群など、多くの自己免疫疾患は女性に多くみられます。
なぜ女性に自己免疫疾患が多いのかは完全には解明されていません。
性ホルモンだけでなく、X染色体に存在する免疫関連遺伝子など、複数の要因が関係していると考えられています。
「女性は免疫が強いから自己免疫疾患になる」と単純化できるものではありませんが、免疫反応そのものにも性差が存在することは重要です。
パーキンソン病は女性に多い?
以前は、
「高齢者には女性が多いから、パーキンソン病患者も女性が多く見える」
という説明をされることがありました。
しかし現在の疫学研究では、単純に男女同数とはいえません。
世界的には、パーキンソン病の発症率・有病率は男性のほうが高い傾向があります。近年のレビューでは男性の有病率が女性の約1.5倍、年齢調整した発症率も男性のほうが高いと報告されています。
ただし地域差があり、日本や韓国などのデータでは女性の有病率が高くみえる研究もあります。
したがって、
患者数(有病者数)と、病気そのものの発症しやすさ(発症率)は分けて考える
必要があります。
これは「男女どちらに多い病気か」を考えるうえで非常に重要なポイントです。
心筋梗塞などは男性に多い?
心血管疾患にも男女差があります。
一般に若年~中年では男性のリスクが高く、女性では閉経後にリスクが上昇します。
このため、エストロゲンが女性の心血管系に何らかの保護的作用を持つ可能性が研究されてきました。
ただし、心筋梗塞や脳卒中のリスクは性ホルモンだけで決まるものではありません。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満、年齢など多数の要因が重なって決まります。
「女性だから心臓病になりにくい」と考えるのは危険です。
特に閉経後は心血管疾患への注意が必要になります。
女性は便秘になりやすい?
便秘も女性に多い症状です。
原因の一つとして考えられるのが黄体ホルモン(プロゲステロン)です。
プロゲステロンは消化管平滑筋や腸管運動に影響するため、月経周期によって便通が変化する女性もいます。
さらに女性では、
- 妊娠
- 食事量の減少
- ダイエット
- 骨盤底の問題
- 子宮や卵巣など骨盤内臓器の病気
なども便秘に関係することがあります。
妊婦は便秘になりやすい
妊娠するとプロゲステロンの影響などによって腸管運動が低下しやすくなります。
さらに妊娠が進むと、大きくなった子宮による物理的な影響も加わります。
鉄剤の服用などによって便秘が悪化する場合もあります。
妊娠中に便秘が増えるのは、一つの原因だけではなく、ホルモン・体の構造・薬・生活の変化が重なるためと考えられます。
女性は痔になりやすい?
痔については「女性の病気」「男性の病気」と単純には分けられません。
ただし女性では、便秘や妊娠・出産が痔の発症・悪化に関係します。
妊娠すると子宮が大きくなり、骨盤内の静脈還流にも影響します。
さらに便秘によるいきみや出産時の負担なども加わります。
そのため、妊娠・出産期は痔核などが問題になりやすい時期です。
水虫は男性の病気?
「水虫=中年男性」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、白癬は男性だけの病気ではありません。
白癬菌は性別を選んで感染するわけではなく、足が蒸れる環境、共同浴場や家庭内などでの接触、靴の環境などさまざまな条件が関係します。
女性でも足白癬や爪白癬になります。
また、爪が白く濁ったり厚くなったりしているからといって、必ず爪白癬とは限りません。
外傷や靴による慢性的な圧迫などでも爪は変形します。
見た目だけで「水虫」と判断せず、必要に応じて顕微鏡検査などで真菌を確認することが重要です。
「男性に多い病気=男性特有の病気」ではない
病気の男女差を見るときに注意したいのが、
「多い」と「その性別にしか起こらない」は全く違う
ということです。
例えば痛風は男性に圧倒的に多い病気ですが、女性にも起こります。
一方、
- 前立腺がん
- 子宮がん
- 卵巣がん
などは、基本的にその臓器を持つ人に発生する病気です。
ここは分けて考える必要があります。
男女差は年齢によって変わる
さらに面白いのは、性差が一生同じではないことです。
若いころには大きな男女差があった病気でも、高齢になると差が縮まることがあります。
その大きな転換点の一つが閉経です。
エストロゲンが減少することによって、
尿酸 → 上昇しやすくなる
骨 → 骨量が減少しやすくなる
脂質代謝など → 変化する
といったさまざまな変化が起こります。
そのため、
「男性に多い病気・女性に多い病気」
という二分法だけではなく、
「何歳の男性・女性なのか」
まで考えることが大切です。
男女差を知ると病気の仕組みが見えてくる
病気の男女差は、単なる医学雑学ではありません。
例えば、
痛風
→ なぜ男性に多い?
→ エストロゲンと尿酸排泄
→ では閉経後は?
→ 女性でも尿酸値が上がる
骨粗鬆症
→ なぜ女性に多い?
→ エストロゲン低下
→ 骨吸収が亢進
→ 閉経後に骨量が急速に低下
膀胱炎
→ なぜ女性に多い?
→ 尿道が短い
→ 細菌が膀胱まで到達しやすい
というように、
「なぜ男女差があるのか?」を考えると、その病気の発症メカニズムまで見えてきます。
病気の性差は、
体の構造 × ホルモン × 遺伝・免疫 × 年齢 × 環境・生活習慣
の組み合わせで生まれます。
「この病気は男性の病気」「これは女性の病気」と覚えるだけでなく、なぜその性差が生じるのかを考えることが、病気を理解する近道なのです。




1 件のコメント
男性でも、ごくまれに乳癌になりますよ。