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授乳中に禁忌の薬一覧
公開. 更新. 投稿者:妊娠/授乳. タグ:薬剤一覧ポケットブック. この記事は約8分53秒で読めます.
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授乳中に禁忌の薬
一般的に母乳育児中に禁忌となる薬剤はごく一部で、免疫抑制剤、抗がん剤、放射性薬品です。
免疫抑制剤のシクロスポリンは、動物実験では投与量の2%が母乳中に移行し、ヒト母乳中にも移行することが報告されています。
抗がん剤は母親の血中濃度に関係なく母乳に移行し、乳児に影響があるとされています。
放射性薬品は母乳からも排泄されるため、曝露中の授乳は控えます。授乳中止が必要な期間は放射性薬品の種類や使用量によって異なり、48時間~永久中止までです。一般的に、半減期の5~10倍にあたる期間は授乳を中止することとされています。
とくに授乳中に使ってはいけない薬として、
抗がん剤(シクロホスファミド、シスプラチン、タモキシフェン、ドキソルビシン、パクリタキセル、ブスルファン、フルオロウラシル、メトトレキサート)
抗ウイルス剤(ジドブジン、ネビラピン、ラミブジン)
パーキンソン病治療薬(カベルゴリン、ブロモクリプチン)
片頭痛治療薬(エルゴタミン)
その他(アミオダロン、ダナゾール、メトロニダゾール、コカイン)
などが挙げられます。
乳児に影響のあるものだったり、授乳に影響があるものだったりと様々。
しかし授乳中に問題なく使える薬、というのはほぼ存在しないと言って過言ではない。
メーカーとして調べられるのは、母乳中に移行するかしないかということ。
それ以上、実際に乳児に薬を飲んでもらう試験など行いようがない。
副作用の被害が出て初めてわかるということ。
実際に授乳婦に禁忌となっている薬の一覧は以下の通り。
医薬品全体からみると少ない印象。
医薬品名 | 添付文書の禁忌の記載 |
---|---|
アセタノール | 妊婦及び妊娠している可能性のある婦人、授乳中の婦人 |
アラバ | 妊婦、妊娠している可能性のある婦人又は授乳中の婦人 |
アリミデックス | 授乳婦 |
アロマシン | 授乳婦 |
アロマシン | 授乳婦 |
ウェールナラ配合錠 | 妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳婦 |
エディロール | 妊婦、妊娠している可能性のある婦人又は授乳婦 |
エビスタ | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
オークル | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人、授乳婦 |
カデュエット | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
クリアミン | 授乳婦 |
クレストール | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
コペガス | 妊婦、妊娠している可能性のある婦人又は授乳中の婦人 |
サンディミュン | 妊婦、妊娠している可能性のある婦人又は授乳婦 |
ジヒデルゴット | 授乳婦 |
ジュリナ | 妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳婦 |
シンメトレル | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
ディビゲル | 妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳婦 |
トライコア | 妊婦又は妊娠している可能性のある女性、授乳婦 |
ニコチネルTTS | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人、授乳婦 |
ネオーラル | 妊婦、妊娠している可能性のある婦人又は授乳婦 |
ビビアント | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
フェアストン | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
フェマーラ | 授乳婦 |
フリウェル配合錠LD | 授乳婦 |
プロペシア | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳中の婦人 |
ベハイドRA配合錠 | 妊婦・授乳婦 |
ボンゾール | 授乳婦 |
メタルカプターゼ | (原則禁忌)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
メノエイドコンビパッチ | 妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳婦 |
メバロチン | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
モーバー | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人,授乳婦 |
ヤーズ配合錠 | 授乳婦 |
リウマトレックス | 授乳婦 |
リバロ | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
リピディル | 妊婦又は妊娠している可能性のある女性,授乳婦 |
リピトール | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
リポクリン | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人、授乳婦 |
リポバス | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
ル・エストロジェル | 妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳婦 |
ルナベル配合錠 | 授乳婦 |
レベトール | 妊婦、妊娠している可能性のある婦人又は授乳中の婦人 |
ローコール | 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
しかし、「禁忌」とはなっていなくても「使用上の注意」に「授乳中の婦人には投与しないこと。」と記載されているものが多い。
薬剤師的には禁忌同様、授乳婦に投与されれば疑義照会の対象である。
授乳中に安全に使用できる薬
授乳婦が服薬すると、ほとんどの薬剤が母乳中に移行すると言われています。
しかし実際には、母乳への薬物の移行量は極めて少ないことが知られています。
したがって、多くの場合、授乳を中止したり、授乳のために服薬を中止する必要はないと考えられています。
確かに、添付文書には「授乳中の婦人に投与することを避け」あるいは「やむをえず投与する場合には授乳を中止させること」等の記載がされていますが、その根拠となる情報の多くは動物実験によるものです。
国立成育医療研究センターでは、ホームページに授乳中に使用しても問題にならない代表的薬剤と授乳中に使用してはならない薬剤の代表例を掲載しています。
どっちを信用すればよいのだ、と聞きたい。
法を守る薬剤師としては添付文書至上主義にならざるを得ないところはありますが、実際授乳婦に処方する医師としては添付文書に従っていては何も処方できないわけで。
結果的に処方された薬に関しては、怖がらせることのないよう配慮する必要がある。
せめて「授乳中に安全に使用できると思われる薬」の添付文書については、改訂して、授乳婦に不安をもたせる記載は無くしてもらったほうが良いのではないかと思う。が、メーカー的には訴訟リスクを少しでも回避したいし、授乳婦の数は全体から見ればごく少ないし、改訂する必要性はあまり無いだろう。
薬を飲んだら授乳は止めるべきか?
服用によって授乳の中止が必要となる薬物は、実は、それほど多くありません。
米国小児科学会によると、
・免疫抑制剤
・抗癌剤
・放射性医薬品
・アンフェタミンやコカイン、ヘロイン、マリファナなどの覚せい剤
です。
「授乳中にこの薬飲んでも大丈夫ですか?」
よく聞かれる質問です。
「母乳中に薬が移行することが認められていますので、薬の服用中は授乳を中止して下さい。」
しかし、一旦授乳を中止してしまうと、そのあと母乳が出にくくなってしまうこともあり、軽々しく「授乳を中止してください」と言うべきではありません。
国立成育医療センターのホームページには、授乳中に使用しても問題ないとされる薬剤の代表例のリストがあります。
これを見ただけでも、ほとんどの薬が大丈夫だとわかります。
薬の添付文書には薬の成分が母乳中に出る場合は、「授乳を避ける」と記載されているものが多いのですが、メーカー側は責任を取りたくないので、授乳婦や妊婦や小児に対する使用はあまりすすめません。
「できるだけ薬を飲む直前に授乳して下さい。」
「薬を飲み始める前に搾乳し冷凍保存しておくようにして下さい。」
こういう指導をする人もいますが、確かに母乳に移行する量は減らせますが、どのくらい効果のある方法なんだかよくわかりません。
授乳する時間とか量なんてコントロールできるものではありません。
薬の影響を避ける授乳方法
①服薬直前の授乳
母親が吹く薬をしながら授乳を続ける場合、母乳中への薬の移行をできるたけ少なくする工夫として、服薬直前に授乳を行う方法が有効です。
母乳中の薬物量は血中濃度に相関します。
服薬を授乳の直前または直後にすることで、乳児の薬物摂取量を最低限に抑えることができます。
しかし、そんなタイミングよく授乳を行うことは難しいので、現実的ではないと考えたほうがよいかも知れない。
②冷凍保存した母乳
一時的に服薬する場合は、薬物治療を始める前に搾乳しておき、凍結保存しておく方法もいいでしょう。
母乳は冷凍すれば3~4ヶ月保存が可能です。
授乳を中断している期間は、搾乳することも大切です。
止まった母乳はなかなか戻らないのです。
母乳中に移行しにくい薬の特徴
・分子量が大きい
・タンパク結合率が高い
・脂溶性が高い
・弱酸性
・半減期が短い
・生体利用率が低い
・M/P比が低い
母乳に移行しやすい薬の特徴
母乳に移行しやすい薬の因子として、
・脂溶性が高い
・分子量が小さい
・血清蛋白結合率が低い
・生物学的利用率が高い
・薬物血中濃度半減期が長い
・弱塩基性で薬剤解離定数が7.4より小さい
・分布容積が大きい
薬剤側の因子 | 分子量 | 分子量が小さい薬剤ほど、細胞膜を通過しやすく母乳へ移行しやすい。 |
イオン化(pH) | 母体血漿のpHは約7.4、母乳(生乳)のpHは約6.8であることから、弱塩基性薬剤は母体血中ではイオン化しにくいため母乳へ移行しやすい。 | |
脂溶性 | 細胞膜が主に脂質から構成されているため、脂溶性の薬剤は細胞膜を通過しやすく母乳へ移行しやすい。 | |
蛋白結合率 | 血漿蛋白と結合すると細胞膜を通過できないため、蛋白結合率が低い薬剤は細胞膜を通過しやすく母乳へ移行しやすい。 | |
半減期 | 半減期の短い薬剤は母体血中濃度が早く低下するため母乳に移行する量は少ない。半減期の長い薬剤、徐放性薬剤は、乳児の体内に蓄積しやすい。 | |
生体利用率 | 生体利用率(バイオアベイラビリティ)は最終的に血中にいたる薬剤の割合を示すため、生体利用率が低い薬剤は乳児への影響が少ないとされている。 | |
母親側の因子 | 投与量・回数・期間 | 投与量・回数が多く、投与期間が長いほど母乳への移行量は多い。 |
投与経路 | 授乳時の母体血中濃度が高いほど、薬剤は母乳へ移行しやすい。血中濃度のピーク(最高血中濃度到達時間Tmax)は、静注では投与直後、経口では1~3時間後となる薬剤が多いためこの時間帯の授乳は避ける。外用の血中濃度は低い。 | |
母乳組成 | 母乳の脂肪含量は1回の授乳の前半より後半に多いため、薬剤も授乳の後半になるほど母乳に移行しやすくなる。 | |
代謝・排泄能 | 肝・腎機能が低下している場合、血中濃度が上昇しやすく母乳へも移行しやすくなる。 | |
乳児側の因子 | 哺乳量・回数 | 哺乳量が多いほど曝露量は増加する(同じ哺乳量でも乳児の体重が増加すれば曝露量は相対的に減少する)。 |
代謝・排泄能 | 乳児の月齢と成熟度が関係する。一般に新生児・早産児は肝・腎が未熟なため薬剤の影響を受けやすい。 |
分子量が200以下のアルコールやモルヒネなどは母乳中に移行しやすく、分子量が大きいヘパリン、インスリン、インターフェロンといった薬は母乳中にはほとんど移行しません。
また、血漿蛋白と結合した薬は母乳中に移行しにくいため、蛋白結合率が高い薬は母乳中に移行しにくいことも分かっています。
例えばイブプロフェンやジクロフェナク、ロキソプロフェンは、解熱鎮痛剤の中でも蛋白結合度が高いため、母乳へ移行しにくいことが分かっています。
中でもイブプロフェンは、小児にも適応があり、比較的安全といえます。
細胞膜は脂質で構成されているため、脂溶性の高い薬は細胞膜を通過しやすく母乳中にも移行しやすくなります。
乳腺細胞の細胞膜は、非イオン型の薬だけを通します。
血液中でイオン化されにくい弱塩基性薬剤は、母乳中に移行しやすくなります。
また、血液のpHは7.4で、母乳は6.6~7.0であるため、弱酸性薬剤は血液中で多くイオン化され、母乳中にはあまり移行しません。
半減期の長い薬は、母体血液中の薬の濃度の高い時間が持続するため、母乳への移行も増加します。
徐放性製剤のように効き目の長い薬も注意が必要です。
また、生体利用率が低い薬は血中濃度が高くなりにくく、母乳中への移行も少ないと考えられます。
母乳中薬剤濃度/母体血中薬剤濃度(M/P比)
母体血中濃度に対する薬の母乳中濃度の比率(薬の母乳中濃度/母体血中濃度)をM/P比といいます。
M/P比が低いほど(1以下)母乳中への移行は少ないと考えられます。
M/P比が高値でも母体血中濃度そのものが低い場合、母乳移行量の絶対量が少ないことになるため問題としなくてもよいことが多い。
相対的乳児薬物摂取量(RID)
母親が服薬中に、母乳を介して乳児がどれくらい曝露するのか、その程度を示すものとして薬局として使いやすい指標が、「相対的乳児薬物摂取量(RID:Relative Infant Dose)」である。
RIDは母親の体重当たりの薬物投与量に対する乳児の体重当たりの摂取量の割合を示す。
RID値(%)の計算式は、(乳児薬物摂取量[mg/kg/日]÷母親薬物摂取量[mg/kg/日])×100。
一般に、RIDが10%以下であれば、授乳しても問題ないとされる。
臨床で用いられる薬剤の多くは、RIDが1%未満と低い。ただし、報告されている値はあくまで一般的な投与量で使用した場合であり、RIDが低い薬剤であっても、母親が治療で大量に使用するような状況下では、児が曝露する量は当然増えるため注意が必要である。
新生児や小児に対しても汎用されている薬剤であれば、多くの副作用データがあるため、それらを基に安全性を検討することも必要である。
RIDの高い薬剤として以下のものがある。
医薬品名 | RID(%) |
---|---|
アミオダロン塩酸塩(アンカロン) | 9.58~43.1 |
エトスクシミド(エピレオプチマル/ザロンチン) | 31.4~73.5 |
コルヒチン | 2.1~31.47 |
シメチジン(タガメット) | 9.8~32.6 |
ソタロール塩酸塩(ソタコール) | 25.5 |
ゾニサミド(エクセグラン/トレリーフ) | 28.88~44.1 |
トピラマート(トピナ) | 24.68~55.65 |
フェノバルビタール(フェノバール) | 24 |
フルコナゾール(ジフルカン) | 16.4~21.5 |
メトクロプラミド(プリンペラン) | 4.7~14.3 |
RIDが高値でも授乳の安全性が知られている薬剤(イソニアジド(13%)、フルコナゾール(16%)など)や、テトラサイクリンのように0.6%と低値だが長期使用に伴う歯牙への影響が知られている薬剤もあり、他の指標とともに総合的に評価する必要がある。
母乳は急に止まらない
「薬を飲むなら、授乳は止めてください」とお母さんたちに言うことがあります。
しかし母乳は水道の蛇口のように急に止めたり、すぐに出したりできるものではありません。
母乳を飲ませられなかったら乳腺炎になることもあるし、母乳の分泌量が減ってしまいます。
薬を飲んでどのくらい経ったら授乳していい?
授乳を控える期間は、一般に血中濃度半減期の5~10倍であるとされています。
一般に服用した薬が血液中から消失するに、その薬(成分)の血中濃度半減期(t1/2)の4〜5倍の時間経過が必要とされます。
どうしても飲まなければならない薬の場合は、血中濃度半減期を確認し、その4〜5倍の時間経過後に授乳を再開すると影響がほとんどありません。
母乳中からの消失も血液中からの消失とほぼ同様と考えられます。
その間は粉ミルクを使用することを勧めます。
薬を飲む直前に授乳
薬を飲む直前は、最も薬の濃度が下がっているので、その時間帯に母乳を飲ませるといい。
と、説明する薬剤師がいる。
この説明で安心する母親もいるが、このアドバイスを負担に感じる授乳婦もいる。
体調がすぐれず授乳が大変だと感じている母親では、服薬時間や授乳時間を細かく決められることがストレスに感じる人もいる。
血中濃度が低い時間帯の方が母乳への移行量は少ないと考えられるが、そもそも、授乳中でも服用可能とされる薬は、最も血中濃度が高いときに授乳しても問題がなく、服薬と授乳のタイミングを考える必要はないはず。
より安全な時間帯だと思うことで安心する母親には伝えるのもいいが、科学的には大差ないことを分かった上で、患者の気持ちを十分考えて使い分けたい。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
2 件のコメント
検索でたまたまたどり着きました!
すごくわかりやすいです
カテゴリー一覧が見当たらず記事を検索するのがむずかしいです
コメントありがとうございます。
自分でも思っていました。工夫してみます。