2024年12月2日更新.2,476記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ネイリンカプセルは使いやすい?

ホスラブコナゾール

ネイリンカプセル(ホスラブコナゾール)という爪水虫治療薬があります。
2018年7月に発売されたトリアゾール系経口爪白癬治療薬です。

ホスラブコナゾールは新規の経口抗真菌剤。主活性成分のラブコナゾールの溶解性や生体内利用率を向上させたプロドラッグで、ヒトに投与すると速やかにラブコナゾールに変換される。ラブコナゾールは、真菌細胞の膜成分であるエルゴステロール生合成を阻害することにより、抗真菌作用を示す。

経口投与の類薬にはイトリゾールカプセル(イトラコナゾール)やラミシール錠(テルビナフィン塩酸塩)があります。
クレナフィン爪外用液やルコナック爪外用液などの外用剤に押され、イトリゾールやラミシールの処方はめっきり減りましたが、難治性の爪水虫にはやっぱり内服薬じゃないとダメです。

爪白癬の適応を有する経口抗真菌薬としては、既にイトラコナゾール(イトリゾール)と、テルビナフィン塩酸塩(ラミシール)が販売されている。
しかし、これらの経口抗真菌薬は、併用禁忌薬が多いことや、肝機能障害や血球減少に注意が必要なことから、患者によっては使いにくかった。
ネイリンカプセルは国内第3相試験において、爪白癬患者に対する有効性が確認された。
安全性についても、肝機能検査値の上昇が認められたものの、重篤な有害事象はみられず、肝障害を示唆する臨床所見も認められなかった。
臨床上問題となる薬物相互作用を示す可能性が既存薬と比較して低く、併用禁忌薬はないことから、爪白癬治療の新たな選択肢になると期待されている。

ネイリンカプセルは食事と関係なく服用できるので使いやすい

イトリゾールは、酸性下で脂肪分ががある方が、吸収率が高まるため、食直後に服用するのに対し、ネイリンは水溶性が高く、食事には関係なく服用できる。
ラミシールの用法も「食後」となっており、食事の縛りがある。

日本人健康男性にホスラブコナゾール(ラブコナゾールとして100㎎)を食後単回経口投与したとき、血中濃度時間曲線下面積(AUC)は空腹時投与と比較して同等であった。
最高血中濃度(Cmax)は約40%低下したものの、臨床上の安全性や有効性において影響を及ぼすものではないと考えられた。
このことから、ホスラブコナゾールは食事に関する用法は設定されなかった。
なお、イトラコナゾールやテルビナフィンは、薬物動態に対する食事の影響が大きいため、それぞれ食直後および食後投与が必須である。

ネイリンカプセルは併用禁忌が無いので使いやすい

イトリゾールの併用禁忌には、

ピモジド、キニジン、ベプリジル、トリアゾラム、シンバスタチン、アゼルニジピン、ニソルジピン、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン、バルデナフィル、エプレレノン、ブロナンセリン、シルデナフィル(レバチオ)、タダラフィル(アドシルカ)、アスナプレビル、バニプレビル、スボレキサント、イブルチニブ、チカグレロル、アリスキレン、ダビガトラン、リバーロキサバン、リオシグアト

と多数ある。
しかし、ネイリンには併用禁忌薬がない。
ただし、体内で変換されたラブコナゾール(ネイリン)は薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3A4を阻害するため、CYP3Aにより主に代謝される薬剤(シンバスタチン、ミダゾラム)は併用注意となっている。
加えて、ワルファリンカリウム(ワーファリン)も、アゾール系抗真菌薬との併用でプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)上昇が報告されているため、併用注意とされている。
ホスラブコナゾールはCYP3Aに対する阻害作用が弱いため、相互作用を起こす薬剤が少ないことが報告されてる。

ネイリンカプセルは血液検査をしなくていいので使いやすい

ラミシール(テルビナフィン)は、肝障害や血液障害のある患者には禁忌であり、重篤な肝障害や血球減少などが出現することがあるとの警告が記されているのに対して、ネイリン(ホスラブコール)は肝障害を有する患者に慎重投与とされているのみである。

ラミシールの禁忌には

重篤な肝障害(肝不全、肝炎、胆汁うっ滞、黄疸等)及び汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少があらわれることがあり、死亡に至った例も報告されている。本剤を使用する場合には、投与前に肝機能検査及び血液検査を行い、本剤の投与中は随伴症状に注意し、定期的に肝機能検査及び血液検査を行うなど観察を十分に行うこと。

と書かれており、血液検査の実施が義務付けられている。

ネイリンカプセルを飲み終わっても治らない?

ネイリンカプセルの服用は12週間で終了する。約3か月である。
しかし、爪は3か月では生え変わらない。
爪水虫が治るまでは、6か月から1年の期間が必要となる。
患者からしてみれば、飲み終わった時点で「飲んでも治らなかった」と思うだろう。爪が生え変わるまで待つ必要があることを伝えておきたい。

3か月で治療が終了すると聞くと「ラミシールみたいに半年~1年も通院しなくて済むんだ」と思いますが、治療終了後も通院しなくて済むというわけではない。添付文書には「投与終了後は、爪の伸長期間を考慮して経過観察を行うこと。」とあり、経過観察が必要になる。治れば通院しなくても良いと思うけど。

ネイリン

・国内3番目の経口アゾール系抗真菌薬
・食事に関係なく服用可能
・ワルファリンやCYP3Aにより代謝される薬剤との併用に注意

ホスラブコナゾールL-リシンエタノール付加物は、プロドラッグであり、投与後ラブコナゾールに代謝される。生物学的利用率を高めるためにプロドラッグ化されており、経口投与後速やかに吸収され体内で活性本体であるラブコナゾールに変換される。
ラブコナゾールは、心筋細胞の膜成分であるエルゴステロールの生合成を阻害して抗真菌活性を示す。
ネイリンカプセルは吸湿性が認められるため、服用直前にPTPシートから取り出す必要がある。

処方例

ネイリンカプセル100mg 1カプセル  
 1日1回 朝食後 30日分

爪白癬の診断

「水虫の薬ぐらい皮膚科の医師じゃなくても処方できるだろう」と素人的には思います。

でも、皮膚科以外から処方されると保険請求的に問題がありそうな薬もあります。

クレナフィン爪外用液、ネイリンカプセル、ルコナック爪外用液の適応症は「爪白癬」のみであり、添付文書の「効能又は効果に関連する使用上の注意」には、

直接鏡検又は培養等に基づき爪白癬であると確定診断された患者に使用すること。

と記載されている。皮膚科以外水虫の鏡検なんてしないので、皮膚科以外から処方されたらこのルールを守っていないことになる。
と思いきや、外注することもできるので、必ずしも内科から処方できないというわけではない。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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