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水溶性スタチンは肝臓にやさしい?
公開. 更新. 投稿者:脂質異常症.この記事は約5分42秒で読めます.
5,564 ビュー. カテゴリ:水溶性スタチンは安全?
HMG-CoA還元酵素阻害薬には、水溶性のものと脂溶性のものがある。
水溶性のものは、薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)の影響を受けないが、脂溶性のものはCYPにて代謝される。
そのため、同じ種類のCYPで代謝される薬物の併用は、薬物相互作用の原因となるため、確認が必要である。
メバロチンは安全?
メバロチンは水溶性なので安全性が高いと言われます。
リピトール、リポバス、ローコールなどは脂溶性であり、肝薬物代謝酵素チトクロームを介して代謝されるのに対して、水溶性のメバロチンの代謝はCYPを介さず、水酸基転移によって行われます。
そのため、肝臓にやさしい。
薬物相互作用も少ない。
水溶性が高いので、筋細胞への取り込みが少ないために、横紋筋融解症などの副作用の出現頻度も低い。
しかし副作用が少ない分、コレステロール低下作用も最も弱い。
メバロチンは肝臓にやさしい?
リバロ、ローコール、リピトール、リポバス、クレストールの禁忌には「肝障害」の記載がある。
しかしスタチン系の中で、メバロチンのみ「肝障害」に禁忌となっていない。
なぜか?
その理由として、アトルバスタチン(リピトール)、シンバスタチン(リポバス)、フルバスタチン(ローコール)は肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)を介して代謝され、ピタバスタチン(リバロ)やロスバスタチン(クレストール)は胆汁中に排泄されるなど、肝臓を介して消失するのに対して、プラバスタチン(メバロチン)の代謝はCYPを介さず、尿中に排泄されるといった違いによるものと推察される。
脂溶性の高いスタチンは危険?
スタチンの中でも脂溶性の高い化合物は、血中に分布するスタチン分子が各組織まで運ばれた際に細胞膜を通過し、筋肉細胞内でHMG-CoA還元酵素を阻害することによって、筋肉障害を引き起こしやすい。
セリバスタチンは、横紋筋融解症が高頻度に発現したために、10年ほど前に市場から撤退した薬剤です。
特に近年では、生活習慣病用薬の開発には大規模臨床試験が実施されることが多く、開発には巨額の開発費が投じられており、市場からの撤退は企業にとって大きなダメージとなります。
セリバスタチンのHMG-CoA還元酵素阻害作用は他のスタチンと比較して飛びぬけて強いわけではありませんが、投与量は1日0.1~0.2mgと少なめでした。
セリバスタチンは脂溶性が高いため、全身の細胞でコレステロール合成を阻害することから低用量で活性を示します。
しかし、主薬効を示す肝細胞における選択性が低く、副作用を示す筋肉細胞で強力にHMG-CoA還元酵素を阻害してしまうため、用量を高くできなかったのです。
主薬効に対するこの毒性の相対的な発現頻度は、脂溶性と相関すると考えられています。
一般的に、脂溶性が高い化合物ほど受動拡散による組織への移行率が高くなります。
しかし、肝細胞では、アニオントランスポーターに認識されやすい薬物は、たとえ脂溶性が低くても、そのアニオントランスポーターから取り込まれます。
すなわち、脂溶性が低く、肝細胞のアニオントランスポーターに認識されやすい(=肝臓に移行しやすい)ほど安全であると考えられています。
プラバスタチンの分配係数はlogP=-0.47、ロスバスタチンの分配係数はlogP=-0.3と他のスタチンと比較して脂溶性が低く、各組織の細胞内へ移行する比率が低いため、血中に留まる薬剤の比率が高まります。
一方、肝臓に特異的に発現しているアニオントランスポーターの働きで、筋肉細胞と比較して相対的に肝細胞中濃度が高くなるために肝細胞選択性が高くなっています。
logP値が4.4と非常に高いシンバスタチンはラクトン状態であるためで、この状態ではHMG-CoA還元酵素阻害作用を示さず、開環してはじめて阻害作用を示すために、毒性をそれほど示さないと考えられています。
リポバスとCYP
リポバスはCYP3A4で代謝されるので、CYP3A4を阻害する薬と併用すると血中濃度が上昇する。
CYP3A4で代謝される薬といえば他にハルシオンが有名。
CYP3A4を阻害する薬といえばイトリゾール。
Simvastatinやatorvastatinと相互作用する薬剤の例
CYP3A4を阻害する作用が強い薬剤として、マクロライド系抗菌薬、アゾール系抗真菌薬などがある。
リピトールとイトリゾールやエリスロシンは併用禁忌になっていないけど、注意したほうがよさげ。
CYP3A4を阻害する作用が中等度の薬剤として、アムロジピンがある。
リピトールとアムロジピンの併用なんて、数えきれないほどある。
だけど、リポバスとアムロジピンは併用注意になっているけど、リピトールとアムロジピンについては特に記載も無い。
横紋筋融解症のリスクを考えると、他のCa拮抗薬のほうがいいのかなあ。
クレストールが最強のスタチン?
クレストール、リピトール、リバロの3つはストロングスタチンと呼ばれることがある。
ローコール、リポバス、メバロチンに比べ、処方頻度も多い。
in vitroにおけるHMG-CoA還元酵素阻害作用を比較した結果、ヒトHMG-CoA還元酵素阻害触媒ドメインでのIC50値により、その阻害作用はロスバスタチン(クレストール)>アトルバスタチン(リピトール)>フルバスタチン(ローコール)>シンバスタチン(リポバス)>プラバスタチン(メバロチン)の順に強い。
ロスバスタチンは、LDL-C低下作用が強くHDL-C上昇作用もあり、これまでのスタチン剤の中でも最強のコレステロール低下剤と言われています。
ピタバスタチン(リバロ)は同一試験でのデータが無く直接的な比較は出来ないが、ラット肝ミクロソームによるIC50値はピタバスタチン>シンバスタチン>プラバスタチンの順にHMG-CoA還元酵素阻害作用が強いことが報告されている。
外国人を対象に行われた臨床試験であるが、ロスバスタチンは、アトルバスタチンやプラバスタチンおよびシンバスタチンと直接比較して有意にLDL-C低下させている。
また、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチンのLDL-C変化率は約20%の低下であるのに対しアトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンのLDL-C変化率は約40%の低下が報告されている。
このため、6成分のHMG-CoA還元酵素阻害薬のうち、アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンがストロングスタチンとして分類されており、患者の状態に応じて使い分けが可能である。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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