記事
冷所保存する塗り薬・貼り薬
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤.この記事は約5分47秒で読めます.
25,149 ビュー. カテゴリ:目次
冷所保存すべき軟膏、冷所保存しちゃいけない軟膏
冷蔵庫に保存する薬といえば、インスリン注射や坐薬、目薬など、液体や熱で溶けるような薬を想像する。
しかし、メノエイドコンビパッチなどの貼り薬、アクトシン軟膏などの塗り薬にも冷所保存の薬があるため、これら特殊な薬の保管方法については知っておく必要がある。
ここでは冷所保存が必要な塗り薬について、挙げてみる。
医薬品名 | 貯法 |
---|---|
アクトシン軟膏 | 10℃以下 |
ユベラ軟膏 | 15℃以下の冷所に保存すること。開栓後は密栓し、光を避けて15℃以下で保存すること(空気又は光により経時変化して、徐々に黄色となる)。 |
ザーネ軟膏 | 室温保存 開栓後は密栓し、光や高温を避けて保存すること(徐々に黄変し、含量が低下することがある)。 |
ベセルナクリーム | 凍結を避け、25℃以下で保存すること |
ベピオゲル | 凍結を避け、25℃以下に保存すること。 |
ラパリムスゲル0.2% | 2〜8℃保存 |
デュアック配合ゲル | 2〜8℃で保存 |
また、混合調剤で予製したクリーム剤などは分離しやすいので、冷蔵庫に保管することもある。
冷所保存すべき塗り薬についてはわかります。高温で分離してしまうでしょう。
しかし、冷所保存してはいけない塗り薬、というのもあります。
医薬品名 | 貯法 |
---|---|
ゾビラックスクリーム | 室温保存(30℃以下)。ただし、冷所保存(15℃以下)しないこと。 |
ファルネゾンゲル | 開封後は冷蔵庫等の5℃以下の場所に保存すると結晶が析出することがあるので、低温の場所を避けて保存すること。 |
マイコスポール外用液 | 低温(約3℃以下)で凝固するので注意すること. |
ゾビラックス軟膏や、市販のヘルペシアクリーム、アクチビア軟膏では冷所保存不可とはなっていない。
寒冷地では室温が15度以下になることも多いので、注意を要する。
高温になる場所に保管すると分離してしまう薬はたくさんある。直射日光のあたる場所や、高温になる車内に置きっぱなしにしないように注意する必要はある。
医薬品名 | 添付文書の記載 |
---|---|
アルメタ軟膏 | 高温条件下で軟膏基剤中の低融点物質(液体)が滲出すること(Bleeding現象)がある。 |
ザーネ軟膏 | 開栓後は密栓し、光や高温を避けて保存すること(徐々に黄変し、含量が低下することがある)。 |
フルメタ軟膏 | 高温条件下で軟膏基剤中の低融点物質(液体)が滲出すること(Bleeding現象)がある。 |
フルメタクリーム | 高温条件下で外観が変化(粒状あるいは分離)することがある。 |
リンデロン-VGローション | 高温条件下で粘度が変化することがあるので室温に保存すること。 |
リンデロン-VG軟膏 | 高温条件下で軟膏基剤中の低融点物質(液体)が滲出すること(Bleeding 現象)がある。 |
リンデロン-VGクリーム | 低温あるいは高温条件下で外観が変化(粒状あるいは分離)することがある。 |
リンデロン−DP軟膏 | 高温条件下で軟膏基剤中の低融点物質(液体)が滲出すること(Bleeding現象)がある。 |
リンデロン−DPクリーム | 低温あるいは高温条件下で外観が変化(粒状あるいは分離)することがある。 |
リンデロン−Vローション | 高温条件下で粘度が変化することがある。 |
リンデロン-V軟膏 | 高温条件下で軟膏基剤中の低融点物質(液体)が滲出すること(Bleeding 現象)がある。 |
リンデロン-Vクリーム | 低温あるいは高温条件下で外観が変化(粒状あるいは分離)することがある。 |
ヒルドイドローションは冷蔵庫で保管しちゃダメ?
ヒルドイドローションの貯法は「室温保存」とのみ記載されている。
家庭用冷蔵庫の冷蔵室は、JIS規格で「室温が15~30℃において、冷蔵室内を0~10℃の範囲で調整できること」とされているため、ヒルドイドローションを冷蔵庫で保管した場合でも、日本薬局方に定める室温(1~30℃)の範囲に入ると考えられる。
ただし、ヒルドイドローションについては、2015年に「冷蔵庫など低温の場所で保管すると成分が結晶化し、塗布時にざらつき・刺激感を感じることがある」と製造販売元のマルホが明らかにしている。
これはローション内に含まれるパラオキシ安息香酸エステルが結晶化することが原因と考えられている。
そのため、ヒルドイドローションは、冷蔵庫での保管は控えるよう指導すべきである。
なお、ヒルドイドにはクリーム、油性クリーム、ゲルもあるが、結晶析出の恐れがあるのはローションのみである。
黄色くなったユベラ軟膏は使えない?
ユベラ軟膏は15℃以下で保存するように添付文書に記載されています。
実際に室温で長期保存すると黄変し、3ヶ月でビタミンAの含量が90%以下になることが製薬会社の資料に記載されています。
15℃以下で保存しても表面が黄色に変色することがあるので、変質していないか心配になります。
しかし、黄色に着色してもビタミンAおよびビタミンEの含量は低下していません。
冷蔵庫に保存した場合では6ヵ月後にわずかに黄色に変色しますが、ビタミンAおよびビタミンEの含量は低下していません。
黄変の原因はビタミンAやEによるものではなく、ビタミンAに対して安定化剤として配合されているBHTが酸化されるためです。
アクトシン軟膏は冷所保存?
アクトシン軟膏の容器などには「貯法:10℃以下」との記載がある。
これは同薬の有効成分であるブクラデシンが水溶液中では不安定なためだ。
インフタビューフォームによると、ブクラデシン水溶液を室温で30日間保存した際に15%の分解が認められている。
一方、製剤の長期保存試験では、10℃で36ヶ月間保存できることが確認されている。
製剤の使用期限は3年であり、長期間安定に保つためには低温で保存する必要がある。
そのため薬局では保冷庫に保管する。
家庭においても冷蔵庫などの冷所で保管することが望ましい。
ただし、冷蔵庫に保管すると軟膏が硬くて塗布しにくいとの訴えがしばしばある。
その解決策の1つが、使用する30~60分前に冷蔵庫から出し、室温に戻してから使用する方法である。
もう1つ、開封後は室温で保管し、1ヶ月程度で使い切るという方法もある。
販売元のマルホによると、25℃で保存しても1ヶ月程度の短期間ならば品質に問題は生じないという。
ただし、室温が高くなる夏季や、冬でも暖房器具のそば、日当たりの良い場所などでの保管は避けるよう指導する。
なお、冷えて硬い場合にドライヤーなどで温めると塗りやすくなるが、温度調節が難しく、高音になって薬剤が分解する恐れがあるため勧められない。
冷蔵庫に保存すると固まる?
アクトシン軟膏は冷所保存ですが、使用直前に冷蔵庫から出して使用すると硬くて塗りづらいため、事前に冷蔵庫から出して使用し、使用後はただちに冷蔵庫に戻すように指導する必要があります。
アクトシン軟膏の臭い
ブクラデシンは酪酸基を有しており、使用の際に酪酸臭が生じることがある。
品質上の問題はなく、この臭いはマスキングするためにフローラル系の香り付けがなされている。
冷所保存の貼り薬?
処方を見たことがないので、不勉強でしたが、メノエイドコンビパッチという貼り薬は冷所保存らしい。
「貯法 2~8℃保存」となっている。
貼り薬で冷所保存というのは初めて見た。
エストラーナやフェミエストと同じように室温保管と思い込んだらダメ。
・・・と調べ中にフェミエストが販売中止になっていたことを知る。ちょっと処方を見ないと、知らぬ間に販売中止になっている。
話を戻して、エストラーナは室温保存で良いわけなので、メノエイドコンビパッチの成分中のエストラジオールに関しては室温保存で問題ないわけだ。
じゃあ、酢酸ノルエチステロンのほうが犯人?でもノアルテンとかルナベルとか別に冷所じゃないし。酢酸基が問題なのかな。
まあ、ホルモン剤を経皮吸収させる際に施した加工が不安定にさせているのだろう。
ちなみに、未開封の状態なら室温でも1カ月まで安定であることが確認されている。
インタビューフォームの加速試験で1か月まで安定と書かれている。
長期処方される患者さんには冷所保管であることを伝えるように。
メノエイドコンビパッチは冷所保存?
長期に保存する場合は冷所での保存が必要です。
やむなく冷所で保存できないときは、短い期間(数時間の持ち運びや、数日間の短期旅行など)であれば、パウチ包装のまま直射日光を避けて、なるべく涼しいところで保管するようにしてください。
メノエイドコンビパッチは冷所保存であるため、使用するまでは開封せずに保管用アルミ袋に入れて冷蔵庫(2~8℃)に保管する。
薬品に添付される製品保管用のアルミ袋は、持ち歩く時や冷蔵庫内で保管する際に、食品などと区別をするためのものであり、必ず使用しなければならないものではない。
従って、あやまってアルミ袋に入れ忘れてしまっても、製品の品質上特に問題は無い。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。