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おむつかぶれの原因はカンジダ?
公開. 更新. 投稿者:皮膚感染症/水虫/ヘルペス.この記事は約3分19秒で読めます.
122 ビュー. カテゴリ:おむつかぶれの原因はカンジダ?

赤ちゃんの皮膚はとてもデリケートで、おむつによる蒸れや摩擦で「おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)」が起こりやすくなります。多くの保護者が経験する育児中の悩みの一つですが、実は一部に“カンジダ”という真菌(カビ)が原因となっているケースがあることをご存じでしょうか。
今回は、おむつかぶれと真菌感染症「乳児寄生菌性紅斑(にゅうじきせいきんせいこうはん)」の違いと、治療上の注意点について詳しく解説します。
おむつかぶれとは?
「おむつかぶれ」は医学的には「おむつ皮膚炎(diaper dermatitis)」と呼ばれます。主に以下のような原因で起こります。
尿や便による刺激(アンモニア、酵素など)
おむつによる擦れ
通気性の悪さによる湿潤環境
頻繁なおしりふきによる過剰な摩擦
これらにより皮膚のバリア機能が損なわれ、炎症が生じるのが典型的なメカニズムです。通常はおむつが直接当たる部分に赤みやただれが見られ、軽度であればワセリンや保湿剤、亜鉛華軟膏などでの対応が可能です。
乳児寄生菌性紅斑(カンジダ性皮膚炎)とは?
一方で、皮膚の炎症が“おむつが直接触れない部分”に広がっていたり、通常のスキンケアで改善しない場合には、「カンジダ性皮膚炎」の可能性があります。
この状態は、Candida albicans(カンジダ・アルビカンス)という真菌が原因で起こる皮膚感染症で、特に「乳児寄生菌性紅斑」として知られています。
特徴的な所見:
・肛囲、鼠径部などしわのある部位にびらんや強い赤みが見られる
・主病変の周囲に衛星病変(小さな紅斑や丘疹)が散在
・通常の保湿やステロイド治療で改善しない
・下痢が続いている赤ちゃんに多い
このような特徴を持つ発疹を見つけたときには、単なるおむつかぶれと見なさず、カンジダ感染の可能性を疑う必要があります。
ステロイドの使用で悪化することも?
おむつかぶれがなかなか治らず、医療機関でステロイド外用薬(ロコイド軟膏、キンダベートなど)が処方されることもあります。ステロイドは炎症を鎮めるには有効ですが、真菌感染に対しては逆効果となる場合があります。
理由は、ステロイドの免疫抑制作用により、真菌の増殖を助長してしまうからです。つまり、カンジダ性皮膚炎にステロイドを使うと悪化するリスクがあるのです。
このため、皮膚症状のパターンを正確に見極め、真菌感染が疑われる場合には速やかに抗真菌薬(アゾール系:ミコナゾール、クロトリマゾールなど)の外用薬に切り替えることが重要です。
抗真菌薬を用いるタイミングと選択肢
真菌性皮膚炎の診断がついた場合、外用抗真菌薬が治療の中心となります。
主な抗真菌外用薬:
ミコナゾール:フロリードD軟膏など 比較的刺激が少なく乳児にも使用可
クロトリマゾール:エンペシド軟膏など 幅広い真菌に有効
ケトコナゾール:ニゾラールクリームなど 湿潤部位にはやや刺激強めのことも
1日1~2回の塗布を1週間程度継続することで改善が期待できますが、赤みが引いても数日間は塗布を継続し、再発を防ぐことが推奨されます。
おむつかぶれ対策の基本と予防法
カンジダ感染を未然に防ぐためにも、日常的な「おむつかぶれ予防」が重要です。
対策ポイント:
おしりふきは優しく、こすらず押し拭き
おむつ替えの頻度を増やす(特に下痢時)
通気性のよいおむつを使用
入浴時に石けんでやさしく洗い、完全に乾かす
皮膚保護目的でワセリンや亜鉛華軟膏を塗布
また、便が酸性に傾く「下痢便」では皮膚刺激が強く、皮膚バリアが一気に破綻しやすくなります。下痢が続いている赤ちゃんには特に注意が必要です。
保護者として気づきたい“違和感”
「単なるおむつかぶれ」と思って放置していると、実は真菌感染だった…というケースは珍しくありません。特に以下のような所見があるときには、早めの医療機関受診が望まれます。
肛囲や陰部のしわにびらんや赤みがある
その周囲に小さな赤い点がポツポツある
ステロイドを塗っても赤みが改善しない
数日で悪化してきた
まとめ:皮膚症状を「見極める」目を養おう
おむつかぶれの裏にカンジダ感染が潜んでいることは少なくありません。とくに、乳児寄生菌性紅斑は、外見上は軽いおむつかぶれと区別が難しいこともありますが、皮膚の場所・形状・拡がりを観察することで判断材料が得られます。
ステロイドを使用する前に、本当に“炎症”なのか、“感染”なのかを見極める。それが医療者にも、保護者にも求められる姿勢です。