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レセプトを宅急便で送っちゃダメ?信書の取り扱い
公開. 更新. 投稿者:薬局業務/薬事関連法規.この記事は約3分26秒で読めます.
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信書とは何か? 調剤報酬明細書(レセプト)の送付方法と法的注意点

医療機関や薬局において、保険請求のために作成される調剤報酬明細書(以下、レセプト)の送付は日常的に行われています。しかし、その送付方法について法的なルールがあることをご存じでしょうか。特に紙媒体のレセプトは「信書」に該当する可能性があるため、適切な送付手段を選ばなければ違法となる恐れもあります。
信書の定義、該当する文書・しない文書、送付方法の注意点、そして電磁的記録物の扱いについて、法的な観点から勉強していきます。
信書とは何か?郵便法における定義
信書は郵便法第4条第2項により、次のように定義されています:
「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」
この定義に基づき、信書とは「人の知覚によって認識できる情報が記載された紙等の有体物」であり、かつ「特定の相手に向けられた意思や事実が記された文書」とされています。
具体例:信書に該当する文書
・手紙、はがき
・見積書、納品書、請求書、領収書
・会議招集通知、契約書、申込書、証明書、許可証
・調剤報酬明細書(レセプト:紙媒体)
信書に該当しないもの
・書籍(新聞、雑誌、カタログなど)
・小切手、商品券、プリペイドカード
・物品や電磁的記録物(CD、DVD、USB等)
このように、信書に該当するかどうかは「文書の形態」と「内容の性質」の双方によって判断されます。
誰が信書を送れるのか?
信書の送達は、法律によって厳格に制限されています。具体的には、次の2つの事業者のみが信書を取り扱うことができます。
・日本郵便株式会社(郵便事業株式会社)
・総務大臣の許可を受けた信書便事業者
このため、宅配便業者(ヤマト運輸や佐川急便など)であっても、信書の送付には基本的に対応していません。送付内容が信書に該当する場合は、郵便または総務大臣の許可を得た事業者に依頼する必要があります。
総務省のウェブサイトでは、信書便事業者の一覧を確認することができます。
レセプトの送付:紙と電子で異なる取り扱い
紙媒体のレセプトは「信書」に該当
調剤報酬明細書(レセプト)が紙で作成されている場合、それは「事実の通知を行う文書」であり、かつ「人の知覚で認識可能な有体物」であることから、信書に該当します。
したがって、紙のレセプトを送る場合は、
・郵便局のサービス(定形郵便、レターパックなど)
・総務大臣の許可を受けた信書便事業者
に依頼しなければなりません。
電子媒体(CD-ROM等)は「信書」に該当しない
一方で、CD、DVD、USBメモリなどに電子データとして格納されたレセプトは、「文書」には該当しません。
その理由は、電磁的記録物は
「そこに記録された情報が、人の知覚によって直接認識できない」
ため、郵便法でいう「信書」とは見なされないのです。よって、宅配便等で送付しても法的問題は発生しません。
信書に関する法令・ガイドライン
信書の定義や取り扱いについては、総務省が2010年に発行したガイドラインやQ&A集で詳細に説明されています。これらには、以下のようなポイントが明示されています。
・電磁的記録物は、紙ではないため文書ではない
・信書の送達は、認可を受けた事業者に限定
・信書に該当する文書の例・非該当文書の例
また、医療関係者が誤って一般の宅配業者で紙のレセプトを送った場合、法令違反とされる可能性があるため、送付手段の選択は非常に重要です。
信書でなくても慎重な対応が求められる理由
たとえ電子媒体であっても、レセプトには患者の個人情報や医療情報といった機微なデータが含まれています。したがって、
・信書でないからといって、安易に送付方法を選ばない
・追跡可能な手段(宅急便、書留など)を選ぶ
・暗号化やパスワード保護など情報セキュリティを徹底
など、個人情報保護の観点から慎重な対応が必要です。
実務上の対応ポイントまとめ
推奨送付方法
・紙のレセプト:信書に該当➡郵便または信書便事業者
・CD等の電子レセプト:信書に該当しない➡宅配便やバイク便等も可(安全配慮は必要)
まとめ
信書とは、特定の相手に向けて意思や事実を記載した「紙の文書」であり、その送達は厳しく制限されています。特に医療機関や薬局が扱う紙のレセプトは信書に該当し、法律に基づいた送付が求められます。
一方で、電子媒体に保存されたレセプトは信書ではありませんが、その内容が極めて重要であることに変わりはありません。したがって、セキュリティと安全性に配慮した送付方法が必要です。
医療従事者として法的知識を備え、適切な文書の取り扱いを心がけることが、患者の信頼と法令遵守に直結するのです。