2026年1月8日更新.2,713記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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大人になってから1型糖尿病を発症?

大人になってから1型糖尿病を発症?―「若年性」「インスリン依存型」という誤解を整理する―

「1型糖尿病は子どもの病気」
「大人の糖尿病は2型」

医療者であっても、こうしたイメージをどこかに持ち続けている人は少なくありません。
実際、かつての医学教育では、

・若年性糖尿病
・インスリン依存型糖尿病(IDDM)

といった言葉が使われ、
「1型=若い人=インスリンが必須」
という理解が一般的でした。

しかし現在、この考え方は明確に修正されています。

1型糖尿病は、年齢を問わず発症する病気です。
大人になってから発症する1型糖尿病は、決して珍しくありません。

「なぜ大人でも1型糖尿病になるのか」
「2型との違いはどこにあるのか」
「医療現場で何が混乱を生むのか」
を、薬剤師の立場から整理します。

1型糖尿病とは何か ― 本質は「自己免疫」

1型糖尿病の本質は、
自己免疫による膵β細胞の破壊です。

・GAD抗体
・IA-2抗体
・ZnT8抗体 など

自己免疫反応によって、
インスリンを分泌する膵β細胞が徐々に、あるいは急速に破壊されます。

重要なのは、
この自己免疫反応は「年齢を選ばない」
という点です。

なぜ「若年性糖尿病」と呼ばれてきたのか

歴史的背景
かつては、
・小児で発症
・急激な高血糖
・すぐにインスリンが必要

という典型像が目立っていました。

一方、成人では、
・肥満
・インスリン抵抗性
・経口薬でコントロール可能

というケースが多く、
結果として
・若年性糖尿病
・成人型糖尿病

という分類が使われるようになりました。

病態ではなく、見た目と治療内容で分類していた
という点が、後に問題になります。

「インスリン依存型」という言葉が生んだ誤解

1型糖尿病は、最終的にインスリンが生命維持に必須になります。
そのため、

インスリン依存型糖尿病(IDDM)

と呼ばれていました。

しかし、この言葉には大きな問題がありました。

問題点
・2型糖尿病でもインスリン治療は行われる
・初期の1型ではインスリンがまだ出ていることがある
・「依存/非依存」は病態ではなく治療状態

このため現在では、
IDDM/NIDDMという分類は使われていません。

大人になってから発症する1型糖尿病は珍しいのか?

結論
いいえ、珍しくありません。

疫学研究では、

1型糖尿病患者の約半数が成人発症

とする報告もあります。

小児発症の1型糖尿病は、
・発症が急激
・症状が典型的
なため目立ちやすい一方、
成人発症例は見逃されやすいという特徴があります。

成人発症1型糖尿病が見逃されやすい理由

① 年齢が成人
「大人=2型」という先入観

② 初期はインスリンが不要なことがある
・内因性インスリン分泌が残存
・経口薬で一時的に改善

③ 肥満やインスリン抵抗性を伴うこともある
「見た目が2型」

このため、
「2型糖尿病として治療されている1型」
が一定数存在します。

緩徐進行1型糖尿病(LADA)

成人発症1型糖尿病を理解するうえで、
LADA(Latent Autoimmune Diabetes in Adults)は欠かせません。

LADAの特徴
・成人発症
・自己抗体陽性(GAD抗体など)

発症初期は
・インスリン分泌が保たれている
・インスリン治療が不要なことも多い

数年かけて分泌が低下し、インスリン必須になる

「2型に見えるが、本質は1型」

1型糖尿病でもインスリンが分泌されている?

これは多くの人が混乱するポイントです。

答え
はい、あり得ます。

代表的なケース
・発症初期
・ハネムーン期
・LADA

1型糖尿病は、
「インスリンが突然ゼロになる病気」ではありません。

自己免疫による破壊は、
・急速なことも
・緩徐なこともあります。

2型糖尿病との決定的な違い

重要なのは「分泌量」ではない

1型か2型かを分ける基準は、
・インスリンが出ているかどうか
・インスリンを使っているかどうか
ではありません。

決め手は

なぜインスリンが出なくなったのか

項目1型糖尿病2型糖尿病
原因自己免疫抵抗性+疲弊
抗体陽性陰性
経過破壊が進行徐々に低下
本質免疫疾患代謝疾患

2型糖尿病が1型に「移行」するのか?

答え
しません。

2型糖尿病でも、
・長期経過
・糖毒性

により、
インスリン分泌がほぼ枯渇することはあります。

しかしこれは、

β細胞の疲弊

であり、
自己免疫破壊ではありません。

2型が1型に変わることはない

という点は非常に重要です。

診断はなぜ重要なのか ― 結局インスリンなのに?

「どうせインスリンを使うなら、
1型か2型かは関係ないのでは?」

と思われがちですが、実際には違います。

① インスリン中断のリスク
・1型:中断=致死的
・2型:条件次第で調整可能

② 使える薬が違う
・1型では原則使えない薬がある
・LADAにSU薬を使い続けるリスク

③ 患者教育の内容が違う
・ケトアシドーシス
・シックデイ対応
・血糖自己管理の重要性

診断は将来管理の設計図

薬剤師として気づけるポイント

「2型らしくない2型」
・痩せ型
・若年〜中年
・早期から治療反応が悪い
・SU薬が効かない
・血糖悪化が速い

成人発症1型を疑うサイン

患者説明で使える言い換え

「1型糖尿病は、
子どもに多い病気と思われがちですが、
大人になってから発症する方も少なくありません。」

「最初はインスリンが少し出ていることもありますが、
病気の本質は自己免疫です。」

まとめ

・1型糖尿病は年齢を問わず発症する
・「若年性」「インスリン依存型」は古い概念
・成人発症1型、特にLADAは見逃されやすい
・分類の本質は自己免疫の有無
・正しい診断は、将来の安全な治療につながる

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生息地:雪国
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