2024年12月2日更新.2,476記事.

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セレコックスは胃にやさしい?

COX2阻害薬は胃にやさしい

セレコックス(セレコキシブ)は選択的COX2阻害のため消化管障害が少ないと言われており、処方頻度も多いのですが、実際はどうなのでしょうか?

NSAIDsの作用機序はシクロオキシゲナーゼ阻害によるプロスタグランジン産生抑制です。

シクロオキシゲナーゼにはCOX-1とCOX-2がありますが、COX-1は胃の粘膜を守る働きがあり、COX-2には炎症を促す働きがあります。
痛み止めとしての働きを期待するだけなら、COX-2だけに働いたほうが胃腸障害が少ないので良い、ということで開発されたのがCOX-2選択的阻害薬です。

COX-2に選択性の高い薬には、オステラック、ハイペン、モービック、セレコックス等があります。意外とボルタレンも選択性が高いらしいです。

COX-2発見後に開発された薬はコキシブ系と呼ばれますが、発見以前に開発され、後にCOX-2選択性が判明したエトドラクやメロキシカムなどはコキシブ系に含まれません。

COX-1COX-2
発現部位全身組織(常時発現)炎症部位(炎症反応により誘導)
作用生体恒常性の維持(胃酸分泌↓、止血、腎血流維持など)→生理的なPG合成痛みの増強→病的なPG合成
COX阻害痔胃腸粘膜・腎・肝の障害、血小板凝集抑制などが生じる抗炎症・鎮痛効果が現れる

胃腸障害は他のNSAIDsと変わらない

COX-2選択的阻害薬は、一般的に胃腸障害は少ないと言われていますが、様々な研究で従来のNSAIDsと差が無いことが明らかにされています。

添付文書の臨床成績でもセレコキシブと従来のNSAIDsとで消化管系副作用の発現頻度に差が無かったことが記されています。

セレコックスは持続性

セレコックスの用法は1日2回であり、ロキソニンやカロナールと比べて持続性の鎮痛薬である。

医薬品名半減期用法
ロキソニン約1時間15分1日3回
ボルタレン1.2時間1日3回
カロナール2.36時間投与間隔4〜6時間以上
セレコックス約5〜9時間1日2回
ハイペン6時間1日2回
トラマール約6.5時間1日4回

患者から「どのくらいの時間効きますか?」という質問も多い。
血中濃度=効果持続時間ではないが、一つの指標として伝えることはできる。

シクロオキシゲナーゼ(COX)の種類

COXには、主にCOX-1とCOX-2が存在し(COX-3は主に中枢神経系に存在するCOX-1のスプライシングバリアントであるが、不明な点が多い)、COX-1は全身の組織に存在し、常時PGsを合成しており、胃粘膜細胞の防御、止血等を行っています。

一方COX-2は、脳や腎臓以外の組織では通常は発現されておらず、炎症が発生するとその部分で発現される誘導型の酵素です。

また、COX-2はがん細胞においても高度に発現されている例が多くあることから、わが国で唯一発売されているCOX-2選択的阻害薬であるセレコキシブは、米国では抗がん剤としても使用されています。

インドメタシン等の非選択的なNSAIDsはCOX-1も阻害するために抗炎症以外の作用も示します。
特に消化管出血を引き起こすことから、胃腸薬が併用されます。

coxには、cox-1~COX-3の三種類がありますが、cox-1は定常的に産生されていて、胃粘膜保謹の役割はこの酵素が担っています。
またCOX-2は炎症部分で産生されていることから、実はこの活性化を阻害することが抗炎症作用の本質なのだと考えられています。
cox-1には作用せずCOX-2の活性化のみを阻害するような薬は、胃腸障害などの副作用がない「夢の解熱鎮痛薬」になることが期待されています。

シクロオキシゲナーゼ(COX)には三種類のアイソザイムが存在します。
そして、NSAIDsはcoxを阻害し、プロスタグランジン(PG)やトロンポキサンA2(TXA2)の産生を抑制することで、解熱や鎮痛、抗炎症などの作用を発揮します。

cox-1が全身の細胞に広く分布して恒常的に発現していることから「構成型シクロオキシゲナーゼ」と呼ばれるのに対して、COX-2は「誘導型シクロオキシゲナーゼ」と呼ばれ、一部の臓器を除いて通常は発現が低く、炎症時に産生されてPGE2やPGI2などの産生を冗進させることで、痛みの増強だけでなく血管拡張や血管透過性の充進といった炎症反応を進行させる作用をもつものです。
このことから、この酵素の活性を阻害することが解熱鎮痛や抗炎症作用の本質をなすと考えられています。

cox-1はPGE1を産生し、胃粘膜の血流を増加させることで粘膜保護に働きます。
汎用されるNSAIDsが胃炎や胃潰傷などの副作用をもつのはcox-1を阻害するためであり、COX-2のみに選択的な阻害薬は胃障害のない解熱鎮痛消炎薬になるものと期待されていました。
そして、ロコキシブやセレコキシブといった「コキシブ系薬剤」が開発され、従来のNSAIDsに比べて胃腸障害を減少させることが確認されたことから、米国での発売(1999年)を機に、現在までに世界100ヵ国以上で承認されるようになりました。

COX-2選択的阻害薬は心血管リスクを上昇させる?

「コキシブ系薬剤」の中のロフェコキシブ(日本未承認薬)やセレコキシブといった薬剤は、心筋梗塞などの血栓・心血管系合併症の発生リスクが上昇することが報告され、大きな問題となりました。

これは、COX-2には血管拡張作用やPGI2阻害作用があり、PGI2には血小板凝集阻害作用があることから、これを阻害して血栓ができやすくなったのだと考えられています。

一方のcox-1には、トロンポキサンAs(TXA2)を産生して血管収縮・血小板凝集を生じやすくさせます。
つまり、COX-2の作用のみを阻害しcox-1には作用しなかったことで、このような心血管イベントを増大させたと考えられるのです。

この副作用発現のメカニズムについては、COX-2を選択的に阻害することによって、血管を保護するPGI2等の保護系のPGを低下させたことや、マクロファージの活性化、血圧の上昇等の可能性が考えられています。

COX-2阻害薬で血が固まる?

胃腸障害が少ないといわれ、期待されていたCOX-2選択阻害薬(コキシブ系)ですが、ロフェコキシブは2004年に自主回収されました。
心筋梗塞などの血栓・心血管系合併症の発生リスクの上昇が指摘されたからです。

NSAIDsにはCOX-1を阻害することにより、TXA2(血小板凝集物質)の合成を阻害し、血小板の凝集を抑制する働きがあります。
この血小板凝集抑制作用を期待してアスピリンなどは処方されます。

COX-2選択阻害薬には、この血小板凝集抑制作用がないことに加えて、COX-2を阻害することによって血小板凝集抑制作用を持つプロスタサイクリンの合成も阻害してしまうので、動脈硬化が加速します。

そのためCOX-2阻害薬は心筋梗塞、脳卒中などの致命的な心血管系有害事象のリスクを増大させる可能性があります。

セレコックスは心血管リスクを上昇させない

COX-2選択阻害薬においては、心血管イベント発現リスク(CVリスク)の増加が懸念されていました。しかし、海外でセレコキシブのCVリスクを検討したPRECISION(Prospective Randomized Evaluation of Celecoxib Integrated Safety vs. Ibuprofen Or Naproxen)試験では、心血管疾患に対する安全性に関して、セレコキシブはナプロキセン、イブプロフェンに対する非劣性が示されました。

国内の特定使用成績調査でも、34か月時点での心血管イベント累積発現率はセレコキシブ群1.93%、非選択的NSAIDs群2.44%であることが示されており、セレコキシブと非選択的NSAIDsでCVリスクに差はみられませんでした。

セレコックスの長期服用は危険?

NSAIDsの長期服用は消化器系の副作用や腎機能障害などもあり、必要最小限にとどめるべきと思われます。
いずれのNSAIDsに関しても長期投与には注意を要しますが、特にセレコックスについては添付文書上厳しく制限されているので注意する。

セレコックスの警告に、

外国において、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2選択的阻害剤等の投与により、心筋梗塞、脳卒中等の重篤で場合によっては致命的な心血管系血栓塞栓性事象のリスクを増大させる可能性があり、これらのリスクは使用期間とともに増大する可能性があると報告されている。

と、書かれております。

本剤を使用する場合は、有効最小量を可能な限り短期間投与することに留め、長期にわたり漫然と投与しないこと。

慢性疾患(関節リウマチ、変形性関節症等)に対する使用において、本剤の投与開始後2~4週間を経過しても治療効果に改善が認められない場合は、他の治療法の選択について考慮すること。

本剤の1年を超える長期投与時の安全性は確立されておらず、外国において、本剤の長期投与により、心筋梗塞、脳卒中等の重篤で場合によっては致命的な心血管系血栓塞栓性事象の発現を増加させるとの報告がある。

原則として長期投与を避けること。

原因療法があればこれを行い、本剤を漫然と投与しないこと。

長期処方するなするなのオンパレードです。

セレコックスが漫然と長期処方されている場合は、疑義照会が必要と指導されます。漫然なのか、熟慮してなのかはこちらじゃわかりませんが。

COX2阻害薬と大腸がん

NSAIDsが大腸がんに効くという話がある。
NSAIDsのような胃粘膜、小腸粘膜にダメージを与える薬は、大腸粘膜にも悪影響を与え、大腸がんなどの悪性疾患を増やすようなイメージがありますが。

非ステロイド抗炎症薬(NSAIDS)は、アラキドン酸カスケードにおけるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで種々のプロスタグランジン(PGD2、PGE2、PGF2α、PGI2) とトロンボキサンA2(TXA2) の産生を抑制し、抗炎症作用を発揮する。
中でもCOX2に関しては、正常粘膜に比べて大腸腫瘍(腺腫および癌) において強く発現することが報告されている。
そのため近年、選択的COX2阻害薬のセレコキシブ(セレコックス) の抗腫瘍効果が注目されている。

セレコキシブによる抗腫瘍効果は、COX2阻害作用によるものと、COX2阻害作用によらないものがあると考えられている。COX2阻害作用による抗腫瘍効果の機序としては、(1)腫瘍細胞の増殖抑制、(2)アポトーシスの誘導、(3)血管新生の抑制、(4)腫瘍免疫反応の活性化、(5)浸潤・転移抑制、などが推測されている。
例えばPGE2は生体内で上皮細胞増殖因子受容体(EGFR) の活性化を誘導して細胞増殖や浸潤能を亢進させたり、アポトーシスを抑制したりすることが示唆されており、COX2阻害薬がこれらの作用を抑制することで抗腫瘍効果を発揮する可能性が考えられている。
一方、COX2阻害作用によらない機序については不明な点が多いが、COX2阻害薬はP糖蛋白(P-gp)などのABCトランスポーターによる抗癌剤の耐性化を阻害し、抗癌剤の効果を増強する可能性が示唆されている。
臨床的には、1970年代から、長期にわたってアスピリンなどのNSAIDsを服用している患者では大腸癌の罹患率や死亡率が有意に低いことが報告されていた。
さらに2000年以降、セレコキシブやロフェコキシブを使用した複数のランダム化比較試験が行われ、COX2阻害薬が大腸腺腫の発生を抑制することが報告されている。

また、ステージⅠ~Ⅲの大腸癌に関しても、化学療法や放射線治療とCOX2阻害薬の併用の有効性が報告されている。
そのほか、NSAIDs の常用が乳癌や前立腺癌のリスクを有意に低下させるとの報告もある。
なお、セレコキシブ以外のNSAIDsでは、アスピリンが大腸腺腫の再発リスクを40%減少させることが日本の研究で報告されている。
ただし、大腸癌の予防や補助療法におけるNSAIDsの至適投与量や投与期間、低用量アスピリンの併用の要否などについては明らかになっておらず、さらなる検討が必要である。
特に選択的COX2阻害薬に関しては、長期投与により、血小板凝集抑制作用および血管拡張作用を有するPGI2の産生が低下する可能性が指摘されており、実際に心血管系イベントが有意に増加したとの報告もある。

COX-2阻害薬の特徴

COX-1は胃粘膜、血小板などを含め多くの細胞に常に発現しているが、COX-2は炎症関連細胞などへの種々の刺激により発現が増す。
そのため、COX-2阻害薬は胃・十二指腸潰瘍の発症率を低下させ、消化管出血、穿孔及び閉塞などの発症率もある程度低下させる。
しかし、消化管潰瘍の危険因子を有する例では、プロスタグランジン(PG)製剤やプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用が必要である。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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