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エンレストとACE阻害薬は併用禁忌?
公開. 投稿者:高血圧.この記事は約3分35秒で読めます.
8,439 ビュー. カテゴリ:エンレストとACE阻害薬は併用禁忌?
エンレストってバルサルタンの仲間じゃないの?
エンレストの併用禁忌に、
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(アラセプリル、イミダプリル塩酸塩、エナラプリルマレイン酸塩、カプトプリル、キナプリル塩酸塩、シラザプリル水和物、テモカプリル塩酸塩、デラプリル塩酸塩、トランドラプリル、ベナゼプリル塩酸塩、ペリンドプリルエルブミン、リシノプリル水和物)を投与中の患者、あるいは投与中止から36時間以内の患者
と記載されている。
併用禁忌であり、しかも「投与中止から36時間以内の患者」に禁忌という厳しめの設定。
エンレストの成分は、サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物であり、中にバルサルタンが含まれる構造である。そのため、AⅡ受容体拮抗薬やARBとの併用には注意が必要であることはわかる。
しかし、本家のバルサルタンはACE阻害薬とは併用禁忌ではなく、併用注意である。
エンレストがACE阻害薬と併用禁忌の理由としては、以下のように書かれている。
併用により相加的にブラジキニンの分解を抑制し、血管浮腫のリスクを増加させる可能性がある。
エンレストは、重大な副作用である血管浮腫の割合が0.2%とやや多いようだ。
AⅡ受容体拮抗薬は、ブラジキニンには影響せず、咳の副作用もないので、エンレストと併用禁忌ではなく併用注意止まりである。
エンレスト中のサクビトリルは、ネプリライシン阻害薬であり、ネプリライシンはペプチダーゼなのでタンパク質(酵素等)を分解する働きがある。そのため、サクビトリルがブラジキニンの分解を阻害して、血中濃度を上げてしまい、血管浮腫のリスクが増加するわけだ。
また、エンレストはブラジキニン濃度を上昇させるため、ACE阻害薬同様、咳の副作用を生じる可能性がある。
エンレストでBNP上昇?
心不全が悪化すると、増加するマーカーとしてBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)がありますが、エンレストの投与により、BNPが上昇します。
本剤の薬力学的作用により本剤投与後にネプリライシンの基質であるBNPの上昇がみられることから、本剤投与後にBNPを測定する際は値の解釈に注意すること。
ネプリライシンはBNPを分解するため、ネプリライシン阻害薬であるサクビトリル投与によりBNP上昇する可能性がある。
同じようなマーカーとしてANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)というのもあるが、同様にエンレスト投与により上昇する。
ANPは心房に負荷がかかった時に、BNPは心室に負荷がかかった時にそれぞれの筋細胞から分泌される。
BNPがなぜ心筋性ナトリウム利尿ペプチドではなく、「脳性」ナトリウム利尿ペプチドなのか、という点が気になるが、BNPが豚の脳内から発見されたからということらしい。
BNPには、ナトリウム利尿作用、血管拡張作用があり、心保護作用がある。
心不全になると血中BNP濃度が上昇するが、これは心臓を守るために上昇しているわけだ。エンレストによりBNPを上昇させるのも心臓を守るため。
エンレストによる心不全モニタリングにはBNPではなく、NT-proBNPが使われる。
エンレストと血管浮腫
エンレストの重大な副作用に血管浮腫があり、まれに気道閉塞につながる血管浮腫が現れることがある。
NEP(ネプリライシン)はブラジキニンの分解にも関与するため、sacubitrilatのNEP阻害作用により血中ブラジキニンが上昇し、血管拡張や血管透過性が亢進され、血管浮腫が起こると考えられる。
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1 件のコメント
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