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痛風患者に食事制限は必要ない?
公開. 更新. 投稿者:痛風/高尿酸血症.この記事は約9分4秒で読めます.
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プリン体の食事制限は必要無い?
従来は高尿酸血症の患者ではプリン体を制限するために、プリン体含有量の多い食品の摂取が禁じられていました。
しかし、最近では尿酸代謝の解明が進み、食事から摂取する外因性プリン体よりも、体の中で作られる内因性プリン体のほうが2~3倍多いことが判明しました。コレステロールと同じようなことですね。
このため、プリン体を多量に摂取しても尿酸値への影響はさほど大きくないと考えられています。
しかし、内因性のプリン体はエネルギー伝達物質であるATPを合成する際に再利用されるのに対し、食物由来のプリン体はほとんど利用されないことも知られており、やはり食事由来のプリン体摂取は控えるべきという基本的な考えは変わっていません。
プリン体 | 食べ物 |
---|---|
極めて多い(300mg~) | 鶏レバー、干物(マイワシ)、あんこう(肝酒蒸し)など |
多い(200~300mg) | 豚・牛レバー、カツオ、マイワシ、干物(マアジ)など |
中程度(100~200mg) | 肉(豚・牛・鶏)類の多くの部位、魚類など |
痛風と生活習慣
痛風は100%生活習慣が原因であるとの誤解がある。
血清中の尿酸は7.0mg/dLを超えると結晶化するため、「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)」では血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるものを高尿酸血症と定義している。
日本では近年、男性において高尿酸血症、痛風患者が増加傾向にあることが報告されている。
このことから、痛風・高尿酸血症は環境要因に起因する典型的な生活習慣病と認識されているが、その原因のすべてが生活習慣にあるわけではない。
近年、腎臓の近位尿細管において尿酸の排泄と再吸収に関与するトランスポーターの存在が確認されている。
URAT1をはじめとするトランスポーターが血清尿酸値に影響する遺伝要因の大半を占め、排泄低下型の高尿酸血症を惹起する。
生活習慣に加え、遺伝要因も忘れてはならない要素であり、両者は密接に関連する。
プリン体の食事制限
高尿酸血症の食事に関して、厳格なプリン体の制限は必要とされないことが多いようですが、プリン体を含む食品の摂取は控えることが勧められています。
ガイドラインの中では、100g中にプリン体を200mg以上含むものは高プリン食(レバー、干物、乾物など)とされ、1日のプリン体の摂取量は400mg以上とならないようにすることが実際的とされています。
また、高尿酸血症というとプリン体に関心が集まりがちですが、より重要なのは、摂取エネルギーの適正化を図り、肥満を解消・予防することにあります。
アルコールの摂取は、肝臓のアルコール代謝系の亢進によるエネルギー消費の増大により内因性のプリン体の分解を促進し、血清尿酸値を上昇させます。
さらにアルコールによる有機酸の増加は、尿細管での尿酸の再吸収を増加させ、排泄を抑制します。
ビールはプリン体の含有量が多く、よく問題とされますが、それ以外のアルコールに対しても摂取を制限することが必要で、ガイドラインの中では、日本酒1合、ビール500mL、ウイスキーダブル1杯、禁酒日2日/週以上が摂取の目安とされています。
プリン体はプリンに多く含まれる?
プリン体というとお菓子のプリンをイメージしてしまいます。
そのため、痛風患者はプリンを食べてはいけない、と誤解する人もいます。
お菓子のプリンは正式には「プディング」なので別物です。
プディングの材料は主に牛乳と卵と砂糖ですが、いずれもプリン体の少ない食材です。
卵とプリン体
プリン体は細胞の核酸に含まれています。
したがって、細胞数の多いレバーなどの内臓には、その分プリン体が多く含まれています。
鶏卵は1個の細胞なので、プリン体は少ないです。
野菜や果物も細胞はありますが、肉や魚に比べ水分を多く含むので、その分プリン体が少ないです。
高尿酸血症の食事療法
・食事
尿酸はプリン代謝の最終産物であるため、1日の摂取量が400mgを超えないようにする。
食品100gあたりプリン体を200mg以上含むものを高プリン食と呼び、動物の内臓、魚の干物、乾物などがある。
野菜・海草類は尿をアルカリ化するため摂るようにする。
・水分
尿中の尿酸濃度を低下させるために、1日2000mLの尿量を確保するように十分に水分を摂取する。
ただし、肝・腎・心疾患などで水分摂取に制限のある場合には注意する必要があり、医師の指示を確認する。
・飲酒
アルコール飲料は血清尿酸値を上昇させる作用があるため、酒類を問わず過剰摂取は慎む。
中でもビールはプリン体を多く含むため控える。
血清尿酸値への影響は、日本酒1合、またはビール500mL、またはウイスキー60mL程度より現れると考えられる。
過食や高プリン・高脂肪・高蛋白質食嗜好、常習飲酒、運動不足などの生活習慣は、高尿酸血症の原因となるばかりでなく、肥満、高血圧、糖・脂質代謝異常、メタボリックシンドロームなどの合併と深く関与します。
そのため、血清尿酸値が7.0mg/dLを越える患者では、適切な生活指導による生活習慣の是正が大切です。
食事療法としては、適切なエネルギー摂取、プリン体・果糖の過剰摂取制限、十分な飲水が勧められます。
・肥満傾向にある高尿酸血症では、肥満の解消により血清尿酸値の改善が期待されるため、糖尿病治療に準じた摂取エネルギーの適正化を図る。
・高プリン食を極力控え、プリン体として400mg/日を越えないことが望ましいとされる。
・果糖やショ糖を含む食品は、血清尿酸値を上昇させることが報告されているため、過剰摂取に注意する。
・野菜や海藻類などのアルカリ性食品は、尿酸の尿中への溶解度を高めるため、摂取が勧められる。
・尿酸の尿中飽和度を減少させるため、十分な水分摂取が勧められる(尿量2,000mL/日以上の確保を目標とする)。
アルコールは血清尿酸値を上昇させるため、種類を問わず過剰摂取を控えます。血清尿酸値への影響を最低限に保つ目安は、1日あたり日本酒1合、ビール500mL、ウイスキー60mL程度です。
アルコールは、プリン体の有無に関わらず、内因性プリン体分解の亢進と腎における尿酸排泄低下に関連して血清尿酸値を上昇させる。
とくにビールは、プリン体を多く含むばかりでなく、他の酒類よりも高エネルギーであり肥満を助長する可能性があるため、注意を要する。
食品100gあたりのプリン体含有量
食品のプリン体含有量(100gあたり) | |
---|---|
極めて多い(300mg~) | 鶏レバー、マイワシ干物、イサキ白子、あんこう肝酒蒸し |
多い(200~300mg) | 豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、マアジ干物、サンマ干物 |
少ない(50~100mg) | ウナギ、ワカサギ、豚ロース、豚バラ、牛肩ロース、牛タン、マトン、ボンレスハム、プレスハム、ベーコン、ツミレ、ほうれんそう、カリフラワー |
極めて少ない(~50mg) | コンビーフ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、焼ちくわ、さつま揚げ、カズノコ、スジコ、ウインナーソーセージ、豆腐、牛乳、チーズ、バター、鶏卵、とうもろこし、ジャガイモ、さつまいも、米飯、パン、うどん、そば、果物、キャベツ、トマト、にんじん、大根、白菜、海藻類 |
痛風患者はビール飲んじゃダメ?
痛風患者にビールはダメ、という強いイメージがあります。
ビール=プリン体というイメージ。プリン体ゼロのビールも売れています。
しかし、ビール中のプリン体含有量はそれほど多くないと言います。
蒸留酒にはプリン体はあまり含まれず、醸造酒の方が多いです。
特に、地ビール、紹興酒には10mg/100mL以上のプリン体が含まれます。
実際量に換算すると、通常のビールには1缶あたり12~25mg/350mL、大瓶1本あたり21~44mg/630mL、地ビールには1本当り19~55mg/330mL、紹興酒には1合当たり21mg/180mLのプリン体が含まれることになります。
だから、ビールを飲んでもいいというわけではありません。
量的には多くないにもかかわらず、ビールを1缶毎日飲む人では6年間に血清尿酸値が0.5~1.0mg/dL上昇すると報告されています。
アルコール自体が尿酸値を上げる可能性があります。
ビールに限らず、飲酒は控えた方がよいです。
近年の生活指導では、厳格すぎるプリン体の摂取制限は避ける傾向にあります。
プリン体は多くの食品に含まれているため、ともすれば摂食食品のバラエティを崩すことになるからです。
しかし、プリン体を特に多く含む食品は制限するのがよいです。
もつ煮込みなど内臓料理はなるべく食べないように注意する必要があります。
一方、野菜類に含まれているプリン体は意識しなくてもよい。
野菜類には繊維が多く含まれ、繊維とともにプリン体も排泄されうるからです。
また、一部の野菜にはインスリン抵抗性を下げる効果もあります。
アルコールに関しては、ビール中ビン1本/日までは許容範囲とみなし、週2日はアルコールを摂取しない日をつくることができればよしとしている。
嗜好品では、果糖入りのソフトドリンクが要注意。
果糖は尿酸値を上昇させる。
同じ果糖でも生果物にはビタミンCが含まれ、ビタミンCは尿酸値を下げる効果が期待できる。
また、乳製品も尿酸値を下げるといわれており、低脂肪乳製品も積極的に摂取すべき食品の一つである。
痛風にはビールより発泡酒がいい?
プリン体を多く含む食品として有名なビール。
ビールの主原料である麦芽には多くのプリン体が含まれています。
一方、近年市場に多く出回るようになった発泡酒は、麦芽使用率が低く、プリン体はビールの1/2から1/4程度です。
しかし、アルコールそのものに尿酸値上昇作用があるので、高尿酸血症患者にはアルコール飲料は種類を問わず控えるべきとされています。
お酒のアルコールは肝臓で尿酸が作られるのを促進し、尿酸濃度をあげてしまいます。
そのため、アルコールを多く飲んだ後に痛風の発作がおこりやすいようです。
痛風にはビールより焼酎のほうがいい?
ビールより焼酎やワインのほうが体にいいと言われます。
ワインにはポリフェノールが含まれていて、抗酸化作用により動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールの酸化を抑え、心臓病を防いでくれます。
焼酎は蒸留酒であるため蒸留の過程の中で糖分が飛び、できあがった焼酎に糖分は含まれないため、日本酒やビールに比べて、カロリーが低いです。
日本酒と焼酎の違いは?
日本酒は醸造酒、焼酎は蒸留酒です。
醸造酒とは、原料をそのまま、もしくは原料を糖化させたものを発酵させたお酒です。
蒸留酒は、醸造酒を蒸留し、アルコール分を高めたお酒のことです。
なので、日本酒を蒸留したら焼酎になります。日本酒の原料は米、焼酎の原料は雑穀全般ですが。
ビールと発泡酒の違いは?
ビールは、麦芽(モルト)、ホップ及び水を原料として発酵させたものです。
発泡酒は麦芽の比率を低くして、米とかとうもろこしを使います。
これでコストが安くなるというわけではなく、発泡酒のほうが酒税法での税率が安く設定されているので発泡酒は安いんです。
何がちがうのかというと、「麦芽比率」。
簡単にいうと、麦芽比率が67%未満のものが発泡酒となるのですが、 実際にはその67%以下のなかでさらに三つに区分されており、課税も三段階に分かれています。
発泡酒といえども、そのなかでいちばん高い麦芽比率の場合はビールと同じ課税となるため、 メーカーは努力を重ねて、味と旨さを追求。課税がもっとも低くなる麦芽比率が25%未満でも十分においしい発泡酒を作りました。
現在わたしたちが飲んでいる発泡酒のほとんどがこの麦芽比率25%未満の発泡酒です。 ビールは67%以上です。
第三のビールは麦芽を使用しないことで、さらに税率が安くなっています。
痛風患者はお酒を飲んではいけない
アルコール飲料はプリン体の有無に拘らず、それ自体の代謝に関連して血清尿酸値を上昇させるため、高尿酸血症・痛風の患者は、過剰摂取を慎むべきである。
特にビールはプリン体を多く含むばかりでなくカロリーも高いため、肥満を助長する可能性もある。
血清尿酸値への影響を最低限に保つ目安は500mL程度だ。
ちなみに日本酒は1合、ウィスキーでは60mLが目安となる。
アルコールと尿酸
アルコールによる尿酸値上昇(痛風の悪化)の原因については、プリン体含量のみでなく、乳酸値の上昇も関与している。
エタノール代謝酵素であるアルコール脱水素酵素はNADを補酵素とするが、エタノールが代謝されるとNADH2が増加し、乳酸脱水素酵素による乳酸合成を促進する。
その結果、増加した乳酸が尿酸と腎分泌を競合し、尿酸値が上昇すると考えられている。
ちなみに、アルコールのプリン体含有量はビールが最も多いが、ウイスキーは少なく、焼酎はほとんど含有しない。
したがって、どうしても禁酒できない痛風患者にはビールを避け、焼酎を薦める(ただし、焼酎の1日適切量は0.4合である)。
ビールは飲んでも太らない?
アルコールのカロリーは1gあたり約7kcalです。
しかし、人間はアルコールの持っているカロリーを全ては使えないらしいです。
そのため、お酒だけ飲んでも太りません。
ビールで太るのは炭酸ガスが胃酸分泌を促し食欲を増進するからです。
飲酒と尿酸値
飲酒による尿酸値の上昇には、ビールや日本酒などに含有されるプリン体だけでなく、二次的な尿酸上昇による腎尿酸分泌阻害も関与している。
高尿酸血症治療薬を服用中の患者には、飲酒する場合は適量を厳守するよう指導する。
ベンズブロマロン(ユリノーム)では、肝毒性を誘発する可能性が高まるため、特に注意が必要である。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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