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ロイコンは痛風に禁忌?― アデニン製剤と高尿酸血症の関係
公開. 更新. 投稿者: 33 ビュー. カテゴリ:痛風/高尿酸血症.この記事は約3分25秒で読めます.
目次
ロイコンは痛風に禁忌?

「ロイコンはなぜ痛風に禁忌なのですか?」
この質問、実は添付文書を丸暗記しているだけでは答えにくいものです。
しかし、
・セントラルドグマ
・核酸塩基
・プリン体代謝
を一つずつ整理すると、禁忌の理由は驚くほど必然的であることがわかります。
「ロイコン=アデニン」という事実を起点に、
なぜ痛風・尿路結石で禁忌になるのかを、
患者にも説明できるレベルまで勉強していきます。
ロイコンとはどんな薬か
ロイコン(一般名:アデニン)は、
白血球減少症の改善を目的に使用される核酸関連製剤です。
適応症
放射線曝射ないし薬物による白血球減少症
作用の考え方
ロイコンは造血刺激因子(G-CSF)のように
「サイトカインとして細胞に指示を出す薬」ではありません。
核酸合成の材料そのものを補給する薬
という、非常にストレートな発想の薬です。
アデニンとは何か
ここがすべての出発点です。
アデニンは核酸塩基
アデニンは、
・DNA
・RNA
を構成する核酸塩基の一つです。
核酸塩基は大きく2種類に分かれます。
| 分類 | 核酸塩基 |
|---|---|
| プリン塩基 | アデニン、グアニン |
| ピリミジン塩基 | シトシン、チミン、ウラシル |
ロイコンの有効成分であるアデニンはプリン塩基に分類されます。
なぜ「核酸の材料」が薬になるのか
白血球は、体内で最も盛んに分裂・増殖する細胞の一つです。
そのため、
・DNA合成
・RNA合成
が極めて活発に行われています。
つまり、白血球が減少している状態では、
「核酸の材料が大量に必要な状態」
と考えることができます。
そこで、
核酸塩基(アデニン)を補給する
→ DNA・RNA合成を助ける
→ 白血球の回復を促す
というのが、ロイコンの基本的な作用原理です。
ここからが本題:プリン塩基の代謝
アデニンは体内でどのように処理されるのでしょうか。
プリン塩基の分解経路
プリン塩基(アデニン・グアニン)は最終的に、
プリン塩基
↓
ヒポキサンチン
↓
キサンチン
↓
尿酸
という経路をたどります。
人間の弱点
人間は、
尿酸をさらに分解する酵素(ウリカーゼ)
を持っていません。
そのため、
尿酸が最終産物として体内に残る
という構造的な弱点があります。
痛風・高尿酸血症とは何か
痛風は、
・尿酸値の上昇
・尿酸塩結晶の沈着
によって起こる疾患です。
尿酸が増えると何が起こるか
・関節内で結晶化 → 痛風発作
・尿中で結晶化 → 尿路結石
・腎機能障害のリスク上昇
つまり、
尿酸を増やす方向に働く物質は、
痛風患者にとってリスクそのもの
と言えます。
ロイコンが痛風に禁忌となる理由
ここまでの話をつなげると、答えは明確です。
ロイコン投与で起こること
・アデニン(プリン塩基)を投与
・必要な分は核酸合成に利用
・余剰分は分解
・尿酸が増加
その結果
・高尿酸血症の悪化
・痛風発作の誘発
・尿路結石の形成・増悪
これが、添付文書にある
「痛風、尿路結石のある患者[症状を悪化させることがある]」
という禁忌の、本質的な理由です。
「禁忌」とされている意味
ここで重要なのは、
これは経験則ではなく、
代謝経路から必然的に導かれる禁忌
であるという点です。
プリン塩基 → 尿酸
アデニン=プリン塩基
この時点で、理論的にリスクが確定しています。
核酸サプリ・酵母サプリとの共通点
実は、ロイコンと似た構造を持つものがあります。
・核酸サプリメント
・酵母(ビール酵母など)を含む健康食品
これらも、
・核酸
・プリン塩基
を多く含み、尿酸を増やす方向に働く点で共通しています。
違いは、
・医薬品か食品か
・用量が管理されているかどうか
だけです。
現在ロイコンがあまり使われない理由
理屈としては非常に美しい薬ですが、
・尿酸上昇
・腎障害
・痛風リスク
という副作用も、理屈通りに起こるという問題があります。
現在では、
G-CSF製剤など
より選択的で安全性の高い治療法が主流となり、
ロイコンの使用頻度は減少しています。
患者説明に使える一言
患者さんには、次のように説明できます。
「ロイコンは、白血球を作る材料になる薬ですが、
同時に尿酸の材料にもなります。
痛風のある方では、症状を悪化させる可能性があるため使えません。」
まとめ
・ロイコンの有効成分はアデニン(プリン塩基)
・プリン塩基の最終代謝産物は尿酸
・尿酸増加は痛風・尿路結石を悪化
・よってロイコンは痛風・尿路結石で禁忌
・これは代謝経路から必然的に導かれる禁忌




