2026年1月31日更新.2,736記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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吸着薬と同時服用の可否の判断

吸着薬と他薬併用の考え方

脂質異常症、慢性腎臓病、高カリウム血症、過敏性腸症候群など、近年の薬物治療では「腸管内で作用する吸着薬」が重要な役割を担っている。一方で、これらの薬剤は全身に吸収されない代わりに、他の内服薬を物理的に吸着してしまう可能性を常に内包している。

添付文書には併用注意薬が列挙されているものの、

「記載されていない薬なら安全なのか?」
という疑問は、日常業務で必ず直面する。

他薬との同時服用の可否・間隔投与の考え方を整理する。

吸着薬に共通する基本原理

吸着薬の多くは、

・樹脂
・多孔性構造
・イオン交換能

といった物理化学的特性により、腸管内で標的物質を捕捉する。

重要なのは、
この吸着は「選択的」ではなく「確率的」
という点である。

つまり、

・標的物質(胆汁酸、K⁺、リンなど)
・たまたま同時に存在した薬物

の両方を一緒に捕捉する可能性がある。

この前提を踏まえたうえで、各薬剤群を見ていく。

陰イオン交換樹脂

● コレスチラミン(クエストラン)
● コレスチミド(コレバイン)

特徴
・胆汁酸(陰イオン)を吸着
・LDLコレステロール低下作用
・腸管内で完全に作用し、吸収されない

注意点
陰イオン交換樹脂は非選択性が極めて高い。
ワルファリン、ジゴキシン、甲状腺ホルモン、脂溶性ビタミンなどが代表例だが、理論上はほぼすべての内服薬が影響を受けうる。

添付文書の記載
● コレスチラミン(クエストラン)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
抗リウマチ剤:メトトレキサート、サラゾスルファピリジン
非ステロイド性抗炎症剤:ピロキシカム、テノキシカム、メロキシカム、ジクロフェナク、イブプロフェン、フェニルブタゾン、ナプロキセン、フルフェナム酸アルミニウム
副腎皮質ホルモン剤:ヒドロコルチゾン
免疫抑制剤:ミコフェノール酸 モフェチル
チアジド系降圧利尿剤:クロルタリドン、メチクラン、メフルシド
テトラサイクリン
フェノバルビタール
バンコマイシン塩酸塩
甲状腺ホルモン製剤
ジギタリス強心配糖体
ラロキシフェン塩酸塩
フィブラート系薬剤:ベザフィブラートフェノフィブラート
これらの薬剤の血中濃度が低下するおそれがある。
これらの薬剤の吸収阻害を避けるために、本剤投与前4時間若しくは投与後4~6時間以上、又は可能な限り間隔をあけて慎重に投与する。
本剤は陰イオン交換樹脂であり、消化管内で胆汁酸、陰イオン性物質や酸性物質等と結合してその吸収を遅延・抑制させる。
ワルファリンワルファリンの吸収が阻害され、抗凝血作用が減弱されるおそれがあるので、併用する場合は薬剤の吸収阻害を避けるために、本剤投与前4時間若しくは投与後4~6時間以上、又は可能な限り間隔をあけて慎重に投与する。本剤は陰イオン交換樹脂であり、消化管内で胆汁酸、陰イオン性物質や酸性物質等と結合してその吸収を遅延・抑制させる。
フルバスタチンナトリウム等これらの薬剤の血中濃度が低下するので、本剤投与後少なくとも3時間経過後に投与する。本剤は陰イオン交換樹脂であり、消化管内で胆汁酸、陰イオン性物質や酸性物質等と結合してその吸収を遅延・抑制させる。
エゼチミブエゼチミブの血中濃度が低下するおそれがあるので、本剤投与前2時間あるいは投与後4時間以上の間隔をあけて投与する。本剤は陰イオン交換樹脂であり、消化管内で胆汁酸、陰イオン性物質や酸性物質等と結合してその吸収を遅延・抑制させる。
ケノデオキシコール酸ケノデオキシコール酸の作用を減弱するおそれがある。本剤は陰イオン交換樹脂であり、消化管内で胆汁酸、陰イオン性物質や酸性物質等と結合してその吸収を遅延・抑制させる。

● コレスチミド(コレバイン)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
酸性薬物ワルファリン
クロロチアジド等テトラサイクリン
フェノバルビタール
甲状腺及びチロキシン製剤
ジギタリス
併用薬の作用減弱を起こすおそれがある。本剤投与前1時間若しくは投与後4~6時間以上、又は可能な限り間隔を空けて投与し、併用薬の作用の変化についても慎重に観察すること。同時に経口投与された場合に、併用薬の吸収を遅延あるいは減少させるおそれがある。
胆汁酸製剤ウルソデオキシコール酸
ケノデオキシコール酸
胆汁酸製剤の作用減弱を起こすおそれがあるので、可能な限り間隔を空けて投与すること。同時に経口投与された場合に、併用薬の吸収を遅延あるいは減少させるおそれがある。
エゼチミブ
カンデサルタン シレキセチル
併用薬の血中濃度が低下するおそれがあるので、可能な限り間隔を空けて投与すること。同時に経口投与された場合に、併用薬の吸収を遅延あるいは減少させるおそれがある。

カリウム吸着薬

● ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート、カリメート)

特徴
・陽イオン交換樹脂
・K⁺をNa⁺やCa²⁺と交換
・古典的だが吸着力は強い

注意点
K⁺以外の陽イオン性薬物や、物理的に巻き込まれた薬の吸着が起こりうる。

添付文書の記載

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
アルミニウム、マグネシウム又はカルシウムを含有する制酸剤又は緩下剤乾燥水酸化アルミニウムゲル
水酸化マグネシウム
沈降炭酸カルシウム等
本剤の効果が減弱するおそれがある。非選択的に左記薬剤の陽イオンと交換する可能性がある。
甲状腺ホルモン製剤レボチロキシン等左記薬剤の効果が減弱することがあるので、服用時間をずらすなど注意すること。本剤が消化管内で左記薬剤を吸着することにより、これらの薬剤の吸収を阻害すると考えられる。

ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム(ロケルマ)

特徴
・結晶格子構造でK⁺を選択的捕捉
・従来薬より選択性が高い

注意点
pH変化・物理吸着の影響が完全にゼロではない。

添付文書の記載
pH変化の影響記載はあるが、吸着による相互作用の記載はなし。

● パチロマーソルビテクスカルシウム(ビルタサ)

特徴
・Ca²⁺との交換でK⁺を吸着
・Mg²⁺も捕捉する

注意点
・抗菌薬
・レボチロキシン
などで吸収低下報告あり。

添付文書の記載

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
ニューキノロン系抗生物質:シプロフロキサシン塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩錠、メシル酸ガレノキサシン水和物錠 等
甲状腺ホルモン製剤:レボチロキシンナトリウム水和物 等
本剤との併用により、これらの薬剤の吸収が低下し、作用が減弱する可能性がある。併用する場合は、3時間以上空けて服用すること。消化管内で本剤に含まれるカルシウムと難溶性のキレートを形成し、これらの薬剤の吸収を低下させるおそれがある。
メトホルミン塩酸塩本剤との併用により、メトホルミンの吸収が低下し、作用が減弱する可能性がある。併用する場合は、3時間以上空けて服用すること。本剤とメトホルミンが消化管内で相互作用を起こしメトホルミンの吸収を低下させるおそれがある。

リン吸着薬

● 炭酸ランタン(ホスレノール)

特徴
・リンと強固に結合
・抗菌薬・甲状腺薬の吸収低下に注意

添付文書の記載

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
テトラサイクリン系抗生物質:テトラサイクリン、ドキシサイクリン等
ニューキノロン系抗菌剤:レボフロキサシン水和物、シプロフロキサシン塩酸塩水和物等
左記薬剤の吸収が低下し、効果が減弱されるおそれがあるので、本剤服用後2時間以上あけて投与すること。ランタンと難溶性の複合体を形成し、左記薬剤の腸管からの吸収を妨げることが考えられる。
甲状腺ホルモン剤:レボチロキシンナトリウム水和物等左記薬剤の吸収が低下するおそれがあるので、併用する場合には本剤との投与間隔をできる限りあけるなど慎重に投与すること。ランタンと難溶性の複合体を形成し、左記薬剤の腸管からの吸収を妨げることが考えられる。

● セベラマー塩酸塩(フォスブロック、レナジェル)

特徴
・高分子ポリマー
・胆汁酸様に他薬を吸着

添付文書の記載

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
シプロフロキサシン健康成人における本剤とシプロフロキサシンの同時経口投与試験の結果、シプロフロキサシンのバイオアベイラビリティが低下したとの報告がある。機序は不明である。
甲状腺ホルモン製剤レボチロキシン等本剤とレボチロキシンとの併用患者において、甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度が上昇したとの報告がある。消化管内で左記薬剤と結合し、吸収を抑制すると考えられている。

● ビキサロマー(キックリン)

特徴
・日本発の非吸収性ポリマー
・他薬吸着の理論的可能性あり

添付文書の記載

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
エナラプリル、アトルバスタチン、バルサルタン本剤とこれらの薬剤を併用した場合の血中濃度は、エナラプリルでは約80%に、アトルバスタチンでは約70~80%に、バルサルタンでは約30~40%にそれぞれ低下した。これらの薬剤の作用を減弱させるおそれがあるので、併用する場合にはこれらの薬剤の作用を観察すること。本剤はリン酸結合性ポリマーであり、同時に服用した場合、これらの薬剤の吸収を遅延あるいは減少させる。
カンデサルタンシレキセチル、テルミサルタン、オルメサルタンメドキソミル、イルベサルタンIn vitro試験で、本剤とこれらの薬剤の吸着が認められており、これらの薬剤の作用を減弱させるおそれがあるので、併用する場合にはこれらの薬剤の作用を観察すること。本剤はリン酸結合性ポリマーであり、同時に服用した場合、これらの薬剤の吸収を遅延あるいは減少させる。
シプロフロキサシン他のリン酸結合性ポリマーで、同時に服用した場合、シプロフロキサシンのバイオアベイラビリティが低下したとの報告がある。シプロフロキサシンの作用を減弱させるおそれがあるので、併用する場合にはこの薬剤の作用を観察すること。本剤はリン酸結合性ポリマーであり、同時に服用した場合、これらの薬剤の吸収を遅延あるいは減少させる。
甲状腺ホルモン製剤:レボチロキシン等他のリン酸結合性ポリマーとレボチロキシンとの併用患者において、甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度が上昇したとの報告がある。機序不明

● クエン酸第二鉄水和物(リオナ)

特徴
・鉄を含有するリン吸着薬(リンと結合しリン酸鉄として排泄)
・非吸収性だが、鉄製剤としての性質を併せ持つ
・鉄とキレート形成する薬剤などで相互作用が問題となることがある

添付文書の記載

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
キノロン系抗菌剤:シプロフロキサシン等これらの薬剤の作用を減弱させるおそれがあるので,同時に服用させないなど注意すること。これら薬剤と結合し,吸収を減少させるおそれがある。
甲状腺ホルモン剤:レボチロキシン等
テトラサイクリン系抗生物質:テトラサイクリン塩酸塩、ドキシサイクリン塩酸塩水和物等
これら薬剤の作用を減弱させるおそれがあるので,併用する場合にはこれらの薬剤の作用を観察すること。これら薬剤と結合し,吸収を減少させるおそれがある。
セフジニルこれら薬剤の作用を減弱させるおそれがあるので,併用する場合にはこれらの薬剤の作用を観察すること。これら薬剤と結合し,吸収を減少させるおそれがある。
抗パーキンソン剤:レボドパ・ベンセラジド塩酸塩等これら薬剤の作用を減弱させるおそれがあるので,併用する場合にはこれらの薬剤の作用を観察すること。これら薬剤と結合し,吸収を減少させるおそれがある。
エルトロンボパグ オラミンこれら薬剤の作用を減弱させるおそれがあるので,併用する場合にはこれらの薬剤の作用を観察すること。これら薬剤と結合し,吸収を減少させるおそれがある。

● 沈降炭酸カルシウム(カルタン)

特徴
・リン吸着+カルシウム負荷
・キレート形成に注意

添付文書の記載

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
テトラサイクリン系抗生物質:テトラサイクリン塩酸塩、ミノサイクリン塩酸塩等
ニューキノロン系抗菌剤:ノルフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン等
本剤のキレート作用により、相互に吸収が低下し、効果が減弱することがある。併用する場合には本剤服用後2時間以上間隔をあけるなど注意すること。これらの薬剤は、カルシウムと難溶性の塩を生成し、抗生物質の腸管吸収を妨げる。
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム
ポリスチレンスルホン酸カルシウム
これらの薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがあるので、慎重に投与すること。本剤は、無機質の微細な粉末を錠剤としたもので、種々の物質と結合する性質があり、また、二価の金属イオンとしてのキレート作用もある。同時に服用した他の併用薬剤の吸収を阻害することがある。さらに、本剤は、アルカリ性であるため、消化管内のpHを上昇させ、あるいは体内に吸収後に体液のpHを上昇させることが考えられる。
ロキサデュスタットロキサデュスタットと併用した場合、ロキサデュスタットの作用が減弱するおそれがあるため、併用する場合は、前後1時間以上あけて本剤を服用すること。ロキサデュスタットを酢酸カルシウムと同時投与したところ、ロキサデュスタットのAUCinfが低下した。

球形吸着炭

● 球形吸着炭(クレメジン)

特徴
・表面積が非常に大きい
・低分子物質を無差別吸着

添付文書の記載
「他剤を併用する場合、本剤は吸着剤であることを考慮し、本剤との同時服用は避けること。」

食物繊維系

● ポリカルボフィルカルシウム(コロネル、ポリフル)

特徴
・水分吸着による便性調整
・吸着力は比較的弱い

注意点
・理論上は吸収遅延あり
・臨床的影響は軽度

添付文書の記載
カルシウムによる影響はあるが、吸着による相互作用の記載はなし。

まとめ:吸着薬の併用判断

吸着薬は、腸管内で物理的に作用するという特性から、他の経口薬の吸収に影響を及ぼす可能性がある。一方で、その影響の程度や対象薬剤は、薬剤ごとに添付文書での位置づけが大きく異なる。

薬剤師の実務における判断の基本は、あくまで添付文書の記載を根拠とすることである。
具体的には、
・添付文書に服用間隔が明記されている薬剤については、その指示を遵守する
・併用注意薬が具体的に列挙されている場合は、その内容を優先して判断する
ことが原則となる。

一方、添付文書に個別の薬剤名や具体的な服用間隔が示されていない場合、
吸着機構を踏まえれば影響の可能性を完全に否定することはできないものの、
一律に同時服用を避けると判断できる根拠が示されているわけではない。

そのため、添付文書に明確な指示がない薬剤については、
・影響の有無を断定せず
・必要に応じて、薬剤の重要性や治療域、患者背景を踏まえて
・個別に服用タイミングの調整を検討する
という姿勢が、実務上現実的かつ妥当である。

吸着薬の併用判断において重要なのは、
「理論上あり得ること」と「添付文書に基づき判断できること」を明確に区別することである。

添付文書を判断の軸に据えつつ、
必要以上に断定せず、しかし見落としもしない。
そのバランスこそが、吸着薬を安全に、かつ実務的に扱うための要点と言える。

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名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
著書: 薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
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