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坐薬の使用間隔は何時間?
公開. 更新. 投稿者: 8,217 ビュー. カテゴリ:めまい/難聴/嘔吐.この記事は約5分11秒で読めます.
目次
坐薬の使用間隔は何時間?

発熱や痛みがつらいとき、小さなお子さんや高齢の方でも使いやすい「坐薬(座薬)」は、家庭でもよく使われる薬の一つです。
ただし、飲み薬とは違って「どのくらいの間隔で使えばいいのか」「次はいつ使っていいのか」がわかりにくいという声も多く聞かれます。
実際、坐薬には種類によって作用時間が異なり、使う間隔を間違えると「効きすぎ」や「副作用」の原因になることがあります。
坐薬とは?~飲み薬との違い~
坐薬(ざやく・座薬)は、肛門から挿入して使う薬です。直腸から吸収され、血液を通じて全身に作用します。
坐薬のメリット
・飲み込むのが難しい人でも使える(乳幼児・嘔吐時など)
・消化管を通らずに吸収されるため、速く効果が出る
・胃に直接刺激を与えにくく、胃障害が少ない
坐薬のデメリット
・挿入に抵抗感がある
・便と一緒に出てしまうことがある
・吸収量に個人差がある
こうした特徴から、「同じ薬でも飲み薬と坐薬では効き方や持続時間が違う」ため、使用間隔にも違いが出てきます。
坐薬の使用間隔は何時間あける?~基本の考え方~
坐薬の使用間隔は、薬の成分と作用時間によって決まります。
体内で薬が分解・排泄される時間を考慮し、次の投与までに十分な間隔を空ける必要があります。
一般的には以下の通りです。
・解熱鎮痛坐薬(アセトアミノフェン): 4〜6時間以上
・解熱鎮痛坐薬(NSAIDs系:ボルタレンなど): 6時間以上
・抗てんかん坐薬(ダイアップなど): 24時間以上
・浣腸薬(グリセリン): 1日1回まで
・ホルモン坐薬・抗がん剤坐薬: 医師指定(間隔一定)
代表的な坐薬と使用間隔
アセトアミノフェン坐薬(アンヒバ®, カロナール®など)
発熱や痛みを和らげる代表的な坐薬。
乳幼児から大人まで使える。
肝臓で代謝されるため、投与量と間隔の管理が大切。
アンヒバの添付文書上の記載
「投与間隔は4~6時間以上とし、1日総量として60mg/kgを限度とする。」
使用間隔
・4〜6時間以上あけるのが基本。
・1日の最大投与回数は2〜3回が限度です。
熱がなかなか下がらない場合でも、間隔を詰めて使うのは危険。体内に薬が残っている状態で次を入れると、肝障害のリスクが高まります。
NSAIDs系坐薬(ボルタレン®など)
炎症や痛みに対して強い効果を持つ。
解熱目的でも使われることがあるが、胃や腎臓への負担が強め。
体内での作用時間が長く、重ねて使うと副作用が出やすい。
ボルタレンサポの添付文書上には使用間隔の記載は無い。
使用回数は1日1~2回となっている。
使用間隔
・6時間以上、できれば8時間以上あけるのが望ましい。
注意点
・発熱時にアセトアミノフェン坐薬と併用することがあるが、同時使用は避け、交互に時間をずらして使う。
・NSAIDsを含む飲み薬と重複しないよう注意。
抗てんかん薬坐薬(ジアゼパム:ダイアップ®)
痙攣・てんかん発作時に頓用で使う薬。
中枢神経に作用し、過量で呼吸抑制を起こすおそれがある。
ダイアップ坐剤の添付文書上には、使用間隔に関する記載は無い。
使用回数は1日1~2回となっている。
使用間隔
・24時間以上。
・1日に2回以上の使用は、医師の指示がある場合のみです。
注意点
・連続使用で眠気・呼吸抑制・血圧低下が起こることがあるため、必ず医療機関の指導に従う。
・効果が切れたように見えても、体内に残留している場合がある。
浣腸(グリセリン浣腸など)
便秘時に用いる刺激性の薬剤。
肛門に挿入し、数分で排便を促す。
グリセリン浣腸の添付文書には使用間隔についての記載は無い。
「1日1~3回直腸内に注入する。」と書かれている製品もある。
使用間隔
・1日1回まで。
・それ以上使うと腸が慣れてしまい、自然な排便が難しくなります。
注意点
・2回以上使っても便が出ない場合は、便秘の原因を医師に相談。
・翌日以降の連続使用も避ける。
吐き気止め坐薬(ドンペリドン:ナウゼリン®)
胃の動きを促し、吐き気・嘔吐を抑える薬。
嘔吐で飲み薬が使えない時に有効。
小児でも使われるが、心臓への副作用(QT延長など)が報告されているため、用量・回数を守る必要がある。
ナウゼリン坐剤の添付文書には、使用間隔の記載は無い。
使用回数は、成人1日2回、小児1日2~3回となっている。
使用間隔
・6〜8時間以上あけるのが基本。
・1日最大3回まで。
・ただし、症状が軽快したら漫然と続けないことが大切です。
注意点
・食後や寝る前など、症状が出やすいタイミングに合わせて使用する。
・強い嘔吐が続く場合は、脱水や胃腸疾患の可能性もあるため受診を。
痔疾用坐薬(ボラザG®, プロクトセディル®など)
炎症や痛み、腫れ、かゆみを抑える局所用坐薬。
痔核や肛門裂傷などに使用。
ステロイドや局所麻酔薬が配合されていることが多い。
添付文書上、使用間隔に関する記載は無い。
使用回数は、ボラザG1日2回朝夕、プロクトセディル1日1~3回。
使用間隔
・1日1〜2回が目安。
・朝晩や排便後に使用することが多い。
注意点
・全身作用よりも局所作用が中心なので、解熱鎮痛坐薬のような厳密な時間管理は不要。
・長期連用によりステロイド皮膚萎縮や感染リスクが生じるため、2週間以上続ける場合は医師相談。
・坐薬挿入後はしばらく横になり、薬剤が十分に溶けるようにする。
坐薬の使い方と再投与の判断ポイント
効果が切れたからといってすぐ再投与しない
坐薬は吸収に時間がかかる場合があります。
「効かない」と思っても、30分〜1時間後に効果が出ることが多いです。
出てしまったように見えても再投与しない
溶けかけて出てきた場合でも、薬の有効成分はすでに吸収されていることがあります。
見た目だけで判断せず、最低でも4〜6時間は間隔を空けること。
挿入後はしばらく横になっておく
坐薬が溶けて吸収されるまでに10〜20分ほどかかります。
排便を我慢し、安静にすることで薬が無駄なく吸収されます。
乳幼児・高齢者の坐薬使用での注意点
乳幼児
・体重によって適切な用量が決まる。
・体温が高くても、次の投与まで4〜6時間はあける。
・37〜38℃台では使用せず、38.5℃以上で不機嫌や不眠があるときのみが目安。
高齢者
・腎機能・肝機能が低下しており、薬が体に残りやすい。
・間隔は余裕を持って6時間以上あけるのが安全。
・ボルタレンなどのNSAIDs系は腎障害リスクが高いため慎重投与。
坐薬の再投与タイミングを間違えると…
間隔を詰めて使用すると、以下のような副作用リスクがあります。
間隔を詰めた場合のリスク
・アセトアミノフェン:肝障害 吐き気、倦怠感、黄疸など
・ジクロフェナク:胃障害、腎障害 吐き気、胃痛、むくみ、尿量減少
・ジアゼパム:呼吸抑制 意識低下、無呼吸
・グリセリン:腸粘膜障害 腹痛、出血
おわりに
坐薬は「口から飲めないときの頼れる薬」ですが、効果が早い分、副作用も出やすいという特徴があります。
「効かないからもう一つ入れる」という自己判断は、薬の種類によっては危険です。
使う間隔に迷ったときは、薬剤師や医師に相談してください。
薬の成分・用量・年齢・体重を考慮して、安全な使い方を具体的にアドバイスしてもらえます。



