2024年4月29日更新.2,754記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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注射してはいけない錠剤?

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「注射しない」の警告

塩酸ペンタゾシン(ソセゴン/ペルタゾン)は、弱オピオイド系鎮痛薬で、オピオイド受容体に作用して鎮痛作用を示す。ペンタゾシン錠の添付文書には、警告欄に、以下のように書かれている。

本剤を注射しないこと。[本剤にはナロキソンが添加されているため、水に溶解して注射投与しても効果なく、麻薬依存患者では禁断症状を誘発し、また肺塞栓、血管閉塞、潰瘍、膿瘍を引き起こすなど、重度で致死的な事態を生じることがある。]

「本剤を注射しないこと」とあり、ペンタゾシンと逆の作用をするオピオイド受容体拮抗薬のナロキソンが添加されている旨が記載されている。

通常、錠剤を注射するということは無いが、麻薬(オピオイド)であれば、中毒患者によっては、その効果を高めようと注射したり鼻から吸引するという行為に及ぶ者もいるようだ。

ペンタゾシン錠は1969年に米国で発売されたが、依存症の患者がペンタゾシンの錠剤を水に溶解して注射する事例が発生し、問題となった。経口で服用するよりも、注射の方が効き目が強く表れるからである。そのため、ナロキソンを配合した対策品が83年に米国で開発され、その後日本でも発売されたという経緯がある。

ペンタゾシンは、モルヒネ類似の鎮痛、鎮静作用を示すが、依存性は起こりにくいとされており、麻薬の指定からは外れている。そのため、厳格な管理を必要とせず、術後疼痛をはじめとする各種の痛みに頓用されている。

ペンタゾシン錠の警告に「注射しないこと」と記載されているのは、上記のように溶解して用いられた事例があったことによる。この錠剤を溶解して注射した場合、錠剤の不溶成分(結晶セルロースおよびトウモロコシデンプンなど)が肺塞栓や血栓症、血管の閉塞を引き起こす危険性がある。また、麻薬依存患者では、ナロキソンによってオピオイド受容体が拮抗阻害されるため、麻薬の禁断症状を誘発する可能性が考えられる。

ソセゴン注射液とソセゴン錠の違い

ソセゴン注射液はペンタゾシンを成分とした注射液であるが、ソセゴン錠には塩酸ペンタゾシンに加えて、オピオイド受容体拮抗薬のナロキソンが添加されている。

これではソセゴン錠は鎮痛・鎮静効果を発揮できないのではないかと思ってしまう。

なぜ、ナロキソンを添加した錠剤を経口で服用した場合は、鎮痛・鎮静効果を生じるのか?これは、肝臓の初回通過効果を利用したものである。

経口投与された医薬品は主に十二指腸や小腸上部で吸収され、門脈を通って肝臓に到達し、肝臓の薬物代謝酵素によって代謝される。これを肝臓の初回通過効果と呼ぶ。この初回通過時に、ナロキソンはほとんどが代謝されて血中から消失し、ペンタゾシンのみが残る。このため、内服すればペンタゾシンのみがオピオイド受容体に到達し、鎮痛効果が発揮されることになる。一方、ペンタゾシンの錠剤を水に溶解して注射した場合には、添加されているナロキソンがオピオイド受容体を阻害してしまい、ペンタゾシンの効果が発揮されない。

タペンタ錠は粉砕できない?

ペンタゾシン錠のように、乱用防止の観点から工夫が施されている製剤は他にもある。例えば、タペンタゾール(タペンタ)は、中等度から高度の癌性疼痛に適応を持つ麻薬だが、この錠剤は非常に堅牢に作られており、ミキサーなどを用いた粉砕加工が困難となっている。そのため、粉末にして鼻から吸入する行為を防止できる。また、水に溶解するとゲル状に変化し、注射器で吸えないようになっている。このような工夫から、添付文書には「注射しないこと」などの警告は記載されていない。

また、オキシコドンTR錠も、タペンタドールと同様に破砕が困難な製剤となっており、乱用防止策が実施されている。

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薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

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本の紹介

yakuzaic
yakuzaic/著
2023年09月14日発売

プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
座右の銘:習うより慣れろ。学ぶより真似ろ。
SNS:X(旧ツイッター)
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