2016年8月30日火曜更新.3,263記事.5,245,001文字.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたい。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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アロマターゼ阻害薬は閉経前には効かない?

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乳がんとエストロゲンの供給源

閉経によって女性ホルモンは少なくなるが、全く無くなるわけではない。

エストロゲンは、閉経の前後で供給源が変わる。
閉経前は、主に卵巣からエストロゲンが供給される。
閉経後のエストロゲン量は閉経前に比べると1/10~1/100といわれるが、体内の脂肪組織や肝臓、筋肉、乳がん組織の中にあるアロマターゼにより、副腎皮質で分泌されたアンドロゲンからエストロゲンが産生される。

女性ホルモンは男性ホルモンから作られる?

女性ホルモンはアロマターゼという単一の酵素により男性ホルモンからつくられます。
アロマターゼの主要な産生組織は、閉経前では卵巣になりますが、胎盤の他、生殖組織以外でも脳や脂肪細胞、筋肉において産生されます。

とりわけ、閉経後では生殖組織以外が主要な産生組織に変化します。
乳房では脂肪細胞がアロマターゼを正常時でも産生していますが、がん化によりその産生はさらに増強されます。
アロマターゼは女性ホルモン合成の最終工程にかかわる酵素ですので、これを阻害しても他の性ホルモン合成への影響はなく、女性ホルモンの供給遮断の標的としてアロマターゼはきわめて優れていると考えられます。

アロマターゼ阻害薬は閉経前には効かない?

 岡山県倉敷市立児島市民病院(倉敷市児島駅前)で、3年8か月にわたって効果のない薬を投与され、精神的苦痛を受けたとして、倉敷市の女性(42)が市に約357万円の損害賠償を求めていた訴訟が2日、地裁であった。
 市は過失を認め、女性に110万円を支払うことで和解した。
 訴状などによると、女性は2004年12月に同病院で乳がんの手術を受け、05年10月から、再発・転移予防のためとして薬を投与された。09年6月、担当医師がこの薬が効果のないものだったと気付き、本来投与されるべき薬に替えたが、女性は注意義務違反があったとして09年12月に提訴した。
 同病院の江田良輔院長は「再発防止を徹底したい」とのコメントを出した。誤投薬110万円で和解…児島市民病院 医療ニュース yomiDr.-ヨミドクター(読売新聞)

この女性は42歳で閉経前ですが、閉経後に使われる薬を4年近くつかわれていたらしい。

閉経後に使われる薬といえばアロマターゼ阻害薬です。
アリミデックス、フェマーラ、アロマシン。

乳がんの増殖にはエストロゲンが影響していますが、閉経前と閉経後ではエストロゲンの作られ方が違います。
閉経前の人では卵巣でエストロゲンが作られますが、閉経後は副腎から分泌されたアンドロゲンというホルモンをもとにして脂肪組織でエストロゲンが作られます。

この閉経後のエストロゲン合成に関わっている酵素がアロマターゼで、アロマターゼ阻害剤は、この酵素の働きをさまたげることにより効果を発揮します。
閉経前にアロマターゼ阻害剤を投与しても、卵巣からエストロゲンが分泌されてるので効果ない、ということです。

しかし、GnRnアナログ製剤(スプレキュア、ナサニール、ゾラデックス、リュープリンなど)を使っていれば偽閉経状態になるので、フェマーラを併せて使うこともあります。

フェアストンは閉経前乳がんに効かない?

ホルモン依存性の乳がんでは、がん細胞内のエストロゲンレセプター(ER)とエストロゲンが結合することにより、がん細胞が増殖します。エストロゲンは、閉経前であれば主に卵巣で作られますが、閉経後は卵巣機能が衰え、代わりに副腎で作られるアンドロゲン(男性ホルモン)が脂肪などにあるアロマターゼという酵素の働きでエストロゲンに変換されます。ホルモン療法では、このエストロゲンの産生機序の違い(閉経前・後)により使用する薬剤が異なります。

LH-RHアゴニスト製剤:視床下部から分泌されるLH-RHの分泌を抑制し、卵巣からのエストロゲンの分泌を抑制します。
抗エストロゲン薬:ERに結合して、エストロゲンが乳がん細胞にはたらくのを遮断します。
アロマターゼ阻害薬:アンドロゲンをエストロゲンに変換させるアロマターゼの作用を抑制します。
黄体ホルモン薬:エストロゲンの産生を抑制します。

分類医薬品名適応
LH-RHアゴニスト製剤リュープリン(酢酸リュープロレリン)閉経前
LH-RHアゴニスト製剤ゾラデックス(酢酸ゴセレリン)閉経前
抗エストロゲン薬ノルバデックス(クエン酸タモキシフェン)閉経前後
抗エストロゲン薬フェアストン(クエン酸トレミフェン)閉経後
アロマターゼ阻害薬アリミデックス(アナストロゾール)閉経後
アロマターゼ阻害薬アロマシン(エキセメスタン)閉経後
アロマターゼ阻害薬フェマーラ(レトロゾール)閉経後
黄体ホルモン薬ヒスロンH(酢酸メドロキシプロゲステロン)閉経前後

抗エストロゲン薬にはノルバデックスとフェアストンがありますが、ノルバデックスは閉経前後の乳がんに適応があるのに対し、フェアストンは閉経後乳がんにしか適応がない。
しかし、フェアストンの閉経前乳がんに対する使用は公知申請でレセプト請求上は認められているので、処方されることはある。

女性も男性ホルモンを分泌している?

女性にあるホルモンが女性ホルモン、男性にあるホルモンが男性ホルモンと思い込んでいませんか?
男性の体内でも女性ホルモンが作られるし、女性の体内でも男性ホルモンが作られます。

男性ホルモンは精巣(95%)以外に副腎(5%)でも作られます。
そのため前立腺癌で去勢しても、副腎で作られる男性ホルモンが前立腺癌を刺激するので、薬の服用を続ける必要があります。

乳がんとエストロゲン

乳がんの60~70%は、女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けて、分裂・増殖します。
つまり、エストロゲンが乳がん細胞の中にあるエストロゲン受容体と結びつき、がん細胞の増殖を促します。
このように、エストロゲンを取り込んで増えるタイプの乳がんを「ホルモン感受性乳がん」といいます。
ホルモン感受性乳がんはエストロゲンによって増殖するため、卵巣由来のエストロゲンを減少させるか、エストロゲンの作用を減弱させることが治療の中心となります。
卵巣由来のエストロゲンを減少させるためには、LH-RHアゴニストが用いられます。
エストロゲンの作用を減弱させるためには、エストロゲンの受容体への結合を阻害する抗エストロゲン薬のタモキシフェンやトレミフェンが用いられます。
閉経後には、体内の脂肪組織や肝臓、筋肉、乳がん組織の中にあるアロマターゼにより、副腎皮質で分泌されたアンドロゲンからエストロゲンが産生されるため、アロマターゼを阻害することで、エストロゲン量を低下させることができる。

アロマターゼはCYP19?

乳がん治療に使われるアロマターゼ阻害薬
そのアロマターゼという男性ホルモンを女性ホルモンに変える酵素はチトクロムP450の仲間らしい。
CYP19。

じゃあCYP19で代謝される薬とかあったら、相互作用がマズいんじゃないかとか思ったら、そんな薬はありませんでした。
添付文書でアリミデックスの相互作用を調べても、何も書いてないし。

アロマターゼはチトクロムP450(CYP450)ファミリーに属する酵素です。
CYP450は解毒、ステロイド・脂肪酸代謝にかかわる酵素であり、酸素とNADPHを使用して基質を水酸化します。

またCYP450は活性部位に鉄原子を含むヘム色素を有し、膜酵素として小胞体・ミトコンドリア膜に存在します。
アロマターゼはこれらの特性を共有していますが、他のCYP450との相同性はかなり低く、もっとも近いものでもアミノ酸配列レベルで20%程度の相同性しか有しま
せん。
それゆえ、アロマターゼ阻害薬は他のCYP450を阻害する可能性が低く、副作用の面で有利と考えられます。

参考書籍:薬効力 ―72の分子標的と薬の作用―

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