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下痢にウルソが効く?
公開. 更新. 投稿者:癌/抗癌剤.この記事は約3分6秒で読めます.
7,783 ビュー. カテゴリ:抗癌剤による下痢
ウルソ(ウルソデオキシコール酸)が抗癌剤による副作用の下痢の支持療法に使われるという話がある。
「ウルソって胆汁酸だから下痢が悪化すんじゃね?」とも思った。
ウルソの副作用に、下痢( 1〜5%未満 )がある。
しかし、支持療法として使われるウルソの作用機序は違うようだ。
イリノテカンと下痢
抗癌剤のイリノテカン(トポテシン注、カンプト注)のよくみられる副作用に「下痢」があります。
イリノテカンによる下痢には、点滴中または点滴直後に発現する早発型と、点滴後24時間以降から数日後に発現する遅発型がある。
前者はイリノテカンのカルバミル基に起因するコリン作動性の下痢と考えられ、多くは一過性で、副交感神経遮断薬が有効とされる。抗コリン薬のブスコパン(ブチルスコポラミン臭化物)などが用いられる。
一方、後者の遅発型下痢は、イリノテカンの活性代謝物SN-38が腸管粘膜を傷害することで起こると考えられている。
イリノテカンは、肝臓のカルボキシルエステラーゼによってSN-38に変換され、さらにグルクロン酸転移酵素UGT1A1によりグルクロン酸抱合体SN-38Gに変換される。 グルクロン酸抱合体となり不活化されて胆汁排泄される。
しかし胆汁を介して腸管内に排泄されたSN-38Gの一部は、腸内細菌が産生するβグルクロニダーゼにより脱抱合されてSN-38に変換し、再吸収される。
この腸肝循環により、遅発性の下痢を生じる。
また、SN-38の構造はpHに応じて可逆的に変化する。
腸管内が酸性に傾くとSN-38の非イオン型が増えるのに対し、中性からアルカリ性ではイオン型になる。
イオン型は非イオン型に比べ、腸管で再吸収されにくく、細胞傷害性も低い。
この対策として、腸管や胆汁のアルカリ化と排便のコントロールを行い、SN-38の再吸収を遅らせ、排泄を促進すると効果的であるという報告がある。
経口アルカリ化薬として炭酸水素ナトリウム(腸管内のアルカリ化)、酸化マグネシウム(排便によるSN-38の排泄促進)、ウルソ錠(胆汁のアルカリ化とグルクロン酸抱合体の維持)が用いられる。
このほか、SN-38Gの脱抱合を抑制する効果がある半夏瀉心湯を用いることもある。
ロペミン(ロペラミド塩酸塩)で対応するケースもみられますが、重症化して発熱、血便が伴う場合は入院加療が必要となります。
下痢にセンノシド?
下剤であるセンノシドがイリノテカンの副作用の下痢予防に使用されることがあるという。
イリノテカンの副作用による下痢は、早発性下痢と遅発性下痢(投与後8時間以降の下痢)の2つに分けられる。
早発性下痢はコリン作動性下痢とも呼ばれ、イリノテカンの抗コリンエステラーゼ作用に起因すると考えられており、一過性である。支持療法として抗コリン薬や、ロペミンといった止瀉薬が処方される。
遅発性下痢は、抗がん剤によって消化管粘膜が障害されることで起こり(腸管粘膜障害性下痢)、投与後数日から10日程度経過してから出現する。
イリノテカンによる遅発性下痢の副作用は、腸管内での活性代謝物であるSN-38の停滞が原因となるため、予防として、イリノテカンの投与日および翌日の就寝前にセンノシドが処方されることがある。
胆汁酸と下痢
食事を摂ると胆嚢から胆汁が十二指腸に分泌されるが、胆汁の成分である胆汁酸は大腸から水分を分泌させて、蠕動を起こさせ、体内の下剤として働きます。
大腸に過剰な胆汁酸が届くと、食事内容に関らず、食事をすると下痢をするようになります。
胆汁酸は、小腸の終末部分にある回腸で胆汁酸トランスポーターにより再吸収され、再吸収されずに大腸に届いた胆汁酸が排便につながる水分分泌と蠕動を起こします。
しかし、胆汁酸吸収障害があると、大腸に届く胆汁酸が増加して、下痢を来すと考えられている。下痢型過敏性腸症候群の約30%に 胆汁酸吸収障害 が関与しているといわれている。
このタイプには胆汁酸を吸着するコレスチラミン(クエストラン)やコレスチミド(コレバイン)が奏功する。
ただし、コレスチラミンの適応は「高コレステロール血症およびレフルノミドの活性代謝物の体内からの除去」、コレスチミドの適応は、「高コレステロール血症および家族性高コレステロール血症」となっているため適応外になる。
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