2018年12月11日更新.3,340記事.5,763,436文字.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたい。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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尿が出ないのは腎不全?

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乏尿・無尿のメカニズム

尿は、水溶性の不要な物質を体外に排出するために作られる。
尿量は健康な人であれば、1~1.5L/日である。これが200~500mL/日以下に減少した状態を「乏尿」、100mL/日以下の状態を「無尿」と呼ぶ。
腎臓には、心拍出量の約25%の血流が供給される。したがって、尿量が減少するということは、腎臓への血液供給が低下する、つまり全身の循環動態が破綻しつつある可能性があることを示している。
膀胱内に尿がたまっているのに出せない状態は、「尿閉」と呼んで区別する。

尿は、腎臓のネフロン(糸球体+尿細管)で作られる。
ネフロンは、片方の腎臓に約100万個ある。血液が腎動脈から輸入細動脈へ入ると、糸球体を通過する間に、血液を利用して、糸球体と尿細管の小さな隙間によって、水、電解質、ブドウ糖、尿素、クレアチニンなどの老廃物が濾過される。この濾過液を原尿という。
その後、生体に必要な物質や水などは再吸収されて血液に戻り、不要なものが尿として排出される。なお、糸球体で濾過しきれなかった老廃物は、分泌という形で血液から尿細管に排出される。
ネフロンがなんらかの原因で傷害されると、腎機能が低下し、心、脳、肝、骨髄、消化器、内分泌などの諸臓器に多大な影響を与える。その結果、生体のホメオスターシスが維持できなくなった状態を腎不全という。

腎前性腎不全

腎臓に入ってくる血流量が減って、濾過される尿量が減り、乏尿が起こった場合である。
血流量が減る主な原因には以下のようなものがある。
①循環血漿量の減少:出血、下痢、嘔吐、熱傷、脱水などによって起こる。また、肝硬変やネフローゼなどにより、血管内の水分保持を担うアルブミンが不足し、水分が間質に移動して浮腫を来した場合などでも起こる。
②心臓拍出量の低下:急性心筋梗塞、うっ血性心不全などによる。
③末梢血管の拡張:敗血症などで起こるエンドトキシンショックなどによる。
④腎動脈の閉塞:血栓や塞栓などによる。

■腎前性腎不全と薬の副作用
血流量が減る原因のうち、①の循環血漿量の減少を起こす例として、利尿薬の乱用や過剰投与による脱水がある。
輸入細動脈は加齢とともに細くなるが、プロスタグランジンが血管を拡張している。NSAIDsは、PGの合成阻害により輸入細動脈を収縮させ、濾過される血液量の減少を来す。
COX2選択的阻害薬でも起こり得るので注意が必要。
シクロスポリンやタクロリムスも、輸入細動脈を収縮させることが知られている。
糸球体から出ている輸出細動脈を広げる作用を持つACE阻害薬やARBが投与されると、糸球体にかかる圧力が低下し、結果的に濾過される血液量が減り、尿量が減少する。
②の心臓拍出量の低下を来す薬として、β遮断薬が挙げられる。腎前性腎不全は、糸球体での濾過量が減るだけなので、尿細管の機能は保たれ、水や電解質などの再吸収は行われるため、濃縮された尿が少量排泄される。高齢者、大量出血、激しい下痢や嘔吐、脱水では、危険性が高くなる。①②③④に関する疾患、ヘビースモーカーなどでも起こりやすい。

腎性腎不全

■腎性腎不全(糸球体)
免疫反応を介して糸球体が傷害を受け、糸球体腎炎やネフローゼ症候群が起こった場合である。
例えば、溶連菌感染後や全身性エリテマトーデスなどでネフローゼ症候群が起こると、免疫反応でできた免疫複合体が糸球体や腎血管に沈着し、濾過できる面積が減少して乏尿となる。
さらに、膜透過性が亢進するため、蛋白の漏出が助長され、腎血管が傷害される。
すると腎血流量が減少するので腎前性腎不全を併発して乏尿となる。

■腎性腎不全(尿細管、間質)
虚血や毒性物質によって尿細管が傷害を受けた場合に起こる。
虚血は腎前性腎不全に引き続いて起こり、腎血流の減少によりネフロンに供給される酸素が欠乏する。
すると、尿細管細胞内のアデノシン三リン酸(ATP)が減少し、ミトコンドリア機能が低下する。この状態で血流が再灌流されて酸素が供給されるようになると、活性酸素が発生する。
この活性酸素が、細胞膜やDNAを傷つけ、血小板活性化因子の産生が促され、血小板凝集が亢進する。すると、血管を収縮させるトロンボキサンが増加し、さらに腎血流が減少する。
好中球が動員され、好中球から出たタンパク質分解酵素や活性酸素がさらに尿細管細胞を傷つけ、アポトーシスや壊死を起こす。
壊死した尿細管細胞がはがれ落ちると尿細管腔を閉塞し、乏尿が起こる。
尿細管が傷害されると水分や老廃物の行き場がなくなり、尿細管の間質に拡散してしまうため、さらに乏尿が進む。

■腎性腎不全と薬の副作用
水溶性の薬剤はそのまま濾過され、脂溶性の薬剤は肝臓で代謝を受けてからその代謝物が濾過され、尿細管腔に入る。
薬剤は、基本的に体にとって異物であり、積極的には再吸収されない。
しかし、脂溶性の薬の場合、尿細管腔内から尿細管の上皮細胞内にじわじわ拡散したり、N-Kポンプに連動して入り込んだりすることがある。
再吸収されるかどうか、つまり尿細管の上皮細胞を通り抜けるかどうかは、その薬の解離度と尿細管中の尿のpHによって決まる。脂溶性の高い分子型が多いと、尿細管の上皮細胞膜から脱出して再吸収されやすい。一方、イオン型が多いと、上皮細胞から脱出することなく尿細管内にとどまる。
蛋白結合率が高く、糸球体で濾過されなかった薬は、トランスポーターを介して尿細管に分泌され排出される。このような薬は、分泌によって尿細管の上皮細胞に取り込まれるが、この上皮細胞から尿細管腔への移行の度合いが低いと上皮細胞中に蓄積されてしまう。再吸収や分泌の繰り返しによって尿細管の上皮細胞や間質の中に薬が濃縮され、その濃度が毒性レベルに達すると直接細胞を傷害したり、DNAやRNAの合成や機能の障害を起こす。上皮細胞や間質の細胞と抗原抗体反応を起こすこともある。

尿細管の上皮細胞には、薬物代謝酵素であるチトクロームP450が肝臓に次いで多いことが知られている。尿細管でも薬物代謝が行われ、活性酸素が発生し、細胞を傷害することがある。随伴症状は倦怠感程度だが、水分の再吸収障害が起こると、濃縮されない尿が多量に出る。NSAIDs、アミノグリコシド系やグリコペプチド系、セファロスポリン系などの抗菌薬、抗ウイルス薬、ヨード造影剤、シスプラチン、重金属、殺虫剤などで起こりやすい。
また、何らかの原因で横紋筋融解症が起こった場合、筋肉の崩壊により大量のミオグロビンが糸球体に集まり、糸球体障害を起こし、続いて尿細管・間質障害が起こる。抗精神病薬による悪性症候群などでも同様である。

腎後性腎不全

結石や凝血塊、腫瘍などにより、尿管が閉塞する場合に起こる。
突然の無尿は、腎後性のことが多い。

■腎後性腎不全と薬の副作用
薬の性質や尿のpHにより、尿細管腔で薬の結晶が析出したり、尿酸を産生する薬剤によって尿酸が析出したりすることで、尿細管の閉塞が起こることがある。
アシクロビル、ガンシクロビル、造影剤、メトトレキサートなどで知られている。
脱水、高尿酸血症、痛風がある人などで起こりやすい。尿のpHを下げるビタミンCやアスピリンなどの併用によって可能性は高まる。

命に関わる前立腺肥大症?

前立腺肥大症は良性の腫瘍ですので、基本的には、早めに治療を行いさえすれば、生命にかかわる病気ではありません。

前立腺肥大症を放置すると、尿が出きらずに残尿が序々に増えて膀胱炎を起こしたり、結石ができたりすることもあります。

さらには腎臓に負担がかかり腎臓の働きが悪くなって尿毒症(腎不全)へ進行する場合があります。

この状態がさらに進むと、生命にかかわる危険な状態となる可能性もあるので注意が必要です。

急性腎不全の初期症状
・尿が少なくなる
・ほとんど尿が出ない
・一時的に尿量が多くなる
・発疹
・足がむくむ
・体がだるい

前立腺肥大症は高齢男性が下部尿路症状を訴える疾患としてもっとも頻度の高いものであり、その有病率は加齢とともに増加する。
BPHが組織学的に認められる頻度は60歳の男性では50%以上、85歳までに約90%となり、臨床症状はその1/4に出現する。
前立腺肥大症は、組織学的に尿道周囲領域の間質と上皮細胞の過形成(BPH)が認められる疾患である。
したがって、前立腺肥大症のなかにはBPHのみで尿流低下がないものも、BPEはあるが尿流低下がないものもあり、さらに、尿量低下を起こすBOOも含まれる。

参考書籍:日経DI2013.6

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